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転移性大腸がんに対するTrastuzumab deruxtecan (DS-8201)の有効性 (DESTINY-CRC01試験)

 Lancet Oncol. 2021;22(6):779-789.

前回のエントリーに引き続いて似た話題で、胃がんや乳がんで既に使われているTrastuzumab deruxtecan (商品名 エンハーツ, 第一三共)をHER2大腸がんに使用したP2試験の結果。

HER2 IHC 3+ or HER2 2+かつISH+のcohort A (N=53)
HER2 IHC 2+ かつISH-のcohort B (N=7)
HER2 IHC 1+ のcohort C (N=18)
の3コホートで行われた試験で、primary endpointはcohort AのORR。

結果として ORR 45.3%, PFS 4.1mと、胃がん対象に行われたDESTINY-Gastric 01の試験と同様に高い奏効割合を認め、日本でもその内承認される見込みという噂。

この試験での見どころはやはり抗HER2療法の有無に関わらず効果が認められているということ。他のがん種でも同様の結果で、やはりDS-8201のby-stander effectと強い抗腫瘍効果の影響とDiscussionされている。治療ラインの中央値が4としっかり前治療が入っており、かつ全例がイリノテカンレジメンを受けているにも関わらずこれだけ奏効するということなので、将来的にはもっと前のlineでの使用も検討されるのかもしれない。

ちなみにcohort B, Cはいずれも奏効なしで、HER2陽性例のみに効く薬というところもはっきりした特徴。ADC薬おそるべし。

有害事象は既報と同様、骨髄抑制が中心だが、胃がんよりも割合は少なめ。大腸がん患者は胃がん患者より元気なので、その影響かもしれない。間質性肺炎で1名死亡も出ているので他癌種同様注意が必要。

HER2陽性大腸癌なんて数年前までほとんど話題に上がらなかったのに、有効な薬剤が出てきたと思ったら診療が複雑になっていくなあ。

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