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「宇宙紀行」を記す flight,1〜旅のはじまり〜

梅雨入りをした関東の上空。春の星座は西に傾き、東の空には入れ替わるように夏の星座が昇ってくる。晴れた日の夜には、デネブ、アルタイル、ベガを結ぶ直線「夏の大三角形」も見え始めるそうだ。

夜空が春から夏へと衣替えをするそんな中、6月15日(水)に第4弾となるFlehmannさんとのコラボ楽曲がリリースされる。本記事では、公開に先駆けて、本作がどのように生まれたのかを綴ろうと思う。

鈴木何某feat.Flehmannの歩み

作曲家のFlehmannさんとは、2021年に2月にリリースした「東京百色眼鏡」を皮切りに、これまで3つの作品を生み出してきた。

「東京百色眼鏡」は、DOVA-SYNDROME(使用フリーの楽曲サイト)を介して公開後、様々な動画のBGMで使用されはじめ、スマホゲームアプリの楽曲として使用されたり、演劇や芸人登場時の出囃子などにも使用され、自分たちの予想に反して大きな反響を呼んだ(2022年5月時点でYouTube7万回再生を突破)

世にいう「バズる」には程遠いが、自分がこれまで残してきた作品の中で、ズバ抜けて人の目に、耳に触れる作品となった。

その後、"雨"をテーマにした第2弾「サウンドノベル」をリリース。サウンドノベルとは、小説をモチーフとしたアドベンチャーゲームのことをいうが、その曲名の通りゲームをベースにし、奇怪な変拍子のビートでジメジメとした湿度の高い雰囲気を演出。ホラー感のある異質な作品となった。

続く第3弾「真夏のファンファーレ」は"夏"をテーマにし、「サウンドノベル」とは真逆の爽やかなビート、そして語感に重点を置いた歌詞と初めて実写MVの制作にも挑戦をした。

3曲ともに共通していえることは、全てに「テーマ」が存在するということ。これは、最初コラボのやり方がよくわかっていなかったがゆえに、楽曲のベクトルの向ける先を明確にする為に設けたルールだった。

テーマから生まれるたくさんのアイディアは、生まれては消えを繰り返し、徐々に形を成して、最終的に曲としてまとまっていく。遊んでいるような、あるいは至って真面目なような、実験的なサウンドや歌詞は、このようにして生まれてきた。

第4弾「宇宙紀行-Cosmo Night Pardox-」

そして昨日、満を持してティザー(告知映像)を解禁したのが第4弾「宇宙紀行-Cosmo Night Pardox-」。

実は、「真夏のファンファーレ」から1年の月日が経っている。その間、それぞれが自身の楽曲の制作に励み、作品を発表し続けてきた。

昨年末に空詩さん、Ayacoさん主催で開かれたtwitterでの歌合戦企画「紅白歌FESオンライン」に「東京百色眼鏡」で出場し、有難いことに審査員特別賞をいただいた。賞品が「レコーディングスタジオ無料券」だったことがきっかけとなり、新作の制作が決まった。

その時は、自分のYouTubeチャンネルに2本、Flehmannさんのチャンネルに1本アップしていたので、本作はFlehmannさんのYouTubeチャンネルに映像を投稿することになり、制作に関してもFlehmannさんが担当してくれることになった。

そうした決め事を段階的に行なっていき、本格的に動き始めたのが4月上旬ごろ。Flehmannさんから本作の音源が送られてきた。壮大なスケール感、輝きの中にも繊細な部分を感じる素晴らしいサウンド。これが本作に対する第一印象だった。

毎度のことながら、Flehmannさんから送られてくる音源には驚かされる。自分が持ち得ないものが曲の中にぎっしりと詰まっていて、憧れを抱く音の世界へ連れていってくれる夢のような楽曲。そこに自分の歌が絡むことに想像を巡らせるだけで、恍惚とした気分になる。

とはいえ、いつまでも頭の中をお花畑で埋め尽くしてるわけにもいかず、自分の作業である「歌詞作り」に入っていく。その時すでに、Flehmannさんから「パラドックス」というキーワードをもらっていた為、それをモチーフとして何をどう表現するかを考えていった

浪漫と忘却の象徴「宇宙」

突然だが、「宇宙」は良い。どこまでも広がる闇に、輝く星が無数に存在していて、そこに限りないイメージを思い描くことができる。事実、これまでも多くの「宇宙」をテーマにした漫画やアニメ、映画が作られてきた。

例えばもし、宇宙空間から地球に生きる自分を眺めたとしたら…きっと全てのことが些細で、日々起こる様々な出来事はあまりにも小さいのだと思えてしまうだろう。

そんな神秘性の高い「宇宙」をテーマにした作品をいつか作りたいと思っていて、星の名前や宇宙で起こる現象などの単語をメモに書き溜めていた。ただ、「宇宙」というキーワードだけでは、自分が生きているリアルな生活と中々結びつかず、これまでうまく形にすることが出来なかった。

時間が経過し、宇宙のことなど忘れた状態で始めた歌詞作り。「パラドックス」という言葉のヒントは貰っていたものの、その単語の意味を深くは理解していなかったのでGoogle検索をかける。

パラドックス(paradox)
正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉。

引用:wikipedia

この説明を見てすぐに意味を理解できる人は読解力が高いのだと思う。自分は全く理解が出来なかった為、ネットの海、改め宇宙をさらに泳ぐことでその意味を理解すると、実はそれが身の回りで頻繁に起こっていることを知った。

例えば「締切まで時間はないが、ミスしたら台無しだ。だからみんな、焦らず急いで作業しよう。」という上からの命令。

これは、職場でよく耳にする典型的なパラドックス。「そんな無茶言わないで」と喉元まででかかるが、従うしかない現実。パラドックスとは、つまるところ「矛盾」だとも解釈した。

先述のセリフを言われたとき、一体自分は何を考えていたか、と記憶を辿ると「何も考えていない」ことが多いことに気がついた。しかもあえて、考えていないのだ。

これは「その発言に対して感情的になったり、考えても仕方ないのだから、早く作業を終わらせて大事なことに時間を割きたい」という気持ちから生まれたもので、不毛な議論、思考の摩耗に陥るのを避けるため、左から右へ受け流すいわゆる「スルースキル」ともいう。

この矛盾から生まれた「どうでもいいこと」をさらにとるに足らない些末なものとして描く為に、より大きな存在が必要になり、そこで思い出したのがかつてキーワードを集めていた「宇宙」というテーマだった。

比較対象として比べようもなく無限に広がる、神秘的ともいえる存在。そこから泉のように湧き出るアイディア、広がる想像、星と星が線でつながり星座のように浮かび上がっていく詩。完全にピントがあった気がした。筆をとるまで時間はかかったが、着手から数日で歌詞は完成。

Flehmannさんに歌詞をみせ、みるみるうちに楽曲がブラッシュアップされていく。重力を感じる低域感、星の瞬きのような音の欠片。ソウルミュージックとポップなメロディを融合させて、5月15日、遂に本作は完成に至った。

公開に向けて

この作品には、歌詞の中に誰もが知る「宇宙」を描いた名作のオマージュを随所にとりいれている。

  • 歌詞に出てくる乗り物の名前は?

  • Novaの発音が独特な理由は?

  • ここの歌詞ってあの曲の一節?

  • すれ違う少年とは?

  • そして、主人公は何者なのか?

次回は本編公開後、曲名の由来を含め、隠された秘密の答え合わせをしていこうと思う。それまでの間、ティザーを何度も見返し、宇宙が今でも広がり続けているように、皆にも妄想を膨らませておいてもらいたい。

それでは、6月15日(水)に公開される楽曲を、お楽しみに。

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