【ぶんぶくちゃいな】重苦しい春節、人々は故郷で何を目にしたのか?

1月14日、中国政府当局は、対新型コロナ措置緩和を発表した昨年12月8日から1月12日までのコロナ関連死者統計が59938人に上ったことを発表した。

発表された統計数字によると、死者の平均年齢は80.3歳で、65歳以上が90.1%を占めており、さらに56.5%が80歳以上だという。またその90%以上に基礎疾患があり、心血管や末期がん、脳血管疾患、腎不全、メタボリックシンドロームなどを患っていたという。

但し、12月の突然の措置緩和で全国で2、3日ごとに強制的に行われていたPCR全民検査が中止された結果、同月25日に当局は「統計が取れなくなった」として新規感染者数などの詳細なデータの報告を取りやめている。そんな状況下でいかにして死者の数を統計できたのか?という疑問も多くの人たちから上がった。

これに対して、経済メディア「財新網」が根拠を探っている。それによると、12月6日に中国の対コロナ対応機関が制定した、死者数に関する分類方法の通達では、新型コロナ患者とその他の疾病に加えて新型コロナを発症した患者が「入院中に死亡した」場合、その実際の臨床状況に応じて「死因コロナ」とするか否かを判断すると決めている。

ここで気になるのは「入院中に死亡」という点だ。同機関では、医療機関がそれぞれに死因を判断し、報告するよう求めており、財新網は「家庭で亡くなった患者の多くがこの統計に含まれていない」と判断している。

記事によると、新型コロナ患者が家庭で亡くなった場合、まず感染症対応機関に手続きし、その指示に従って火葬、葬儀を取り行うことになっているが、「ほとんどの家庭はその面倒な手続きを避けたがる」という。このため、死亡証明書にはその基礎疾患名のみが書き込まれ、コロナには触れずに処理されているケースがかなりあるようだとしている。

香港紙「明報」でも、中国駐在記者が広州市で実際に体験した、友人の家庭の葬儀準備の様子を伝えている。

記者自身の父親が香港で亡くなった時は、「病院で支払いを終えて死亡証明書を受取り、そこで葬儀サービス関係者が家族の気持ちを慮るように声をかけてきて、半日もすれば病院から自宅に戻ることができた」と振り返る。

だが広州のそれは、まず病院で一度支払いをしてから領収書を手にICU病室に戻り、さらに「差額」を支払ってやっと死亡証明書を手にすることができた。そして、その後遺族は公安局で戸籍の取り消し手続きを行い、ネットを使って葬儀場の火葬手続きの予約をする。

その間、家族のもとには遺体を清めて葬儀用の衣類を着せた担当者や遺体を安置所に届けた職員が「心付け」をせびりにやってくるという。さらに彼らは死者を見送るために焼く、紙でできた金銀の供物1セット100元(約2000円)を売りつけようとするのだそうだ。

やっとのことで落ち着いて葬儀の手配をしようとしたら、火葬場は7日後まで予約でいっぱい。現場にいけばどうにかなるかも、と車を飛ばして行ってみると、火葬場の事務所は黒山の人だかり。その時、遺族である友人の電話が鳴り、相手が「火葬サービスを手配できるが、8800元(約17万円)でどうだ?」と持ちかけてきたという。

広州市政府が定めた基準によると、公共の火葬費用は数百元から2000元(約4万円)程度。「どこで火葬するの?」と尋ねたところ、返ってきた答えはなんと今いるその葬儀場だった。相手の受け答えはテキパキとして、たいへん事務的に行われる一方で、家族の葬儀のために詰めかけた遺族たちを目の当たりにしながら、彼らはなんとも言えない気持ちに襲われた…。

●感染に苦しむ辺境地の「代弁者」たち

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