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【今日の本質】世界と自分とを分かつ壁

昨今、様々なものが炎上している。これは一つに道徳的に人が進歩しているからと説明されることがある。たしかに「昭和の価値観」や「中世」では現代では決して受け入れられないことが平然と行われてきたわけだ。世界は悪くなっているようにニュースなどでは報じられる傾向があるが人類の暴力は減っているという「FACT」を信じなさいといった主張も巷を賑わせている。

一方でSNSでの炎上には、SNSが自他境界を溶かしがちであるという性質も寄与しているように思える。SNSでは他人の生活のあらゆる側面が見えてくる。きらびやかなディナーの様子から日々の自慰の対象までSNSでは公然となっている。これらの情報はかつては隣人についてすら知らないことも多いような秘匿された情報だった。この異常な開放性はあたかもフォローしている人間が自分自身と極めて親密であるかのような錯覚を呼び起こさせる。一方で人間にとって元来身近な人間との価値観の相違を受け止めるのは難しい。また元来交わることのなかった人間の交流は猛烈な嫉妬の感情も生む。この認知不協和は「あくまで他人」という現実世界にある当たり前のストッパーを外し、相手が自分と同一化しない限り延々と攻撃を続けるインセンティブを与える。同一化をしない人間には「論破」の壁をたてるぐらいのことしかできない。

いずれにしろSNSでは他人があくまで他人であることを忘れてしまいがちだ。ところで「世界と自身とを分かつ壁は人を象り閉じ込める檻」らしい。すなわち自他の境界は「檻」でありながらそれはまた人の条件でもあるらしい。自他の境界が溶けた果てに人は進化するのか?あるいは…


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