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青いトロリーバス―ロシア歌謡(3)

ロシア語を勉強し始めた頃、NHKラジオのロシア語講座も聞いていました。ある年、週末の上級編でスラブ文学者の沼野充義先生がロシアの歌手ブラート・オクジャワ(1924~1997年)の歌を紹介するというシリーズがありました。そのとき初めて私は、いわゆるロシア民謡以外のロシアの歌を聞いたのだったと思います。番組の中でいくつもオクジャワの歌が紹介されたはずですが、その中で記憶に残っているのは「青いトロリーバス」という曲です。

私が不幸を克服できないとき
絶望が迫ってきているとき
私は青いトロリーバスに飛び乗る
最終の、通りがかりの(トロリーバスに)……
(中略)
深夜のトロリーバスはモスクワを漂う
モスクワは灯が消えた川のよう
そして、ムクドリの雛がこめかみを突っついていた
痛みはおさまった……

トロリーバスはロシアの都市でよく運行されている、架線付きの電動バスのことです。ふつうのバスよりスピードが遅いですが、何かしらロシア的な味わいのある乗り物です。オクジャワはこの歌で、ロシアの市民のことをトロリーバスの乗客として表現しているように思います。それぞれがそれぞれの「痛み」を持ちながらバスに乗ることで、互いの痛みを癒し合っているロシア市民を。

表題の上の画像はWikipediaより(https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9E%D0%BA%D1%83%D0%B4%D0%B6%D0%B0%D0%B2%D0%B0,_%D0%91%D1%83%D0%BB%D0%B0%D1%82_%D0%A8%D0%B0%D0%BB%D0%B2%D0%BE%D0%B2%D0%B8%D1%87)。

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