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胃・食道胃接合部がんの術前atezolizumab+化学療法のP2試験 (PANDA試験)

Nat Med(2024). https://doi.org/10.1038/s41591-023-02758-x

先日のJCOG 試験に対して、海外では胃がんNAC atezo+chemoのP2試験が発表されている。試験結果も非常に良好。本試験やNSCLCのNAC試験しかり、いつも疑問に思うのはNACでのICIは何故こんなに効くのかということ。Stage IVでは同じ治療を行ったとしてもCRに至る症例など限られるほどしかいないのに、NACだと数十%の割合でpCRが出る。腫瘍量が少ないこととか、免疫機構のexhaustingが起こっていないことなどがその理由なのだろうか?私はあまり基礎論文を読まないので全然詳しくないのだが、それにしてもこれほど効くことに驚きである。


海外ではFLOT (5-FU+LV+DTX+L-OHP)療法が胃がんNACの標準療法になっておりpCR 16%, near pCR 21%の成績が出ている。本試験ではAtezo 1コース後にAtezo+DTX+L-OHP+Capecitabine (DOC)を4コース施行するレジメン。
患者(N=21)は男性9割, EGJ癌が約8割, Stage IIA/IIB/III 19/43/29%, intestinal type 76%,  MMR deficient 14%, PD-L1 CPS (≥1, ≥5, ≥10) 90/70/20%だった。
主要評価項目は残存腫瘍≤10%(pCR + major PR: MPR)の奏効割合。

結果

患者都合で手術を行わなかった1例を除く20例の内、70%に病理学的奏効(残存腫瘍≤10%)が認められ、45%がpCRであった。pMMR患者18例中でもMPRは67%, pCR 39%。intestinal typeのMPR 80%, diffuse/mixed 50%であった。
術前のRECISTやPET-CTではpCRを正確に評価できなかった。

病理学的奏効

translational研究においてはctDNAが奏効・DFSに関連することが示唆された。ctDNA陽性割合は治療前→Atezo後→術前→術後→経過観察中で各々85%→75%→15%→10.5%→15%で非奏効例では陰転化しなかった。(下図a) pCRとctDNAの組み合わせが予後予測に有用な可能性が示唆された(下図c)

a: 術前ctDNAと病理学的奏効の関連, c: 術前ctDNA+病理学的奏効の組み合わせによるDFS

腫瘍生検検体を用いたNACの効果予測biomarkerの探索結果、ResponderにおいてPD-1+CD8+T細胞の浸潤、CD8+T細胞の内CD8+PD-1+T細胞の割合、CD103+ CD8+T細胞の数が各々多いことが示された。一般的に用いられているCPS1, 5, 10%のカットオフやTMBは奏効を予測しなかった。またIFNγ signature, CD8A/B、CD274, FOXP3, CXCL13などは奏効の予測とはならず、TCF1の発現、好中球や肥満細胞のsignatureが有意に関連。抑制系チェックポイントであるSIGLEC-7発現は非奏効と関連していた。


translational研究のところは非常に長かったので一部省略。考察にも書いてあるがMATTERHORN試験(NAC FLOT+Durvalumab)のpCR 19%, near CR 27%や、ICONIC試験(NAC FLOT+Avelumab)のpCR 15%, MPR 21%と比べ、本試験のpCR 45%, MPR 70%は成績が良すぎる。症例数や背景が違うの点はあるものの、これだけの差が出るのは筆者らが言うようにICIを先行させる戦略がキーポイントなのだろうか。

Atezoを先行させることによりCD8+T細胞浸潤が増加、腫瘍微小環境をプライミングし、抗腫瘍効果が改善することが示唆されているとのこと。
トリプルネガティブ乳がんのGeparNuevo試験で、NAC において普通にAtezo+chemo併用より、Atezo→Atezo+chemo併用とAtezoを先行させた方が効果が高いというdataがあり、これが本レジメンの根拠となっているようだ。元文献(Annals of Oncology 30: 1279–1288, 2019)を目を通してみたが、この試験では当初NAC Atezo → Atezo+chemoのレジメンだったが試験途中でAtezo+chemoだけに変更となった経緯があるよう。全体の2/3が前レジメン、1/3が後レジメンで行われており、サブグループ解析でここの交互作用を見たところ、前者でAtezo上乗せの効果が大きく出ており、後者ではむしろAtezoが無い方が良さそうという結果になったとのこと。

GeparNuevo試験のサブグループ解析。pCR割合に対する交互作用のforrest plot。
"Window"の項目でwindowが先行Atezoあり、no windowが無しを示している。

これは非常に興味深い点で、これがAtezoだけに当てはまるのか、他のICIにも当てはまるのかが気になるところ。これだけpCRが出るのであれば手術技術が高い日本といえど、all comerのNACで有意差が出そうな気がする。もう試験は恐らく始まっているんだろうと思うが、非常に期待大だ。


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