見出し画像

宇宙の民主化時代が到来。NewSpaceに求められるSDGs起点のストーリーテリングとは【就任インタビュー】

2022年3月31日、ワープスペースは新取締役2名の選任、COO(最高執行責任者)とChief IP&Corporate Strategist(主席知的財産・経営戦略官)の新設および各1名の選任を発表しました。

今回の記事企画では、多彩な4人のメンバーにプレスリリースでは語り尽くせなかった意気込みを語ってもらいます。3番目は、経済メディア『Forbes JAPAN』Web版編集長で、社外取締役に就任した谷本有香氏です。

谷本有香氏【社外取締役】
経歴:証券会社、Bloomberg  TVで金融経済アンカー後、米MBA取得。日経CNBCキャスター、同社初女性コメンテーター。オードリー・タン台湾デジタル担当大臣、トニー・ブレア元英首相、アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアック等、3,000人超にインタビュー。
現在、J-WAVE「JAM THE PLANET」、TBS「坂上&指原のつぶれない店」等の経済コメンテーター。政府系スタートアップやオープンイノベーション大賞の審査員、ロイヤルハウジンググループ上席執行役員、All Personal顧問等、企業役員としても活動。立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究所 アドバイザリーボードメンバー。2016年2月より『フォーブス ジャパン』に参画。2022年1月1日より現職。

参画のきっかけは、CEO常間地との出会い

-谷本さんは、2019年から顧問としてワープスペースに参画していただいています。どのような経緯で、参画が決まったのでしょうか。

CEOの常間地さんとは、ワープスペースの設立以前……常間地さんの前職時代からの付き合いです。ご存じの通り『Forbes JAPAN』はスタートアップに注力したメディアです。スタートアップの皆様と連携するなかで、当時ITスタートアップの役員を務めていらっしゃった常間地さんともお会いする機会がありました。

では、なぜ常間地さんとのご縁がここまで深まったかというと、良い意味で常間地さんが変わっている方だったからだと思います。真面目で、視座が高い印象がありました。例えば、哲学的なことや100年先のスパンの話をしても、同じ目線で話を返してくれましたね。ビジネスだけにとどまらず、様々な話題に話が発展していきやすかったのだと思います。そういう経緯で、顧問という役割をありがたく頂戴しました。

-顧問として、どのような役割を担ってこられましたか。

メディアの専門家として、事業や常間地さん自身に知見やスキルを提供することがメインだったと捉えています。

ただし、メディアリレーションのことだけでなく、私が多くの経営者の方々とお会いして感じ取ってきた「経営者とはなんぞや」「リーダーたるもの、こういう視座を持つべきである」といったことも、常間地さんは引き出してくださっていたように思います。なので、いわゆる職務的な顧問の枠組みを超えて、メンタリングやビジョン共有をさせていただいてきたと言えそうです。

宇宙はビジネスの世界の一部になった

-ワープスペースに参画していただいたことで、宇宙産業の解像度が上がったのではないでしょうか。宇宙ビジネスには、どういうポテンシャルを感じていらっしゃいますか。

Forbesは様々なカテゴリのビジネスを取り上げさせていただいている中で、そこまでカバーしきれていないのが宇宙です。最も取り上げたい領域であるにもかかわらず、取り上げていない。なぜなのかというと、プレイヤーが少ない上に、いわゆるマーケットが成立していないからです。つまり、メディアにとっても宇宙は最後のフロンティアで、非常に期待をしている分野です。

2021年12月に、ZOZO創業者の前澤友作さんが国際宇宙ステーションに滞在したことが、ニュースとして想定していたほど取り上げられなかったことは、私にとって大きな驚きであった一方で、納得感もありました。もしかすると、もう宇宙に行くことが当たり前になりつつあり、「宇宙の民主化時代」に入ったのでないかと私は感じ取りました。

SpaceX Crew-4の打ち上げの様子 ©︎NASA

さらに、起業家や企業経営者の方々とお話していると、自社の技術やサービスを地上で生かすだけではなくて、宇宙で生かすときどうなるのだろうと考える方が非常に多くなってきています。宇宙は「ロマンあふれる、未知なる場所」ではなくて、商圏が広がったというか、「世界の一部になった」という考え方がビジネスの世界にも入り込んできたのを実感したところです。メディアは、さらに多くの人たちを巻き込める役割を担えると思っていますし、そういったことをやってみたいです。

-ロケットによる輸送事業や宇宙旅行は視覚的にもわかりやすいビジネスがある一方で、なかなかイメージしにくい分野もあります。宇宙ビジネスが生み出す価値は、どのように発信していけばいいのでしょうか。

宇宙ビジネスの価値をビジュアライズ化するのは、宇宙に携わる方々の役割でしょう。民間が宇宙開発をリードするようになった今、企業は技術を開発するだけでなく、技術が実装された未来の社会がどう変わるのかを説明する、啓蒙者としての役割も大きいのです。私も一緒になって巻き込んでいきたいと思っています。

-2021年10月に開催したカンファレンスイベント「WARP STATION Conference Vol.1」には谷本さんにもご登壇いただき、サステナビリティに対する宇宙産業の貢献について語っていただきました。SDGsの達成やESG投資に世間の関心が高まっているなか、宇宙ビジネスにもこの潮流は浸透していくのでしょうか。改めて聞かせてください。

SDGsやESG投資の文脈で話をしようとすると、どうしても環境への配慮など、典型的な絵面や言葉を思い浮かべる方が多いでしょうが、これは打ち出し方の問題だと思っています。例えば、衛星通信事業を手掛けている企業は、通信という現代の最も重要な社会インフラを、世界人口の半数に相当する、まだインターネットが普及していない方々に提供しようとしています。こんなに大規模なSDGs企業は、ほかにないのではないかと思います。

特にNewSpace企業は、SDGsやESG投資の考え方を中心に据えて、そこから技術やサービスについて語る必要があるのではないでしょうか。語れば語るほど、宇宙の魅力を体現しやすくなりますし、投資も集まります。マーケットも創出しやすくなるでしょう。何を取りこぼさないようにするか……100年後に重要になっている要素を、ブレイクダウンして事業計画に取り入れることが求められます。これは、NewSpace業界とOldSpace業界の一番の違いになり得る気がしています。

社外取締役として、より一層のコミットを

-ここまで、谷本さんが感じていらっしゃる宇宙ビジネスのポテンシャルについてうかがいました。今回はどういう経緯で、社外取締役に就任されたのでしょうか。

CEOの常間地さんからご相談いただき、喜んで引き受けさせていただきました。これまでは、企業とは利害関係がない顧問という立場で、スキルや知見を提供してきました。今回、社外取締役に就任したことで、株主様はもちろん、多くの方々の利益や価値を増大させることに責任を持ってコミットする役割を担ったと捉えています。

ワープスペース取締役一同

-最後に、社外取締役に就任されての意気込みを聞かせてください。

顧問から社外取締役になり、宇宙ビジネスに当事者意識を持っていただくこと、そしてワープスペースという企業とその事業に関心を持っていただくことに、より一層貢献しやすくなったように思います。地球と宇宙が融合する時代を一緒に作り上げていきたいです。

社外取締役に就任した谷本有香氏に、宇宙ビジネスのポテンシャルやNewSpace時代の情報発信の在り方について語っていただきました。

次回の就任インタビューは、Chief IP&Corporate Strategistに就任した片岡に、知的財産権の専門家の視点から見たワープスペースの事業の面白さや新役職に就任しての意気込みを聞きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?