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【ぶんぶくちゃいな】香港で目にした「今」

そろそろ今回の香港滞在もお尻が見えてきた。今号の「ぶんぶくちゃいな」では、今回の滞在で見聞きした現在の香港の姿について、詳しい内容はわたしが見聞きしたことにさらに資料探しをしてきちんとした肉付けと解説を加えて別の機会にお目にかけるとして、今回はその片鱗をメモのように自分が感じたことをお伝えしたい。

まず、なぜわたしが新型コロナ感染拡大中にわざわざ香港まで行くのかをご説明しておこう。もちろん、昨年2月に離れたきりの香港を見ておきたいという思いがあったのは当然だが、必然の理由がまずあった。

プロフィールでもすでに明らかにしているように、わたしと香港の関係はまず、1987年に香港中文大学の広東語クラスの留学生として渡航したことから始まる。

香港は当時、また今でも正式な滞在ビザで7年間連続居住すれば、香港の永久居住権を申請することができる。この永久居住権というのはグリーンカードみたいなもので、国籍は変えずにそのまま香港に住み、香港で生まれ育った人たちと同じ権利を行使できるというもの。それを手に入れればさまざまなビザの要件で禁止されていた、転職や別の就労で賃金を得たりといった足かせが一切なくなり、そのへんのマクドナルドで働いても違法ではなくなるのだ。

但し、当時、学生ビザはその7年間として数えられない規定になっていた(現在はオーケーとなっており、中国人留学生の多くがその恩恵に被っている)ので、わたしの7年は学校を出て編集プロダクションに勤め始めた1989年から始まった。

1989+7=1996。ということで、1996年の12月に勇んで香港の入境事務処に向かったわたしに係官はこう言った。

「ちょっとまってほしい。来年は1997年で主権が中国に返還される。その時に、あなたのような外国人への居住権付与が認められるかどうか、まだ規則がないので、それが過ぎてから申請してくれないか」

ガーン…仕方がないから、結局1998年に出直した。そして、手に入れたのが現在保持している「滞在条件なし居住権」という身分だった。

だが、目ざとい方はお気づきかもしれない。わたしは2001年に香港を離れて北京に移り、その後日本に帰国するまで香港に住んでいない。それでも居住権は維持できるのか?

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結果から言えば、問題はない。というのも、香港はもともと移民の国なので、前述したとおり国籍と関係なく居住権が持て、またそこから海外に移住してもそれを敢えて放棄しなければ、香港住民でいられるシステムになっている。

但し、わたしのもつ「滞在条件なし居住権」というのは当時、永久居住権前のワンクッションみたいな制度だった。永久居住権と違うのは有権者登録の資格がなく、また「香港を離れて365日戻ってこなければ、その居住権は失効する」という条件がついていたという点である。

このため、わたしはこの居住権を維持するために1年に1回、必ず香港に足を踏み入れる必要があるのだ。

●歴史の「遺物」の身分


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