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茶の湯暮らしのための古町家(明治築)修繕(DIY)レポートその1

茶の湯が体験できる家を復活させる

2012年表千家の『講師』資格取得。その年から『教授』資格を頂くべく、教授者講習へ通いながら、茶の湯の歴史や道具のことなど資料を読みあさり、知識も溜めて、いつかは茶室を作ることを目標に、2017年石川県白山市(旧松任市)の古町家(茶室あり)を購入して茶室を作ったときのお話です。

2012年に住んでいたのはミサワホームのプレハブ住宅『GENIUS二人の家小屋裏二階』というモデルです。長野県の某所で、土地の広さは100坪あったため、茶室・水屋・茶庭・露地を作ることが広さ的にも可能でした。そこで増築する形で見積もりをしてみましたが、茶室・水屋の建築で600〜700万円、庭の整備に100万円、電気・水道工事・諸設計・申請など諸費用に100万円と積み上げていくと、少なくとも1,000万円位は予算が必要だと判明しました。

こうなるとただの趣味に1,000万円もつぎ込めるほど裕福じゃなく、そもそも茶室を作る前提で家を建ててないし、やはりかかった費用は回収する必要があると考えました。そこで茶道なら本場ということもあって、京都北山辺りの町屋を購入しようか調査を開始します。2012年当時、リフォーム済み町屋価格は2,500万円くらいでしたので、ちょっと頑張ればいけそう。

しかし現実的に調査してみると、観光客対象のビジネスモデルの場合、ルートから離れると集客に苦労し、アクセスの交通機関がバスメインになると、日本人でもハードルが上がり、既に表・裏・武者小路をはじめとする茶道教室は他のどの都市よりも密度が高く、茶道体験のビジネスモデルは既にはじめられているため、京都での新規参入は実際のところ大変難しいことがわかってきました。そこでデータを集めてその他の地で実現できないか検討をはじめました。

「お茶と和菓子の消費量」

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茶道といえば和菓子は必携です。全国各地に和菓子所は多くあるので、『消費量』という概念から調査することにしました。2012年の統計情報ですが、グラフ化したときに3つの都市が出てきました。京都市、島根県松江市、2015年から北陸新幹線延伸で話題になった石川県金沢市。総務省統計局の統計データはこういうときに便利です。和菓子と関係ないですが、冒頭のグラフで金沢市のアイスクリーム・シャーベットの消費量が全国平均よりも高いことから、甘いものが好きな場所なんだなって思っちゃいました。
ちなみに2012年当時、長野県からみて金沢市は北陸新幹線(当時は長野新幹線)延伸地として県内の至るところで語られるようになっていて、馴染みが出てきた場所です。ちなみに松江市は和雪庵の亭主が大学時代を過ごした馴染みの場所で、おまけに茶道不昧流の本拠地です。お茶と和菓子の関係はデータでも出ていました。金沢市も前田藩の文化奨励政策で裏千家との関わりが強く、和菓子の消費量が多いのですね。それ以上に甘いものが好きな感じですが。こうして『茶道ビジネス』を展開できそうな場所を決めて、また北陸新幹線延伸を控えて盛り上がっている北陸に乗っかろうという企みがスタートしました。

中古住宅としての町屋

最初に取りかかったのは現地調査という名の観光です。長野県松本市から西側というのは近いようで遠いのです。(北アルプスという壁は高かったのです)そのため長野県松本市に来てから金沢市まで行ったことがありません。高山市までが限界でした。東京から見ても北陸(富山・石川・福井)へのアクセスは一度滋賀県まで回らなければならず、北陸新幹線延伸は経済的にも大きな影響がありそうです。

観光がてら2013年頃から金沢市に年に数回のペースで通い始めて、2017年に現在の物件に出会うまで、数々の物件との出会いや、知識不足による紆余曲折があって、実際に移住を決意するまでかなり時間を要しました。物件との出会い記録はTumblrにまとめてありますので、興味のある方はどうぞ。

結局金沢市ではなく白山市という土地で町屋(明治建築)を取得できました。6年ほど空き家だったものの持ち主が比較的管理してくれていたので、大規模な修繕は必要なく、リフォームで済みました。その中でもDIYでできること、できないことを切り分けて、予算を圧縮しながら和雪庵を作り上げていきました。

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修繕・リフォームの段取り

明治建築という古い建物で、内外装の目に見える部分は取り換えれば良いのですが、過去の改装で変わった柱組構造の問題は専門家の意見をもらわなければ安心できません。電気・水道設備関係は絶対条件ですね。明治建築とわかっているので、床下・屋根裏は念入りに見てもらう必要があります。和雪庵は物件を探すとき金沢町屋情報バンクを利用しました。このときに知り合った建築設計士さんに面倒を見てもらいました。知り合ったきっかけは金沢市の町家保護関連イベント。金澤町屋研究会主催の金澤町屋巡遊で町家改装事例の見学に行った『豆月』さんの主で、JELL-architectsの北出さん。最終的に金沢市とは関係のない白山市に決まってしまいましたけど。北出さん自身、茶道東千家(非常にレア)をたしなんでいて、豆月さんにも茶室を作った経験からも知識がとても豊富でした。

最終的に物件を確認して、工事進行管理と改修設計をお願いしたの場所は、メインの茶室となる大広間、水屋、台所、2階床など。細かな設備として洗面台追加。電気配線は全て新設して、ガスは全廃。茶室周りは表千家の所作を基本にして、釘の位置や方向など、細部まで気を使っていただきました。

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水屋ビフォー・アフター

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写真に写っている簾戸は物件の持ち主が古物商さんに売ってしまい行方不明になってしまいました。

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昭和46年ごろに増築して作られた水屋です。表千家だったと聞いていましたが、蛇口や釘の位置などが不思議な状態です。竹簀ではなく、簀子がはめられていました。壁のひび割れが目立っていたのですが、コンクリートブロックが下地に使われており、埋めることが困難であることがこのときにわかりました。次に天井周りです。

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すだれ天井になっているのですが、その裏側とやけに砂埃っぽいことも気になりました。汚れを落とすつもりですだれ天井を剥がしてみたところ…

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裏板はなく簾がそのままはまっていただけで、砂壁が崩壊しており、柱も一部破損しておりその砂埃が水屋に落下していました。天井に関してはセルフDIYで対応し、水回りは専門家に任せました。

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壁面のひび割れは柱を追加する方法で隠しました。強度的には問題ないのと、そのままでは壁面に釘を追加できないためです。

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簀子を竹簀に変更し、水道管から蛇口まですべて取り替えました。目隠し板も追加しつつプロの作業が終わった頃を見計らい、DIYで天井を貼っていきます。天井材として良いものがなかなか売っていないため、フローリング材を転用しています。

作業をしている写真は撮っていいないため残っていませんが、あらかじめ継ぎ加工されているため、必要な長さにカットして天井へ差し込んでいくだけの作業ですみました。

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以下はアフターの状態です。

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フローリング材の天井も問題なく設置できました。塗装も考えましたが、違和感がさほどなかったのと、使用する人が限られているため、無塗装のままにします。色が違うのは格安で売り出していたフローリング材を使ったためで、本来は塗装をして使う前提の材料のようです。床面を天井面として貼りました。固定は本来必要がないのですが、用途が違うためズレ防止の為にL型金具で6箇所止めてあります。

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合板のままだった壁面も天井に使ったフリーリング材の端材を使って埋めました。

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全体的に使い勝手の良い水屋に改修することができました。

その2へ続きます。

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