【ぶんぶくちゃいな】「十年」
香港映画「十年」を観た。5人の香港人若手映画監督による短編作をオムニバス風にまとめたもので、昨年末の上映開始後から香港で大きな注目を集めた。
映画は主に撮影が行われた2015年から10年後にあたる、2025年の香港を予想して描かれている。
インド系香港人と中国から香港に移民した低層階級の若者が自分を受け入れてくれたマフィアの手下となり、結局は中央政府の関係者に道具にされて殺されてしまう「浮瓜」。
「冬蝉」は、昔の香港の思い出とそれにまつわる品をすべて博物館のように保存用ケースの中に保存しようとする男女の話。話は全て核シェルターを思わせるような密室で進む。
3番めの「方言」は、公用語が普通話(中国の標準語)となった社会で、普通話ができないためにさまざまなトラブルに見まわれ、社会の片隅に追いやられていくタクシー運転手を描く。
4作目の「自焚者」(「焼身自殺者」の意味)は、香港の独立を求めて英国の責任を追求し、抗議の挙句、ハンストで亡くなった青年をめぐるストーリー。彼の同級生の急進的独立派、そして事なかれに徹しようとする若者などを描く。さらには暴乱(これは2014年に起きた「オキュパイ・セントラル」をなぞっているようだ)の際に青年に助けられた老婆が、彼に代わって英国領事館の前で焼身自殺するという、衝撃的なラストを迎える。
最後の「本地蛋」は、香港最後のトリ農場が廃業し、「地元産タマゴ」(つまり、「本地蛋」)が手に入らなくなる…という話を背景に、「本地」つまり「ローカル」といった言葉狩りをする紅衛兵のような子どもたちが闊歩する香港の未来を描く。「本地蛋」を売る雑貨屋の店主と、香港紅衛兵になった息子、そして紅衛兵たちの標的にされてしまった書店主がいかに生きようとするか…昨年、香港の書店主らが中国政府に拉致された記憶を呼び覚ますようなストーリーだ。
●香港人の不安が詰まった映画
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