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生焼けのままで ~ラグビー日本代表対アイルランド戦の個人的雑感~

2019年への折り返しとなる春の日本代表シリーズ。ジェイミー・ジャパンにとっても、この3連戦は「中間報告」を意味している。

ルーマニア戦は相手のパワーに屈せず勝利。しかし、アイルランドとの第1戦は前半から後手後手に回る。選手交代で後半はトライを奪ったものの、22ー50というスコアは「あの失点は防げたのでは」という印象を抱かざるを得なかった。
味の素スタジアムで迎える第2戦、ジャパンはソリッドなゲームができるのだろうか? それが争点だと考えていた。

しかし、前半2分で落胆は訪れる。ターンオーバーしたものの、大きなパスにバックス陣の呼吸が合わない。それをリングローズが奪い取って早速独走トライ。お粗末な失点だった。
その後もシンプルながらパワフルな相手の攻撃に苦戦。松島が一矢報いたものの、相手に4トライを奪われ8ー28で折り返す。

前戦と同じく、後半は日本代表が主導権を握る。開始早々のチャンスはノックオンでふいにし、防戦の時間もあったが何とか断ち切る。次第にパスのテンポを上げていき、22分に松田のキックパスがこぼれたところに山田が反応し、待望のトライ。
その後のディフェンスもしっかりと組織で対応。野口のインゴールノックオンを導く好タックルにスタンドも沸いた。

だが、2本目のトライが遠かったのも事実だ。攻め倦ねているうちに、試合終了間際にライデーがトライを決めて万事休す。13ー35とスコアの上では前回とほぼ同じ点差で幕を下ろした。

アイルランドにもぜひ歴史的1勝を! と息巻くファンは少なくなかっただろ。だが、飛車角抜きでも相手は十分強かった。
特段、難しいラグビーをしている訳ではない。でも、パワーもスピードも、何よりチームの一体感も優れていた。オールブラックスの連勝記録を止めた強さは伊達ではなかった。オーストラリア、南アフリカが苦戦する中、欧州を中心とする北半球各国がラグビーを引っ張る。そんな世界地図の動きを、日本でも実感することができた。

さて、日本代表の課題は何か? サンウルブスやNSDなどの取り組みにより、選手層は大きく底上げされた。スーパーラグビーやARCで研鑽を積んだことで力を蓄えた効果だろうか、この試合でも「個に押し切られた」と感じる場面は意外と少なかった。
むしろ、課題は組織力であり、チームとしてまだ固まりきっていないことである。この試合でキャップが10未満の選手は10人いた。その一方で、15年W杯に出場した選手は9人だった。
集まったメンバーはまだら模様である。それをしっかりと、代表という場でふるいにかけて、固めていかなければならない。残念ながら、この3連戦では「チームとして固める」ということは出来なかった。

もちろん、前向きな点もある。BKでは福岡が良い仕事をしていた。この試合ではランで魅せることはできなかったが、背後を狙われてもしっかりケアするディフェンス能力は高かった。また、流、小倉、野口の成長も印象的だった。ただし、安定してパフォーマンスを得るにはもっと経験を積まなければならない。
一方、FW、特に1・2列目のメンバーが不安定なのはとても気がかりだ。セットプレーを常に安定させるのが対欧州では大事なのだが、それを実現させる解は不明のまま。試合中の修正能力が高いのは、メンバーとベンチワークの力によるものだが、やはり前半から常に安定しているにこしたことはないのだ。

この試合、久々にトンプソンがLOのスタメンに抜擢された。既に報道されている通り、この試合だけの緊急召集である。
だが、トンプソンの存在がチームの「安心感」をどれだけ担保してくれただろうか。派手な動きは無くとも、常に献身的で、常に手を抜かない。経験と実績に裏打ちされた無形の力がそこにあった。

今のジャパンにはトンプソンのような存在が必要なのである。しかし、それを手に入れるためには、誰かにそんな役割を与え、コツコツと試合を積み重ねて鍛えるしかない。

気が遠くなるし、我慢が必要だ。でも、そうしない限り、生焼けのままチームがつくられてしまう……。トンプソンのプレーに感謝しつつ、胸に芽生えた小さな危惧は消えていない

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)