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まあまあディープなタイ音楽の紹介

2,3年前から大学のプログラムでタイに行く可能性があったことをきっかけにThai popなるものを学んでおかねば、ということで純粋に国のプレイリストを調べて浅いDigをしていた。

そう。こういうやつで。ベタ中のベタ。

その頃他の国の音楽もこの手のもので漁っていたが、あくまでも、リアルタイムの人気音楽しか知ることができないわけで、上位はビルボードに入るような洋楽モノ、それに追随して世界のトレンドに乗っかる国内曲しか得られるものがなかった。うん、つまらない。

なんかそういうのじゃないんだよなあ、、、と思いながらもいい意味でねちっこくて、ものによってはとても音楽にマッチしそうなタイ特有の発音に密かに期待を寄せつつ数年が経ち、、、、、
今年になって用事終わりに赤羽のタイのレコード専門店(お店のサイト→ http://isans.jp)に行ったり、タイを中心に東南アジア音楽を広めている日本のsoi48というイベント(ユニット名でもあるらしい)の存在を知ったり、ことあるごとに触れる機会があったおかげで、ようやく紹介できる程度、中途半端に曲のストックが貯まった。忘れないうちに今までの音楽タイトリップ、供養させて頂こう。

1.TKO:สี่แยกในดวงใจ

イキったコソ泥三人衆ではない。彼らこそ1993年作・タイ発のヒップホップクルー・TKOである。

曲序盤で『Original Gangsta』と標榜しているものの、お世辞にもアメリカ本国ラッパーに匹敵する威圧感があるとは言い難い。なんなら優しそうに見える。いや絶対優しい。いとこのお兄ちゃんくらい優しい。
どうしても彼らに元祖に負けないマッチョイズムを見出したくなった私は曲名を翻訳してみることにした。

え全然F◯CK THE POLICE じゃないじゃん。
これじゃ純粋無垢が売りのアイドルじゃん。

しかし、この読みはあながち嘘ではない。
アイドルばりに持ち合わせる"可愛げ"がこの曲の強みだと私は感じているからだ。

ワウがかかったミュートのリフ、メインのバースを担当するMCの語気の穏やかな声色、chやpの音がアクセントとなるタイ語ならではのユニークなフロウ、白玉エレクトーン音、ベースライン、、、
全体的に曲の構成要素が"丸い"。そこに太さがあるフィメールラッパー(?)がhookを務めることでもたらされるちょうどいい"サビ感"。本場に肩を並べる勢いこそないものの可愛らしささえ感じる角のない音像と整然とした聞きやすい構成が私にとっては真新しい味のあるヒップホップでいつしか聴き入っていた。

ギャングスタラッパーとは思えないピュアさが仇となったのか、当時は商業的には失敗。しかし個人的には期待していたタイ語の発音のポテンシャルが曲中で存分に発揮されており、新鮮な気持ちとなった思い出の曲である。

2.MORLAMBOI × NOT’TOY Featuring YEEPUNZ & BLACK N’ BANK ‘’ก.ไก่''

TKOから27年….
前者とは打って変わって土臭く濃ゆいサムネイルの楽曲が2020年末にリリース。
タイのヒップホップは全く違うベクトルへ変化を遂げていた。
先述したSoi48の溺愛するタイ土着の音楽”モーラム”とドリルが融合した、それまでに類がない新しい楽曲である。

モーラムはタイ東北部で親しまれている、ラオ語で歌う伝統音楽。"ラオ"という言葉からもあるように元々は14世紀から存在するラオスの歌遊びが原型にあるが、ラオスを保護国化していた時代にタイの王様が禁止令を出したりして一時的になくなりかけたり、西洋の音楽が主流となり12音階がポピュラーになる中で7音階を頑なに辞さなかった踏ん張り強い歴史ある音楽だ。

マイノリティのジャンルならではの個性がヒップホップの土壌でもたっぷりと生かされているのが流石モーラムという感じである。前半でドリルのリズムパターンで曲が温められ、その上で満を持して3回目のhook前後から徐々に現れるモーラムのリズムを基調とした重低音。これにやられた。

そしてなんといってもNOT'TOYが歌い上げる中毒性抜群のフック。TKOよりもクセが強いねちっこいタイ語。吉幾三のバイブスにも通ずる田舎っぽさ。やはり日本と同じように方言によって威勢もイントネーションも違うのだろうか。「俺ら東京さ行くだ」は"ねぇ"の多用で聴き手を誘うが、この曲のhookで最後に"ๆๆๆๆ"とまくし立てる。

よりローカライズされてオリジナリティが創出されたヒップホップがいまだに私の心を掴んで離さない。

3.Polycat - เวลาเธอยิ้ม

日本のシティポップ好きを公言している3人組のバンド。本曲が収録されているアルバム”80 kisses”は名前の通り特にその影響が色濃く反映されている。公式MVもその当時の雰囲気(どちらかというとアメリカっぽいが)に合わせた味わい深い出来。ジャケにどことなくvaporwave臭(良い意味)が漂うが、実際はもっと分かりやすいシンセポップを基調としている音楽性。

4.  moderndog - ขอ

最初に紹介したTKOを手掛けたプロデューサーを辿って見つけたバンド。2ndアルバムから一曲。soundgardenを彷彿とさせるようなグランジサウンド全開の曲やフリーのようなバキバキスラップのファンキーチューンが収録されている1stとはうってかわって、この曲はミニマムなサウンドを擁したボサノヴァである。その上、単調ではない。細かい音のせめぎ合いまであるのに整然としている。面白い曲。

上記2組がかなり推しすぎてスペースを使ってしまったため、下の2つは大分おざなりになってしまいましたが、、、タイの個性ある音楽がより日本に来てくれることを切に願います🙏

(文:高床式人生)

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