![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/147547044/rectangle_large_type_2_58a63ce72dd17f83bc15866216d34ae8.jpeg?width=1200)
古代ローマの<子ども遊び> | プリニウスの追憶
都内を流れる河のほとりを歩いていると、突然、股間になにか硬いモノが直撃し、私は悶絶した。
その場にうずくまり、足元を見る。そこには、異様に平らな小石が転がっていた。
「あ、あい、あいむそーりー!」
声が聞こえ、私は顔を上げた。
対岸にいる帽子を被った少年がつたない英語で謝罪し、ぴょこぴょこ首を突き出している。
そういうことか。
私は合点がいった。おそらく、あの少年が水面水切りをしようとしたところ、手を滑らせて暴投してしまったのだ。それが、たまたま通りがかった私の股間に運悪くクリティカルヒットした。そんなところだろう。
「ってこの下手くそが!」
私は怒りに駆られ激昂し、落ちていた石を少年に向かって投げ返した。昨日上司に嫌味を言われ、機嫌が良くなかったのもある。
ライナー性の石が少年の膝辺りにクリティカルヒットすると、彼は呻き声をあげてうずくまった。
「舐めんじゃないよ! 今すぐこの川を渡河し、君をローマに連れて行ってネロに差し出してもいいんだぞ!」
私がそう唾を飛ばすと、少年は涙を流し、右脚を引き摺りながらその場を後にした。
少年の後ろ姿を目で追っていると、 急に懐かしさが込み上げてきた。
ふっ。
私も幼少期には、ウェロナ(現ヴェローナ)のアディジェ川で水切りに夢中になったものだ。
ローマの子供たちの外遊びは、“この世界”とさほど変わらない。
ブランコ、凧揚げ、鬼ごっこ。枝で地面にお絵描き(迷宮のモチーフが多かった)、川では水泳に魚釣り、そして水面水切り。 女子たちの遊びはもっぱら「◯◯ごっこ」だ。
くくくく。
中でも最高だったのが、大人への悪戯だ。
例えば、1枚の硬貨をどこかの街道に貼り付けて取られないようにしておく。そして物陰に隠れ、通りがかった大人が取ろうとしても取れない様子を眺めた。スカした大人が羞恥で頬を赤らめる姿は、最高に笑えたものだ。
ああ、そうか。
“この世界”ではそれを「ドッキリ」や「モニタリング」というのだな。
パトカーのサイレンが聞こえたのは、その時である。
Fin.
Warning
「プリニウスの追憶」に登場する人物及び事象の一部はフィクションです。
<プリニウスの追憶>、Xにて先行配信中☆
※noteに掲載後、Xでの投稿は削除いたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?