【ぶんぶくちゃいな】31年目の「六四」晩会に見た、香港のこれから

2020年6月4日。北京の天安門広場に集まっていた学生たちの中に戦車が突っ込み、銃弾が飛び交ったあの日から31年目を迎えた。

この日の夜、香港では事件発生以来、毎年恒例になっている集会「六四晩会」が行われた。今回は、昨年6月9日に「逃亡犯条例」改訂草案に反対する市民100万人がデモを行って以来、またこの5月の中国政府による「香港版国家安全法」制定発表後初めての「六四晩会」となるだけに、どれほどの人たちが参加するのか、注目が集まっていた。

だが、例年と違い、今年は新型コロナウイルスの感染拡大対策としての集会制限令が実施されており、警察から31年来で初めての「反対」通知を受けていた(公共用地を使ったイベントなどについて主催者が詳細を警察に事前に報告し、警察側は認可判断ではなく、開催の「不反対」あるいは「反対」通知を出す。前者であればイベントは合法開催とみなされる)。

「六四晩会」主催者の「香港市民支援愛国民主運動聯合会」(支聯会)の李卓人・主席は「学校も登校を始めており、宗教的な集まりも集会制限令非適用とされているなかで、この決定は科学的根拠がない」と批判し、集会の決行を宣言。その一方で特殊事情を考慮して、オンラインによる参加とそれぞれの居住区における追悼活動を人々に呼びかけていた。

当日、わたしもネットを通じて現場を見守ったが、結果的に今回は主催者も参加者も、そして例年の会場であるビクトリア公園サッカーコートを管理する香港政府、そして警察もかなり自制的に行動したと思う。

まず、李主席ら支聯会のメンバーが手にろうそくを持ち、シュプレヒコールを叫びながら会場のサッカーコートに向かい、コート入り口に設けられた鉄策を開いた時、一瞬公園管理者が入場を断るようなジェスチャーをしたが、そのままコートに入るメンバーを無理に押し止める様子は見せなかった。そしてメンバーはいつもなら大型ステージが設置してあるあたりにそのまま座り込み、セレモニーを行った。

同時にネットでチェックしてみると、付近には三々五々警官隊や「豚籠車」と呼ばれる拘束用車両も出動して警戒していた。また、集会に参加しようと集まってくる人たちに向けて、拡声器で参加を思いとどまるようにという呼びかけも行っていたらしい。だが、それでもサッカーコートには例年の通りかなりの数の人たちが集まり、それぞれソーシャルディスタンスをとりつつ、手に手にろうそくを持った人たちでコートは埋まった。

無事に集会が終わり、人々が去り始めたときに衝突が起こるのではないかと心配したが、同公園付近では何ごとも起こらないまま集会は収束した。

●民主派:本土派 vs 伝統的「和理非」

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