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カペシタビンの手足症候群予防にジクロフェナク軟膏が有効(D-TORCH試験)

J Clin Oncol. 2024 Feb 27:JCO2301730. doi: 10.1200/JCO.23.01730.
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カペシタビンのHFSにCOX阻害が有効らしい。普通に知らなかった……。
既報ではセレコキシブを予防に使っているようだが、内服だと色々副作用もあるので軟膏なら良いんじゃないかというのが本試験。インドの単施設でのPhase 3という、いつもの力押し試験で信憑性に不安はあるが、軟膏ならそれほど副作用もないし今度使ってみようと思う。


対象はカペシタビン含有レジメンを施行予定の乳腺あるいは消化管がん患者。皮膚病変や神経障害が無いことが適格基準。1%ジクロフェナク軟膏 or プラセボに1:1に割付けられ、カペシタビン治療開始と同時に、手掌と足底に1回1gを1日2回塗布する。治療期間はカペシタビン3週毎 x 4 cycleの12週。

主要評価項目はGrade 2-3のHFS。副次評価項目はGrade 1-3のHFS、HFSに関連したカペシタビン用量調整、HFS発症までの期間、軟膏使用のadherence、HFS14質問票に基づいたPRO、AE。

結果

2021年2月~2022年9月まで264例を集積。ジクロフェナク群131例, プラセボ群133例に割付。1例のデータ紛失あり。患者背景は年齢中央値47歳, 女性が約7割。約6割が乳腺患者であった。カペシタビン単剤が約4割 (併用はオキサリプラチンが最多)。投与量中央値は約 1800mg/m2であった。

Grade 2-3のHFSはジクロフェナク群で3.8%, プラセボ群で15.0%で、有意にジクロフェナク群で少なかった。G2, G3各々においてもジクロフェナク群が良好。Grade 1-3のHFSはジクロフェナク群 6.1%, プラセボ群 18%であった。

Grade 2-3のHFS割合

HFSによるカペシタビンの用量調整はジクロフェナク群 3.8% vs プラセボ群 13.5%でジクロフェナク群に少なかった。全体としての用量調整も16.2% vs 30.8%でジクロフェナク群で少なかった。

HFS Grade2-3発症までの期間中央値はジクロフェナク群 6週 vs プラセボ群 9週。軟膏のアドヒアランスは96.7% vs 94%で守られていた。HFS14質問票による症状スコアはジクロフェナク群 +3.5点, プラセボ群 +12.4点でジクロフェナク群良好であった。

HFS G2-3を発症した患者の男女別データは、男 2.6% vs 13.5%, 女 4.4% vs 15.6%であった。単剤と併用療法においては、単剤 3.6% vs 19.2%, 併用 4.0% vs 12.3%であり、性別、治療法における交互作用は観察されなかった。治療のAEに明らかな差は認めなかった。


ジクロフェナク軟膏がHFS軽減につながり、カペシタビンの減量も減らせるという興味深い論文であるが、プロトコールにステロイド軟膏の使用について記載がない点が気になった。プロトコール上併用を禁止されているのは経口NSAIDsとアスピリンのみ。本研究は"予防"の試験であり、プラセボのHFS頻度や減量率からするとステロイド軟膏の併用も当然禁止されていた可能性が高いと考えるが、普通プロトコール作成時点で指摘が出る気がする。こういう点がインドの臨床試験のQualityにやや懐疑的な見方をせざるを得ない理由だ。しかも単施設なので運用上色々とバイアスが入っていてもおかしくはない。

日常臨床で私は、G1のHFSが出た時点でステロイド軟膏を早めに塗布するように指示しているが、ステロイド軟膏は白癬感染(特に足)を招く可能性もあり、実際HFSと足白癬が被った場合に対処に苦慮するシーンが割とある。ジクロフェナク軟膏はそのようなリスクが無く、他にも目立った副作用が無いという点で優れた治療法だと思う。明日からの治療に活かしてみたい。


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