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<国際アドラー心理学会2024>参加記(3)

学会開始

学会の会場はRautenstrauch-Joest-Museum Cologneという博物館の1階にあるホールを中心に開催された。この博物館の近辺にはセミナールームのような部屋が入った建物がいくつかあり、プログラムによって周辺の会場が利用された。上の写真は会場に使われた建物。
受付に行くと、パンフレットや名札、ボールペン、後日開催される懇親会のチケット等が入った封筒が手渡された。

会場となった博物館。
受付の横にあったポスターとプログラム。

プレコングレス

全4日の日程のうち、初日は「プレコングレス」と呼ばれる前夜祭のようなもので、カウンセリングの事例とウクライナでの臨床活動についての発表があった。英語のスライド・英語での発表だったが、自分の英語力ではなかなかついていくのが難しいことを身にしみて感じた。
このプレコングレスの時点から既に、精神力動的・精神分析的観点からの意見が随所に見られたが、学会の最終日に至るまでその傾向はあった。日本でのアドラー心理学の位置づけとヨーロッパにおける位置づけの違いを考えさせられた。どちらが良いというのでもなく、日本は日本でオリジナリティを持って発展しているし、それには自信を持って良い、むしろ発信していくべきだろうと思う。
また、ウクライナの戦時下でのトラウマケアについての発表も聞くことができ、国際学会に参加する意義を大いに感じた。現場にいないと分からないであろう、兵士や家族、子どもたちの苦しみとそのケアについての話があった。

プレコングレス開始前の会場の様子。

講演

プレコングレスを終え、次の日から本格的に学会がスタートした。日本の学会でよく見る大きな吊り看板はない。最初は大ホールにて国際学会会長のMarina Bluvshtein先生の講演だった。Marinaは時々日本でも研修会が開催されている。現在の世界情勢に焦点を当てながら、この社会の中でいかにアドラー心理学を活かすかという内容で、学び、実践する意義を豊富な資料を参照しながら話されていた。臨床心理学の中でもニッチなアドラー心理学を学ぶことそのものについて、常に問題意識を持つ姿勢にとても勇気づけられた(感想の具体性が薄い点は察していただきたい)。

講演会が行われたホール。


ホール前方のスクリーンに発表スライドと、英語・ドイツ語両方の自動文字起こしが映し出されていた。尚、発表のための言語は英語か、もしくは開催国の言葉であるドイツ語で行うように定められていた。文字起こしについてはどうやら専門のエンジニアが雇われていたようで、時々PCでプログラムの調整を実施していた。発表の言語が英語であれば、まず英語の文字起こしが数秒ごとに表示され、そこから若干のタイムラグがあってドイツ語に翻訳されているようだった。ここにはかなり予算が割かれていると感じた。

スクリーンに投影された英語とドイツ語の文字起こし。

パラレルセッション

夕方からは一般演題が開始し、早速日本から参加した2組の発表も含まれていた。一般演題は30名ほどの席が用意された部屋がいくつかあり、90分の中で2~3の発表が行われた。日本の学会と同じく出入りが自由となっている。この小さな部屋にはディスプレイがひとつあり、スライドを映すことができる。文字起こしはない。

パラレルセッションの会場。

日本人による発表を含め、全体としてほぼ満席だった。当然かもしれないが、どの国の人が発表しても誰もが熱心に聞き取ろうとする様子はあたたかな雰囲気が終始続いていたし、どの質疑応答においても有意義な学びにしようとする意図が感じられた。外国の地でこの空気感を体験できたのは大きいと思う。

日本人の発表のうち1人は、アドラーの理論や視点から独自に発展させた子育てプログラムについての発表、もう1組(2名)はパワーハラスメントをアドラー心理学から理解し、発表した。2組とも質疑応答も盛んに行われ、素晴らしい発表となった。

日本人グループの中では、発表前日の夜から直前まで、リハーサルや打ち合わせを互いに協力しながら行った。こうした綿密なやりとりが連帯感を生み、不安を和らげることができたし、『同志』の感覚が生まれたと思う。

フロイトの著作が多く並ぶ書籍販売コーナー。多くがドイツ語の本だった。

プレコングレスを合わせて大会3日目に自分の発表となった。
(参加記4へ続く)

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