【ぶんぶくちゃいな】一斉大停電が暴露したのは…まるで中国版「アリとキリギリス」

今週初めに広東省から、浙江省から、そして中国東北部から、さざなみのように広がった「大停電」。

先週末に帰国した孟晩舟・「華為 Huawei」(以下、「ファーウェイ」)CFOを迎えた、春節の飾り付けのようなLEDライトのにぎやかさは、ある意味皮肉な思いとともにあっという間に人々の脳裏から忘れ去られてしまった。米国との協議合意の中身をあまり探られたくないファーウェイや、中国政府にとっては都合よくはあったはずだろうが。

それにしても、建国記念日である国慶節を目前にえらい騒ぎが起こってしまったものだなぁというのが感想である。

だが、なんとなくそんなことになるような予感もあった。

昨年、習近平が国連総会の席で2030年までに二酸化炭素排出量を大幅に引き下げることを約束して以来、中国政府がこのところ積極的に「カーボンニュートラル」を口にしていたからだ。

中国では常にいわゆるスローガンが先走りする「キャンペーン」が始まると、水面下ではその「つじつま合わせ」が無理やり行われる。過去、鉄鋼や穀物の生産量を政治指導者のスローガンに合わせようとむやみやたらな底上げ運動が行われた「大躍進」政策がまさにそれである。「一人っ子政策」でも、妊娠してしまった女性を強制流産させたり、強制的に避妊手術を行ったり、挙句の果てには末端幹部が「目標値」達成のために1人しかいない子供をさらって人身売買にかけるといった事態すら起きている。

ただし、ここに挙げた過去の「キャンペーン」はまだ、情報も流通していなかった時代のもので、今や国民のあれこれをデータベース化して管理する「ネット先進国」になったこの国では、マクロ管理はそれなりになされているのだろう、と思っていた。

実際、中国全土の電力ネットワークを握る国有企業「国家電網有限公司」(以下、国家電網)は年間売上総額が3470億米ドルという、世界最大の電力会社だ。電力会社としては、世界2位のイタリア、フランス、そして日本(東京電力)、韓国の4電力会社の売上合計よりも高い売上で、文字通り中国トップ企業である。

だが、次第に明らかになってきた舞台裏を見ると、現場では相変わらず「つじつま合わせ」が堂々と行われていた。そして規模が大きすぎるこの国において、「大きいからなんとでもなる」みたいな神頼み的な気分がまん延していたことがこの大停電を引き起こしたという結論が見えてきた。

●すでに5月に広東省でピークシフト開始


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