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『学門のすすめ』を読んで

こんにちは。先日誕生日を迎え、自分へのプレゼントで本を買いにブックオフへ行きました。そのときは五冊買ったのですが、合わせて2千円ほど。状態もきれいなのに安価に本が手に入るブックオフ様々です。

買った五冊のうち、一冊は日本人なら誰でも名前くらいは聞いたことがある本です。

それは『学門のすすめ』(福沢諭吉著、斉藤孝訳)です。福沢諭吉(以下、諭吉)は現在の一万円札に描かれており日本において最も尊敬の念を集める人物の一人とされています。それほど有名な諭吉ですが、実際に彼の作品を手にとって読んだことのある現代人はどれほどいるでしょうか?彼のなしとげたことを知っている人はどれだけいるでしょうか?

この本を読んで、彼の考えは現代に当てはまることがとても多く未来を見透かしていたのかのように感じました。このnoteでは『学門のすすめ』を読んだことがない人でも心に残る3つの言葉をピックアップしてみました!

※引用部分も全て現代語訳なので、文語で読みたい方は青空文庫など探してみてください。

1.自由とはわがままのことではない

自由とわがままの境目とういうのは、他人の害となることをするかしないかにある。(中略)ある人がやりたい放題やるのは、他の人の悪い手本になって、やがては世の中の空気を乱してしまう。人の教育にも害になるものであるから、浪費したお金はその人のものであっても、その罪は許されないのだ。      福沢諭吉、斉藤孝訳『学門のすすめ』p.13

この編を読んだ率直な感想は「改めて考えるとと確かにそうだな。」でした。

人間誰しも他人に指図されるだけの生活など望みません。自我がある以上、個人の欲望もあるのは必然です。そして、その欲望がどんなものであるかは自由なのです。

しかし、自由を大義名分としてやりたいことだけをするのでは他人や世間に対して悪影響をなすというのが諭吉の考えです。現代で考えると、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が叫ばれていますが、行動の自由として不要不急の外出ばかりするのはわがままに当たるのです。

2.現状維持など存在しない

第五編「国をリードする人材とは」では、明治期において欧米諸国との交流が始まり、国として独立して行くにはどうあるべきかについて記されています。外国と対等に渡り合える国力を目指した時代背景にぴったりであり、現代を生きる全ての人にも通ずる文章がこちら。

およそ世の中の物事は、進歩しない者は必ず退歩する。退歩しない者は、必ず進歩する。進歩も退歩もなく、そのままのところに留まる者はあり得ないのが理屈である。  福沢諭吉、齋藤孝訳『学門のすすめ』p.68

大小関係なく、誰もが理想や目標を持っているでしょう。ゴールを目指すにあたり、存在するのは進歩か退歩のみ。現状維持がないって厳しい考えだなと思う人もいるかもしれません。

成長が伸び悩むときもありますが、退歩しなければ必ず進歩だと諭吉は語っています。すぐに成果として現れなくても、努力や鍛錬を重ね続ければ進歩になる、そう励まされるかのような言葉です。

3.明日の幸福は今日の不幸を超える

望みもなしに、一生懸命に物事を行う人間などいない。明日の幸福を望めば、今日の不幸も慰めることができる。     福沢諭吉、斉藤孝訳『学門のすすめ』p.133-134

明治期の日本は軍事力、経済力、工業力などどれをとっても欧米諸国には及びつくものではありませんでした。負け戦にモチベーションを高く保てる人はいません。だが、外国人に勝てば世界において日本の地位は上がる。そんな未来の幸福を望みながら激動の時代を生きていたのです。

外国に勝つためには学門を極めて知恵を得る。自国の繁栄を願い、官僚になるであろう学者を奮い立てるフレーズであったのではないでしょうか。

おわりに

疑問に思われる方もいると思うのでちょっぴり解説。諭吉のいう学門とは実際に使える知識のことです。経済学を学んだのに家計簿もろくに管理できない、修身学を学んだのに自分自身を修められない。これは学門と呼べないないのです。

今回は個人的に好きなポイントを選んで書きました。他にもあるのですが政治的意味合いも含んでしまうので自粛。

この本には政府と市民のあり方や、人としてどうあるべきかなど深く描かれています。今日の政府、および政策に不満がある方には特にオススメしたい本です。


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