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招聘団体紹介企画 『円盤の乗り方』vol.1

どらま館制作部の重村です!

今年度どらま館招聘団体「円盤に乗る派」を紹介する企画。『円盤の乗り方』と題して、インタビューや音声コンテンツをお届けします。(事前の企画紹介記事はこちらから)

vol.1となる今回は、「メンバー」「団体」「アトリエ」「作品」といったトピックで「円盤に乗る派」を深掘りしていく記事コンテンツになっています。

各トピックに対して、カゲヤマ気象台さんの想いどらま館スタッフの興味を絡めながら紹介していくインタビュー形式です。最後までお読みいただけると嬉しいです!

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カゲヤマ気象台(photo by Arata Mino) 
1988年静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。東京と浜松の二都市を拠点として活動する。 2008年に演劇プロジェクト「sons wo:」を設立。劇作・演出・音響デザインを手がける。2018年より「円盤に乗る派」に改名。2013年、『野良猫の首輪』でフェスティバル/トーキョー13公募プログラムに参加。2015年度よりセゾン文化財団ジュニア・フェロー。2017年に『シティⅢ』で第17回AAF戯曲賞大賞受賞。

※以下、カゲヤマ=カゲヤマ気象台/どらま館=どらま館制作部スタッフ重村・にいづま

メンバー

《どらま館》
「円盤に乗る派」には何人のメンバーがいらっしゃるのでしょうか?

《カゲヤマ》
現在、私含めて4人のメンバーがいます。1人目は2019年に加入し、今回の『ウォーターフォールを追いかけて』にも俳優として参加する日和下駄
2人目は2020年に加入したのですが、日和下駄よりも先に出会っていた俳優の畠山峻。そして、3人目は「アドバイザー兼ウォッチャー」として2020年に加入した渋木すずです。

《どらま館》
アドバイザー兼ウォッチャー」とはどんな役割なのでしょうか?

《カゲヤマ》
団体の活動を見つつ、フィードバックなどを行う立場です。作品を製作する「”クリエイション”」からは少し距離を置いて参加しています。この役割は私でなく、渋木さん自身が提案してくれました。
渋木さん曰く、「自分以外のメンバーが全員演劇を主な活動としている男性ということもあり、内輪で凝り固まってしまいがちな視点を緩和したい」という意図もあったそうです。

団体

《カゲヤマ》
「円盤に乗る派」という団体が立ち上がったのは2018年です。その前身となるユニットを学生だった2008年から続けていました。
そのユニットでは、その時々の興味を実験的に演劇にしており、長期的な目標を掲げて始めたわけではありませんでした。

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​▷「円盤に乗る派」改名後初めての公演『正気を保つために(2018年7月5日~10日)』の様子

ただ、10年ぐらいやったタイミングで「こういうことをやるんだ!」という方向性を打ち出したいと思いました。そこで、10年前につけたユニット名も改名することになり、「円盤に乗る派」と改めました。

《どらま館》
それまで俳優のいなかった「円盤に乗る派」に新たに俳優のメンバーが入るということはとてもエポックメイキングなことだと思います。
どんな想いがあり、最初の俳優のメンバーである日和下駄さんを迎え入れたのでしょうか?

《カゲヤマ》
メンバーになる前にも演劇を一緒にしてはいましたが、それぞれが目指してるもの・なりたいものに到達する上で、一緒にやった方がいいという結論にお互い達し、加入に至りました。
一緒にやることによってそれぞれの目的が達成しやすくなるというのは長期的な意味なのですが、短期的な意味ではそれぞれの公演ごとにも当てはまることだと思います。

アトリエ

《どらま館》
今年4月に団体専用のアトリエ「円盤に乗る場(※)」をプレオープンされたと思うのですが、メンバーにとってそのような「場」ができたことよる変化や対外的な影響などはありますか?

「円盤に乗る場」:誰でも参加可能であり、恒常的に存在し、演劇にまつわる上演以外の様々な営みにアクセスできる場所。当初はweb上で始まり、2021年4月1日に実際の場所を構えてプレオープン。15組ほどのアーティストで一つの集団を形成し、さまざまな活動を展開している。

《カゲヤマ》
まず、色んな活動がやりやすくなりましたね。何か決めるにしても、場所を抑えなければいけない。何かやりたいと思ってもハードルが高いことがありましたが、アトリエができて、気軽にできるようになりました。

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▷2021年4月1日にプレオープンした「円盤に乗る場」の様子

場所を作った理由としては、「本腰を入れてクリエイションがしたかった」からです。一方で、いわゆる演劇のためだけに作られた場所ではない場所を構えるということも自分たちにとって強い意味を持っていました。
本来なら劇場さえあれば、人々が交流し、繋がり合えるということが理想です。しかし、現在の東京の劇場はそのような形で機能してないと思っています。いわば、ただ作品を観て帰るだけの場所になっているという印象です。
だから、劇場に対して「こんな機能があればいいのにな」と思っていた場所を我々で作りたいという想いがありました。

《どらま館》
演劇のためだけではない場所を構えること
で劇場本来の機能を持った場所にしたいということに共感します。
どらま館も、ただ演劇サークルの学生が使う施設になるのではなく、様々なひとの関心が持ち込まれる場所になったらいいねとよく話しています。カゲヤマさんは「劇場の交流」はどのようなイメージをお持ちですか?

《カゲヤマ》
実を言えば、究極的には直接の交流はあっても無くてもいいと思っています。一番大事なのは、普段の生活と演劇が無関係ではないことに気づくことだと思います。
日常から離れて演劇を観て、また日常に帰るというよりは、演劇作品が日常に侵食してくるような場所として劇場が機能すればいいなと思っています。その方法の一つとして、人と話すことが大切になるかもしれませんし、時や場所、街も大切になるかもしれません。
「街」を介して、自分の生活と演劇が繋がる。そんなことにフォーカスしていきたいです。

《どらま館》
なるほど、生活と演劇が繋がるというのは非常に興味深いお話です。またこの、場所の話は、劇場のみならず大学にも当てはまることだと思います。特に去年からオンラインになることで、「場所性」が失われてしまうことも繋がってくるように思いました。

《カゲヤマ》
その通りだと思います。そう考えると、早稲田という「街」にどらま館があることの意味も考えていきたいですね。日常の反復になって凝り固まる中で、そのような劇場があることは単純に「心の健康」に良いと思いますね。

《どらま館》
ありがとうございます。劇場が「心の健康」に繋がるという話は、後ほど第vol.2の方でも伺いたいと思います。
それでは、今後この場所がどのように機能させたいと思っていますか?

《カゲヤマ
この場所があることで皆んなが安心できれば良いなと思っています。「ここに来れば誰かに相談できる」「よくわからないけど、ここに来れば何か良いことがありそう」と感じ、自然発生的にやりたいことが生まれてくると良いですね。
根本的には心理的安心感や楽しさが大事だと思うので、楽しい場になっていければなと思っています。

作品

《カゲヤマ》
人との関わり方を演劇全体の構造の中に落とし込んで、作品を製作していきたいと考えています。
円盤に乗る派はただ上演だけにフォーカスするのではなく、「人が集まり、活動するという全体の動き=演劇」と主張していく団体です。
つまり、ただ作品を発表するだけではなく、もっと広く「演劇観」を定義して、それに基づいて活動している団体だということです。

▷円盤に乗る派『流刑地エウロパ』

《どらま館》
つまり、いわゆる一般に考えられるような「演劇活動=上演作品」ということではない、演劇の観方が観客にも求められているというわけですね。作品の上演以外にも見る部分はたくさんあるよ、というような。
そういった中でも、作品を作る上でのこれからの展望などはあるんでしょうか?

《カゲヤマ》
自分としては、最近むしろ演劇に対して逆に「保守化」していまして。これまではいわゆる前衛的なものを志向していたと思いますが、「物語があって、ドラマがあり、エンドを迎える」ものが演劇だと、以前にもまして強く思うようになりました。
だから改めてちゃんと演劇作品を「保守的」に作りたいと思っています。特に、戦前の新劇が試みていた、近代の演劇の形式を作るというプロセスをいま改めて踏まえながらやってみたいですね。

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vol.1はいかがでしたでしょうか?!明日のvol.2ではカゲヤマ気象台さん・どらま館スタッフによる音声コンテンツを公開予定です!

編集後記

今回のインタビューを通して感じたのは、カゲヤマさんや団体が持つ「余白」である。

ここで言う「余白」は、「埋まっていない」「まだ決まっていない」といったネガティブな意味ではない。むしろ、「余裕があり」「埋まる可能性を秘めている」といったポジティブな意味に近い。

彼らに「余白」を感じたのは、彼らのコミュニティが偶発的な発展を歓迎しているからだと思う。一方で、コロナ禍に生きる我々には余白が足りず、予定調和に生かされていはいないだろうか。

雑談するにもzoomの時間をスケジューリングしなければいけない。何も話さず、ただ一緒に居ることも難しい。就職活動の面接の場では、お互いが台本を持っているような対話も散見される。

「円盤に乗る派」が持つ「余白」のある空間や団体は、それらに反旗を翻しているようにも見える。我々が運営するどらま館はそんな「余白」を持つ場所になれるのか。もっとも、どんな「余白」が早大生や演劇に携わる学生に求められているのかを探らなければいけない。

いずれにせよ、「円盤の魅力を紹介」する企画を通して、自分たちの組織についても考えさせられるインタビュー内容となった。

どらま館制作部スタッフ 重村眞輝

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