#8 誇らしげなモデル(障害者施設での話)
就労継続支援B型事業所での話。
今回はOさん(20代/軽度知的障害/自閉症)の話。
施設で行う軽作業はいつも落ち着いているOさん。しかし、時にはパニックになったり、他害行動をしてしまったりすることもありました。
一方で、オシャレにとても興味があり、工賃が出たあとの週末は家族と洋服を買いに行っていました。そして次の週にはその服を誇らしげに着てくるOさん。
周りの皆から新しい服やかわいい持ち物を褒められることは大好きで、将来はアイドルになりたいとよく言っていました。
そんなOさんから急な告知が。
チラシ付きで
「私はこのファッションショーに出ます。」
と。
なんでも、服飾系の専門学校が主催するファッションショーに縁があり、モデルとして出演することになったそうです。
Oさんに
「何を着るんですか?ドレス?」
と聞いても
「はた。」
と。
はた…………( ᐙ )?
私の中では、🏳️こういうのとか🏁こういうのとか、とにかくファッションとして着るものとしては想像しがたかったのですが、何度聞いても
「はた。」
と。
私自身が年齢にそぐわない程に派手な格好や、派手な髪型が大好きということもあり、
興味の一貫という意味でもこのファッションショーを見に行くことにしました。
当日は、素人目に見てもかなり手の込んでいるであろう衣装を着たモデルさんが颯爽とステージを歩いていて
「Oさんこれ出るのか…大丈夫かな…」
と、私がかなりの緊張をしていました。
なんせ普段のOさんを知っているので、何かのきっかけにパニックになってしまったり、困ったりすることがあるのではないかと心配で心配で。
そしていよいよOさんの出番。
会場内に流れるアナウンス。
「大漁旗をリメイクした衣装をご覧いただきます。」
はたー!!!!
たいりょうばたー!!!!
その発想が全くなかったので、楽しみにしているとすぐにOさんが登場。
ステージの中央をいつも以上の笑顔で堂々と歩いて登場したかと思うと、ソーラン節のような動きをしてポーズをとり、また笑顔ではけていきました。
ショーが終わり、Oさんを裏口で待って声をかけにいくと
「はたかわいかったでしょ♡」
と、いつもの誇らしげな笑顔で聞いてきました。
閉鎖的になりがちな福祉環境の中で、自分を輝かせる術があること、またそれを人に評価してもらえる場所があること。 承認欲求を満たせることがこんなにも素晴らしいものだと改めて感じさせられました(˶ᐢωᐢ˶)
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