【ぶんぶくちゃいな】中国シェアリングエコノミーの鈍痛:自転車と配車アプリ

先日、産経新聞にこんな記事が掲載されていた。

中国で急成長、根付くか「共有の経済」 自転車シェアリングも扱い乱雑、消費者モラルが…

タイトルを見て、「おや」と思った。気になったのは、「根付くか『共有の経済』」という表現である。

ここで言う「共有の経済」は一般には「共有経済」「シェアリングエコノミー」などと呼ばれ、主にインターネットを媒介手段として、未知の者同士で資源をシェアし合う新しいビジネススタイルとして世界的に注目される。すでに世界的に広く普及している代表的なサービスとして、配車予約の「Uber」や宿泊サービスの「Airbnb」などがある。

中国でも、4年ほど前にタクシーを呼ぶ国産スマホアプリが急速に「日常ツール化」し、昨今は人気の海外旅行でも現地に住む中国人が所有する不動産をホテル代わりに提供する宿泊サービスも人気となっている。こうした「共享経済」(シェアリングエコノミー)の動きは、中国ではすでにビジネス話題の中心を占めている。

一方、日本ではまだ「Uber」も「Airbnb」も、現行制度や法律と矛盾するとして、また既得権業界の反対もあって、それほど大手をふってビジネス展開ができていない。だが、これらの海外ビジネスが規制を受けている傍らで、現実には日本の不動産会社が「民泊」と称して自社が所有する非ホテル物件を観光客の宿泊に転用するビジネスを始めている。

冒頭の記事のタイトルに使われている「共有の経済」という言葉は、たぶん紙面担当者が読者を慮ってわかりやすいように開いて表記したのだろう。そこからも分かるように、日本では「共有経済」あるいは「シェアリングエコノミー」という言葉はまだ一般にとってピンとおらず、つまり「根付いていない」。

そんな読者を慮って「共有の経済」とわざわざ書いた産経が、とっくに庶民レベルで根付いている中国の共有経済をわざわざ「根付くか」と懐疑的に書いたところに違和感があった。まぁ、この記事を掲載している産経新聞の西部版(West)は、中国や韓国の話題をよく歪めて書くために、たびたび多くの人から批判を浴びていることは知っておいたほうがいいだろう。

シェアリング自転車はつまるところ、貸自転車である。ただ、どこかのレンタサイクル屋から借りるのではなく、誰かが乗ってきて街中に停めたものを次の利用者がそのまま借りるというスタイルを取る。こうした共有型の自転車サービスは、中国では昨年1年間ずっと熱い注目を浴びてきた。すでに政府(自治体)だけではなく民間新興企業が多く参入し、各都市で大規模に展開されており、シェアリング自転車の存在はすっかり定着している。それに比べて日本ではまだ一部地区でしか利用できず、東京ですらほんの一部区間の運用にとどまっているのだから、上目線の「根付くか」という表現はおこがましいことこの上ない。

●1年間で需要を超えたシェアリング自転車

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