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#14【Tips②】講師業を投資ビジネスに変える2段階思考法

みなさん、こんにちは。
中小企業診断士の岩瀬敦智(いわせあつとも)です。

このコラムのテーマは「経験がない診断士が、企業研修講師としてキャリアアップして、安定して稼ぐためのヒント集」です。

少しでも皆さんのキャリア形成の役に立てば幸いです。

講師業の売上高の基本公式

「講師業は単価ビジネスなので、大変ですよね」という声を耳にすることが少なからずあります。

確かに講師業の売上高の基本公式は下記のとおりです。

1日あたり単価(円)×登壇日数(回)…式①
※テキスト作成費は別途の場合もあれば、単価に含まれる場合もあります。

1日あたり単価は講師によって違います。バイネームで戦える講師は単価を高めることが可能です。実際に某研修ベンダーの営業担当者の方も、「ネームバリューがある講師や、独自のキラーコンテンツがある講師は、高めの価格設定で営業します」と言っていました。

このように単価の多寡はあるものの単価ビジネスであることには違いありません。

単価ビジネスを投資ビジネスに変える2段階発想法

しかし、キャリアの積み方によって「完全な単価ビジネス(以下、単価ビジネス)」のままか、「初期投資の仕方によってリターンが大きくなる投資型ビジネス(以下、投資ビジネス)」になるかが分かれます。

STEP1 稼働時間の概念を「登壇時間」から「準備時間+登壇時間」にパラダイムシフトする

これを紐解くには、下記のとおり1日あたり単価(円)を分解して考える必要があります。

1日あたり単価(円)=1時間あたり単価(円)×1日あたり稼働時間(時間)…式②

具体例で考えてみましょう。

「1日あたりの単価=10万円」「1回あたりの稼働時間=20時間」という数値を式②を当てはめた時、「1時間あたり単価」はいくらになるでしょうか。

答えは「1時間あたり単価=5千円」となり、式は下記になります。

10万円(1日あたり単価)=5千円(1時間あたり単価)×20時間(1日あたり稼働時間)

与件情報の「1日あたり稼働時間=20時間」に違和感を持った人がいるかもしれません。相当、ブラックな企業研修に登壇したのかと考えた方もいらっしゃるかもしれません(笑)。

違和感の原因は「1日あたり稼働時間」の定義の仕方の違いにあります。1日あたり稼働時間は登壇時間と捉えることもできますが、現実には登壇以外にもその研修に対する業務が発生します。例えばテキストを作成したり、テキストを予習したり、リハーサルをしたり、事後報告書を書いたりします。

例えば、登壇時間が6時間の研修でも、テキスト作成に8時間、予習やリハーサルに5時間、事後報告書作成に1時間がかかったとすれば、稼働時間は20時間になるのです。

講師業は1日あたりの単価は固定されることが多いため、その点では単価ビジネスです。ただし、1時間あたり単価に目を向けると投資ビジネスの側面が見えてきます。なぜなら、1日あたり単価が固定でも、1時間あたり単価は変動するからです。

もっと具体的に言うと、1日の登壇にかける稼働時間が長くなるほど、1時間あたり単価が減少し、稼働時間が減れば1時間あたり単価が増加するのです。

仮に、「1日あたり単価=10万円」「1日あたり稼働時間=10時間」とすれば、「1時間あたり単価=1万円」になります。先ほどの「1日あたり稼働時間=20時間」の場合に比べて、時間当たり単価が2倍と効率的になるのです。

では、1日あたり稼働時間を減らすにはどうすれば良いのでしょうか。その答えはシンプル。登壇以外の時間を短くすることです。登壇時間を短くしてしまうと、クレームに直結してしまいますね(笑)。登壇以外の時間の中で報告書を書く時間はそれほどボリュームがありません。焦点を当てるべきは準備の多寡です。それによって稼働時間が大きく変わるのです。

つまり予め戦略的に行動し、徐々に準備にかける時間を減らして、1日の研修に対する実質的な稼働時間が減るようにすることが重要なのです。

ここまでの話をまとめると、研修の稼働イメージについて「1日あたり稼働時間=登壇時間」ではなく「1日あたり稼働時間=準備時間+登壇時間」と考えること。その上で、準備時間が逓減するように動くことが重要なのです。

このパラダイムチェンジが、研修を単なる単価ビジネスから、投資ビジネスとしての領域へとシフトチェンジする第1ステップといえるのです。

STEP2 1日あたり単価固定型から、1時間あたり単価固定型に変える

その上で、第2ステップへと進みます。もう一度、式②に戻ってみましょう。

【再掲】1日あたり単価(円)=1時間あたり単価(円)×1日あたり稼働時間(時間)…式②

第1ステップでは、「1日あたり単価(円)」を固定しました。第2ステップでは、自ら得たい「1時間あたり単価(円)」を固定します。その上で、予想稼働時間を掛け合わせることで1日あたり単価(円)を決めます。

例えば、「1時間あたり単価(円)=3万円」と固定し、「1日あたり稼働時間(時間)=10時間」とすれば、「1日あたり単価(円)=30万円」となります。

もちろん、きれいにこの式に当てはめることができる時ばかりではありませんが、第2ステップのポイントは、講師側が単価を決める交渉力を持つということです。

その背景には、第1ステップで効率化したことで投資できる時間が生まれたことがあります。その投資可能な時間を使って自分のコンテンツを作成することで、付加価値を高め、「1時間あたり単価」を高めることが可能になるのです。

第1ステップと同様、「1時間あたり単価」が高まれば、より効率的にお金を稼ぐことができます。

このように2段階ステップを辿ることが、講師業で単価を上げる鍵になるのです。

最初からSTEP2を狙うと失敗する。STEP1での戦略的行動が投資ビジネスへの近道

そんなまどろっこしいことをせず、最初から第2ステップ、つまり自らのコンテンツを作成すればいいではないか、という意見があるかもしれません。しかし私の経験上、最初から第2ステップに取り組んで成功した講師は少数派です。冒頭の「講師業は単価ビジネスだから大変」というコメントをする人は、独断と偏見でいうと最初から第2ステップを狙って受注にいたらず、交渉力を得られないため1日あたり単価が低額になってしまった人が多いように思います。

そして「講師業は自分の労力に対して単価が見合わない。やってられない」という発想に陥っているように見受けられるのです。

どんなに時間をかけてオリジナルコンテンツがあっても、経験や実績に乏しい講師には高単価の依頼はきません。折角、時間をかけて作ったコンテンツがなかなか売れず、ようやく受注に至った場合の心理状態を改めて式②に当てはめて考えてみましょう。

【再掲】1日あたり単価(円)=1時間あたり単価(円)×1日あたり稼働時間(時間)…式②

経験や実績が乏しく「1日あたり単価(円)=10万円」としましょう。そんなに悪くないじゃないかと思われる方もいると思います。しかし、それまでオリジナルコンテンツ作成に時間をかけ、受注にも時間がかかった人は、コンテンツ作成時間も1日あたり稼働時間(時間)に入れたくなります。例えば「1日あたり稼働時間(時間)=50時間」としたら、どうでしょうか。「1時間あたり単価(円)=2000円」となります。

こうなると、前述のように費用対効果が合わないという感覚に陥ってしまうのです。

大事なことは一足飛びにSTEP2を目指すのではなく、STEP1から地道に積み上げることにあります。さらには実質的な稼働時間を逓減するためにSTEP1の段階で戦略的な行動をとることが必要になるのです。

その戦略的行動こそが講師業を投資ビジネスにするための2段階発想法を推進する原動力になります。それでは、戦略的行動とは具体的にどのような動き方になるのでしょうか。

それについては、次回、掘り下げて説明したいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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