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ハツコイ

昔話でもしようか。

私がマトモに恋をしたのは、あの時の先輩だったのかもしれない。

今まで散々恋愛感情を向けられてきた。
その9割9分は異性。同性からも少々あった。

まあ、僕、絶妙に狙いやすそうな性格してるし、顔も心も美しいからしょうがないか〜笑。←クソ調子がいい時のポジティブシンキング。
普段は自分のことクソブス性格ゲスと思ってる。

やっぱ男も女も、ある程度は見た目よな。
見た目は、心身の健康度や年齢に直結しやすい要素だからね。

これは自分が今と違う性別に生まれても、そういう好意を向けられるのだろうし。生きてりゃ、それはしょうがないこと。
生存本能的に、型のいい異性を好むのは普通で悪いことじゃないよ。

ただ日常的に、異性にも同性にも自分の容姿をジャッジした意見をいただくたび、そう思ってる。

見た目が良かろうが、悪かろうが、それは常に思ってしまう性格だ。

異性じゃなかったら、この容姿と性格じゃなかったら、
好きにもならないくせに、身勝手に。ありがとさん。

とかクソふざけた冗談で頭を埋め尽くして、恋愛から回避する生活を送っていた。正直恋愛が嫌いだしつまらない。親的存在が欲しい。

だけど、こんな私が自分から好きだとか、恋してるって
自覚した上で関わったのは、あの時の先輩だった。

今までに文章とか、頭の中では散々恋愛なんて所詮、種の存続のための副産物ってふうに言ってきたけど。めっちゃ天邪鬼だけど。

自分もその中の1人ではある素質があったし、今もそう。
これからも、また現実を生きようと頑張って、やる気になって、自然に身近な人とそういう文化の中で生きれそうだ。

その時の健全度合いによるんだけどね。

将来なんだかんだ、異性と付き合ってとか想像できるようになってきた。まだ受け入れられないし、友達優位だけど。

だから、なんか今できることは、昔のコイを振り返ることだ。

まず先輩は……綺麗だった。

なんかカワイイ系でもあって。笑顔がちょーカワイイんだよね。

今まで人のこと可愛いって思ったことなかったんだけど、先輩は最初から可愛かった。きっと、容姿は綺麗めとかカワイイ系のちょっと女性的な人が好みだった。

さすがに可愛かったから、声はかけて、後輩としては媚びたのだけど、その可愛いと思う感情は隠していて。

でも先輩の方からも「なんか会った時から、可愛い子いるなーって思ってたんだよ」って言われて、初対面にして両思いかいっ!とは内心思った。

なんかここはもう恥じずに、正直に言った方がいいかなと思って、自分も先輩可愛いです!と言いまくった。

でもそれは、なんかノリ的なものでもあって、表面的なおだてや冗談、身内ノリにもなってしまっていて。

「可愛い」って、後輩としてなのか、見た目のことなのか、内面のことなのかも、どっちのことを言ってるのかも、あやふやで。

好きなのかコイなのかどっちなんだい、と思って。
私はその真意を知るために、積極的に声をかけた。

好きな食べ物とか、今日あったこと、頑張ってること、学校の行事、など

ありふれたことだが、可愛い先輩と話している時間が楽しかった。

私は深い話をするのが本当はしょうに合ってるんだけど、先輩の前だとそういう話も意外と楽しかった。

今思い返すと、ピュアッピュアな好きだったなと思う。

そんなピュアピュアなコイの中でも、気づいてることがいくつかあった。

あんま冷静にならず、単純な好意に脳みそが溺れている状態がコイなのだろうけど。

先輩がいつも長袖を来てること。夏に暑いから脱ぎなよ〜と先生に言われても、冬ジャージを着てること。いつも教室には来てないらしいということ。

不登校気味だったこと。

ほほう。
何となく最初から察してはいたが。

多分先輩は、苦しみを抱えてる。

そう思いながらも、今まで通りに接していた。
ここで急に距離を詰めて、救おうとか思うのは、ある意味。
傲慢で先輩の繊細な心を踏み散らす行為そのものだから。

鬱くしい花は、ただ隣にいて話して、守り愛でるしかないのだ。

そうしてくうちに、先輩がポロポロと事実を話してくれた。

先輩は同性愛者だ。

『同性が好きなんだよね。で、最初会った時、可愛い子〜と思った』って会話の流れでフラットに言ってくれた。

だから、私は若干動揺して、
『え、えっと。先輩も可愛いしかっこいいですよ。た、たぶん、自分もあんま好きになる人の性別は決まってない、というか….』

と言った。くそ意気地なし!私は若干、濁してしゃべった。

私はその時、自分が同性愛者か異性愛者か分かんなかったし。それはある意味誠実な答えなんだけど。

その答えの後、先輩は、
「昔、異性の先輩と付き合ったことがあったけど、ほんとに好きではあったけど、途中で違和感を抱き始めて、別れた。」

「やっぱり自分は異性が無理で、同性が好きなんだと気づいた。」

と言ってくれた。

なんか、その会話の後。

自分と先輩の間には、コイよりも病んだ人生がテーマとして浮き出て。
恋どころじゃないな……と思い、先輩の話を聞いていた。

しかし。こんな若い頃に、同じように同性が恋愛対象の子と関われたことって、ある意味すごく記憶として残っていて。

なんか全然ね。元々同性に好意を抱くことは普通って思ってたんだけど、
さらに先輩と会ったことで、『あ、自分って一人じゃないんだ。』って気持ちが高まって。

先輩も何か確信して、早いうちに、私を信頼してその話を、みんなのいる部室の一角でこそっと話してくれた。

床に二人で座って、そんな話をしたこと。覚えてる。

コイじゃないにしろ、恋があったにしろ、
あの時、優しい目をして、何もできない無知な私に、早い段階で心の大事な部分を共有してくれた先輩が、私は好きだった。

先輩はほとんど学校に来てないから、当然私と会う機会も少なかった。
それでも、先輩は先輩の大事な部分を打ち明けてくれた。

だから、私は当時、先輩ともう一人の似たような異性の子が部室にいた時、

『二人といると居心地が良くて、好きなんだ。』って正直に伝えた。

実は二人に恋をしてたわけではなくて、

きっと私はその二人のことをただ守りたかった。

儚くて心が病んでる二人を勝手にスキになってた。

すると二人はニコニコして、ありがとうと言った。
あの時、私は唯一幸せだった。最高の瞬間だった。

恋とか愛とかじゃなくて、「ただりんごが好きなんだよね〜」ってノリで言うみたいに、『好き』って言った。

私の「好き」が、異性と同性その二人に初めて受け入れられたこと。

あ、自分って、
自分の好きって間違ってないんだ、良いことなんだって。

気づけた。

身勝手になって、私のことを可愛がってくれた。褒めてくれた。柔らかな優しいスキを向けてくれた。

先輩の親は、おそらくおクスリをやった過去があって、職業はー系、
家でお母さんと二人で過ごしてて、
たまに先輩は一人でお出かけしてること、

私とお出かけに行きたいって、誘ってくれたこと、
電車に乗って、街のショッピングモールに行こうって言ってくれた。

会う回数は少ないけど、会話だけは鮮明に覚えてて、
今は忘れかけてるけど、思い出してここに書けた。

何年も前のことなのに、覚えてるよ。スキだった。

先輩は結局、学校にあまり来れなくなって、交換してた連絡先も変わってしまって、
お出かけの約束も果たせなかった。

だけど、

先輩の進学先は知っていた。

街で歩いていたら、いつか会えるかもな。って思いながら、私も卒業して、日常を生きていた。

すると、幸運なことに、それが実現したのだ。

カラオケ店で。

一人でカラオケ店に入って、早速時間とドリンクを決めようとすると、

店員が、先輩。。。だった。

過去の記憶が一気に頭に押し寄せて、
心臓がバクバクする。

当時のスキよりも、もっと強烈なものが頭にやってくる。

頭でなく、体でそれがわかった。

早く、早く、自分に気づいて!!って必死で目で訴えた。

その顔は鏡を見なくてもわかる。

まさにイヌ。

先輩の方が背が低いが、私は先輩の目を上目遣いして見てた。

口をきゅっと結び、高鳴る心臓を隠し、
目で訴える。

頭の中で、先輩先輩先輩と言ってる。

頭が熱い。緊張して熱いとかじゃなくて、なんか心が熱い。

ジンジンする。

先輩は接客の典型文を発した後、

カラオケの会員証を出した時、私の名前を見て、
先輩は私の名前を呼んだ。

もしかして和図?久しぶり!!

先輩のキュートな顔がさらに良くなる。
満面の笑みである。

そこから、立ち話をした。

元気にしてる?って言うたわいのない話。

お互いの近況と元気だよって言う報告。

お互いに良かったと安堵して、自然に相手の幸せを願っていた。
という事実を再確認した。

先輩は高校を卒業したら就職するかもしれないこと。

ここのバイト先は店長が優しくて、もしかしたら正社員になろうかなって今思ってること。今の環境でうまくやってけて、一応元気だということ。

そういえば、その時の先輩はもっと身なりが整っていたし、服も私服だった。少し精神的余裕ができたのかなと思った。良かった。

あの時、先輩が少しジャージを腕まくりして、部室で話してた時。
私はその傷跡の名残を見たのだ。赤くはないけど、皮膚が線状に盛り上がっている。たぶん足にもそれがある。ネットでそういう画像を見たことがあるが、生で見るとこんなにも、その人の葛藤がこっちにまで伝わってくるのか。

自分がこの人にできることはないのか。あるのか。って必死に探したくなって、葛藤する。こんなにも綺麗な人に、痛々しい傷がなん度も刻まれているのか、って、事実に苦しくなる。

私が今、学校で楽しくやってるか、元気か聞いてくれた。

今までのどんな恋よりも純粋で、互いの幸せな生活を願ってた。

本当に好きだった。
思い出が蘇って、先輩と歌ったお気に入りの曲をカラオケで歌ったり、今、店内の防犯カメラで先輩に見られてる可能性ってあるのかなとか、ドリンクを撮りに行ったら会えるかなとか、考えながら感傷に浸った。

帰りの支払いも先輩と会えた。

『またのご来店をお待ちしております。』ニコっ

ぎこちない接客だけど、今までで一番、また来たいと思えた『お待ちしております』だった。

敬語の接待の間に、少し私語をして、私を見送ってくれた。

カラオケのレビューが会員証に表示された。いつもはめんどくさくて、しないそのアンケートにも答えた。

そこから何度か、カラオケに行ったが先輩には会えなかった。
そりゃあ、生活してる時間軸が違うから、あんま偶然会えるものでもないよな。

数年経って、私はもう街を出てそのカラオケ店にも行かなくなったけど、
先輩が幸せになってるといいな…って思ってる。

今、どんな生活かな、恋人とかできたのかな、どこで働いてるんだろって、
想像する。

絶対、不幸になっててほしくはない。

私が先輩のためにできることはもうないかもしれないけど、
あの時、思春期に先輩と会えて良かったと思ってるし、

自分も先輩もきっと、互いに純粋に好きで、
この人はどこかで幸せになっててほしいなって思ってる。

きっと、忘れてないよね。

たぶん、覚えてるさ。。。

私は忘れたくないから、書き残しとくけど。

先輩以外にも、今まで何人も好きになってきて、
動物らしい恋愛感情は、私だって何度も抱いたことはあるけど、

やっぱその中でも、先輩との好きは心地よかったな。

あの時の子供らしさもあり、単純な恋愛の好きでもあり、同じところが多い嬉しさもあり。

あの時に代わる好きは、きっともう二度とない。

私は別に異性も好きだし、恋愛感情への嫌悪もあんましない。
それに私に恋愛感情を向けてくれる方にほとんど同性がいないから、きっと私は異性愛の方に傾倒していく可能性が高い。

まあ歳を取るたび、好きよりも恋愛の方が短期的で快楽物質がサイコーって感じに思えて。ゲームとして捉えて、扱うこと自体に溺れてる。

もうあの頃の純粋なコイなどないのだ。欲を自覚した上での心が薄汚れた理屈の恋ばかりなのである。

異性(または同性)と恋愛として関わる中でも、やっぱ心の底で、あの時の先輩とのスキをこの人たちと育みたいなとは思ってて、

自分もあの頃の純粋な自分に戻りてーとか思って、

何も考えたくない。

何も考えてなかった、あの頃のスキになりたいなーって思っても、
現実はなれないんだよね。

はあ、でも。

幸せになるためには、現実を生きるしかない。

自他共に、助け幸せを分けるには、一人にならずみんなと生きてくしかない。

だから、過去もある程度大事に心の奥にしまっときつつ、
それを勇気にして、現実を生きるのよ。


先輩、あなたが好きでした。
どうか幸せになっていてください。