【ぶんぶくちゃいな】香港返還20週年・その1:「手弁当でフェイクニュースに対抗する」社会記録頻道 SocREC

香港のメディア界では日本よりも速いスピードでネットに移行している。

今年に入ってから約30年、香港の世論を牽引してきた大衆紙「アップルデイリー」(「りんご日報」)の経営不振が大きく喧伝されるようになっているし、民主派に長らく愛されてきた「明報」もその中国政府への傾倒が人々の口に上っている。中国政府機関に脅された企業が、中国に批判的なメディアに広告を落とさなくなってきたからだ。

いち早くその変化を感じた人々は、ネットに移行。まず志ある記者たちがネットを使ってさまざまなメディアを立ち上げてからスマホ時代に突入し、人々の生活習慣も世界の潮流と同じく手持ちのツールでニュースを読む形へと移行した。だが、日本とは違い、すでに信頼性を失った伝統メディアは必ずしもオンラインで世論を牽引できていない。

一方で、伝統メディアの失墜と反比例するように雨後の竹の子のように出現したネットメディアは、読者層の多さはともかく、資金の工面に苦しんでいる。今年3月には設立して2年、深い洞察力と高い評論性と話題の豊富さで人気を集めていた「端」が、突然資金難となり、現在「購読」という形に移行しつつある。その他のメディアは謎の資金源を持つ他は、ほとんどが読者や支持者によるクラウドファンディングで支えられている。

だが、クラウドファウンディングがいつまで続くのか? そしてどれだけのメディアを支え続けられるのか? 疑問の声を多く聞いた。

その中で一つ、ひょうひょうとしたメディアがある。ボランティアによって非営利で運営されている「社会記録頻道 SocREC」だ。2010年6月に有志によって設立されて以来、香港社会で起きたさまざまな出来事を映像で記録し、それをネットにアップし続けている。

お金がほしいわけじゃない。
名誉がほしいわけじゃない。
香港で起きた出来事を記録して、多くの人に見てもらいたいだけ。

評論はしない。
ナレーションやアニメやふきだしはつけない。
編集はしない。
カットもしない。

そんな彼らの活動事情を、SocREC発起人の梁日明(Paul LEUNG)さんに聞いた。

●たいした不満もなかった1980年代の香港

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