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<国際アドラー心理学会2024>参加記(4)

発表

この日も午前中が講演、午後が一般演題となっていた。午前中の講演が終わった後、ホテルへ帰って発表の最終準備を行った。この午前と午後の間に全体写真の撮影が行われたが、人々がぞろぞろと移動するのを横目に断念した。

演題が登録されたのは『Clinical』がテーマのパラレルセッションで、3人の発表者のうち自分が1番目だった。学会が準備したPCにUSBを差し、パワーポイントのスライドをディスプレイに掲示した。
各会場には司会が割り当てられおり、幸いにも研修を受けたことがある国際学会会長のMarina Bluvshteinが担当してくださったので安心して臨むことができた。

会場の入口に貼られた案内。

発表テーマは『A Case Study: How does the Experience of Abuse Affect Lifestyle?』とし、長年続いているカウンセリングの事例について、アドラー心理学の視点から考察した。詳細は守秘義務により割愛するが、凄惨な体験を持つクライエントにとっては時間をかけた関係構築と、身体にも目をむけた全人的な支援が必要であるという話を、アドラー心理学の理論を用いて話した(できればどこかで論文化したい)。
スタートすると、スライドに合わせて台本を読み上げていった。やはり発音がイマイチなのか、どちらかというと言葉の内容よりもスライドの文字を追って理解してもらっている様子だった。しかしそれは予想していたことだったので、なるべくフォントを大きく、箇条書きにまとめ、また文字を少なくした。PCでの音声読み上げも検討したが(機械音声の質は自分の英語よりも断然聞き取りやすい)、自分の声で発表したいという気持ちの方が勝った。
台本を読み終えた時点でちょうど規定の25分だったので安堵し、会場から「Perfect!」と声をかけていただいた。

スクリーンの横で台本を読み上げる。
終了後、すぐに次の発表者が準備する。

その後、ほぼ間を置かずに2名(高齢の研究者と若い研究者)が発表した。『Clinical』というテーマだったが、個別の事例についての内容ではなく、理論的な提案や研究方法についての問題提起が発表の題材となっていた。

質疑応答

それぞれの発表の後、残りの15分程度が質疑応答となった。発表者間のやりとりはなく、会場の参加者が発表者に尋ねるという形で進み、およそ一人に対して2,3名が質問した。自分はアドラー心理学をいつも教えてくださっている先生に通訳していただいた。

質疑応答時は発表者が3人とも前に出る。

日本で準備していた時はPCによる音声入力と翻訳で対応することも考えたが、さすがに音声入力→和訳→日本語による回答を入力→PCで英訳→音読という一連の作業をあの短時間で実施するのは難しかったと思う。
自分の発表に対しては、直接的な表現ではなかったものの、精神分析的な視点からのセラピストークライエントの転移関係について質問があった。返答は、あくまで対等かつ自然な信頼関係の中でカウンセリングが進んだと回答したが、質問者の問題意識や関心に今ひとつ反応できなかったように思う。日本のアドラー心理学界隈ではあまりそのような指摘はないので、準備不足だったかもしれない。そこですかさず司会のMarinaに助け舟を出していただいたのはとても嬉しかった。
関心がそうした精神力動の方に重点があることがよく分かり、アドラー心理学と言っても各国で様々なのだと身にしみて感じた。セッション終了後も直接話しかけてくださる先生も多く、本当にありがたかった。

発表後は連日利用しているドイツ料理店で打ち上げをした。緊張から開放された後のケルンビールは格別だったことは言うまでもない。1年近くかけて準備し、(大金を払って)参加して良かったと思った。

後日、ライン川沿いのレストランで飲んだビール。

代議員会(Delegate Assembly)

国際アドラー心理学会に加盟している各国の心理学会から、会員数に応じて投票権を持つ代議員が出席する会議が2日間に渡って夜に開催される。今回は私も代議員の一人として参加した。ここでは加盟団体の承認や、決算の報告、次期会長の選挙等が実施されたが、特に会長選挙は僅差で、当然ながら政治的な色合いもあった。それらを目にしながら、世界中でアドラー心理学の発展を考えて活動している人がいることを実感することができた。

次年度の会場となるイタリア・アドラー心理学会のみなさん。合唱でアピール。

(参加記5へ続く)


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