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《中国とインドがかつてない軍事緊張関係に》(JB Press)

表題記事はこちら

「戦争をすると公言しているときは、」と書かれているけれど、中国は現時点では公言していませんけど? 筆者はインド事情の研究者なんですね、そういう意味でインド側の視点にお詳しいはずの筆者によるインドの現状はここでは論じることはしません。

ただ、門外漢の「中国分析」はやっぱり自分の都合の良い、あるいは自分が見慣れている論調に傾きやすい。中国がいかにこれに対応しているかを知らずに、インド側資料だけで見ていても中国が何を考えているかはわかりません。

中国にとってインドは、今いちばん大事な「一帯一路」計画における最大の懸念事項であり、しかし絶対に避けて通れない相手です。さらに、インドへの対応によって、アジア諸国ひいては目的地のヨーロッパとの信頼関係が大きく左右されることを理解している。だから、そう簡単には「戦争だ!」とは言えないのです。つまり、筆者は読み違えている。ここで書かれているのは、あくまでも最新の中国事情を理解していない筆者の想像でしかありません。

「過去の教訓(1962年の戦争でインドが中国に敗北した件)」から学ぶよう言及し、中国政府は、インド軍が撤退しない限り「交渉しない」と言及し、中国メディアも「外交以外の手段(戦争を指す)」を選択すると連日報道している。

「過去の教訓に学べ」「相手が退かない限り交渉しない」「外交以外の手段」…これ、かつて日本も尖閣問題が盛り上がった時に散々聞かされてきた、中国の決まり文句じゃあないですか。「戦争がしたくないために御託を並べている」ととってもいいと思います。筆者が「中国メディアがそう言っている」とするあたりはどのメディアが言っているのかも要確認。もしそれが「解放軍報」とか「環球時報」とかであれば、根拠にするのは研究者として恥ずかしいレベルです。自衛官上がりの研究者は「戦争ありき」で論を張るケースが多いので、要注意です。

実際にモディ首相が先週やんわりと中印合意の話し合いに触れたという報道が中国ではなされており、逆にそれを揶揄して煽った「環球時報」など政府系タブロイド紙の記事が削除されています。つまり、中国は「退けない」けれども、火に油を注がないように言論統制を敷いているのです。この動きは「意図的」であり、そこには中国政府の本音がシグナルとなっています。

一方、インドは中国の「一帯一路」がパキスタンとの間でも進んでいることに警戒感を持っているとも言われています(アジア系英語メディアソース)。特に中国が一方的にインドとパキスタンを結ぶ交通ルートを構想していることに、「国家の安全を脅かすもの」と見なしているとも伝えられています。そうした意味からも中国に対する敵愾心はインドのほうが高いといえるのではないでしょうか。

とにかく、現時点では「一帯一路」という国家の命運の前には戦争はしたくない。これが中国の本音であることは覚えておいたほうがいいでしょう。


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