親より先に子どもが亡くなったお話 親と子 同時期に受けた余命宣告
母親とふたり暮らしの女性(Aさん)のお話です。
1,家族と経緯
Aさんは50代、ひとりっ子、独身、子どもはいません。
母親は80代、脳の病気から歩行もできず、判断能力ほぼない状態。
父親は5年前に他界していました。
Aさんは仕事をやめ、自宅で介護をしていました。
生活は母親の年金と貯蓄で賄うことができました。
しかし・・・
Aさんに病気が見つかり治療を開始しましたが、余命宣告をうけました。
重ねて・・・
母親も体調を崩し入院、余命を宣告されました。
2,亡くなる順番と相続
母親が先に亡くなったとき、母の財産は誰に相続されるのか
⇒Aさんだけ、ただしその後Aさんが亡くなったときは誰もいない。
Aさんが先に亡くなったとき、Aさんの財産は誰に相続されるのか
⇒母親、その後母親が亡くなったときには、母親の兄弟
この様に返答しました。
即座にAさん
「それは困る!」
母親の兄弟とは良い関係ではないようです。
3、Aさんの意向
自分の後始末を頼みたい父方の従姉妹(Bさん)がいる。
Bさんに全ての財産を渡したい。
4、対策
母親は遺言書を書くことができる状態ではありませんでした。
そこで、AさんがBさんへ全財産を遺贈する公正証書遺言書を作成。
(遺言執行者は弊所)
同時にAさんは、母親に成年後見人の申立をしました。
5,結果
母親より先にAさんは逝ってしまいました。
Aさんの葬儀などAさんが気にしていた後始末は、Bさんがしっかり対応してくれました。
弊所も生前何度もお話を伺っていた経緯があり、財産の把握が済んでいたことから無事に遺言執行を完了。
その後、母親の成年後見人に選ばれた弁護士からBさんに遺留分の請求がありました。
Bさんも弁護士さんに依頼をして遺留分の支払いを済ませました。
程なく、母親も病院で亡くなりました。
成年後見人の弁護士さんはここまでで任務修了。
Bさんが、繋がりのない母親の兄弟に連絡をとり母親の葬儀などにも関わってくれたようです。
ただ、母親の相続はまだ進んでいないと耳にしました。
6,Bさんの言葉
「公正証書遺言ってこの紙だけなのに…こんなに力があるのね」
この紙が無ければ…と考えるとゾッとします。
7,まとめ
人生100年とはいえ、亡くなるのが順番通りとは限りません。
Aさんの遺言書が無ければ、Aさん名義のご自宅含め、誰もどうすることもできない状態になっていた可能性があります。
私が起業をした10年前は、「相続人が何人もいて…」という困りごとが多かったのですが、今は「相続人が誰もいない…」が増えています。
「親しかった他人」にはどうすることもできない、善意だけで動くことができない現実があります。