【読んでみました中国本】アリババの凄さは「企業の価値は、いかに社会問題を解決できるかだ」にあり:「Alibaba アリババの野望 世界最大級の『ITの巨人』ジャック・マーの見る未来」王利芬・李翔
ようやく、日本における中国に対するイメージがそれぞれの人ごとに多角化し始めたなと感じることが増えてきた。
時おりしも、5年に一度の中国共産党大会開催直前となり、伝統メディア、特に新聞で恒例の党執行部予想レースが始まった。そんなもん蓋を開ければ分かるのだから、人手と時間をかけて競争みたいに各社が予想して見せるよりも、もっと伝えるべきニュースがあるはずなのだが、これは古典中国ウォッチャーの「お約束」なのである。
でも実際、各社がチャートまで準備して、こいつがあっち行って、あいつがこっちについて…なんて解説されても、どれだけの人が真剣にあのチャートを読んでいるのか。誰かが各社の予想をまとめて事後にどれくらい当たったかを統計してくれれば、どのメディアが最も中国事情に食い込んでいるか知るバロメーターになるだろうから、それはそれで多少意味があるかもしれないが。
だが、今中国に関心を持っているビジネスマンの大半には、習近平が誰を側近にしようがあまり関係ないはずだ。事前に知ったところで何ができるわけでもなく、11月になってすべてが固まれば共産党は出したい法令をバンバン出していく。
ビジネスマンも、庶民も、ただひたすら現状に応ずるのみ。誰が共産党のNo.2になっても、明日を生き抜いていくのみなのだ。そんな彼らにとっては、お上の賞レースよりも、今の中国社会を本当に動かしている情報のほうがどれだけ大事か。そこを古典派中国報道者たちはまったく理解できておらず、自己満足を追い求めている。
そうした「慣習」にどっぷりと浸るマスメディアには、多様化する日本人の中国への関心がまったく見えていないようだ。例えば、
北海道でもサービスが始まったシェア自転車「Mobike」は、当初いかにして中国全土を席巻したのか?
なぜ中国ブランド「華為 Huawei」(ファーウェイ)のスマホが、トレンディだと思われているiPhoneの一部ユーザーすら惹きつけるのか?
お財布を持たずに出かけて1日を過ごせるという、中国の消費生活とはどうなっているのか?
そうやって人々の「お財布」を預かる第3者ペイメントはどうやって人々に信用され、人々の生活を変えてきたのか?
中国の動画サイトが、なぜ「海賊版」「コピー氾濫」から課金化に成功したのか?
中国の人気スマゲーを「Nintendo Switch」で配信する任天堂はそのどこに注目したのか?
資金持ち出しが目的と言われたビットコイン狂乱は、中国の何を変え、その規制は社会にどんな影響を与えているのか?
ECサイトブームは都会の消費生活以外に、地方の人々に何をもたらしたのか?
…ネット絡みで挙げてもざざっとこれだけの疑問がある。これらについてマスメディアはこれらの「表面的な変化」は伝えても、肉薄した「変化の掘り起こし」は出来ていない。どちらかというと、フリーランスの書き手や雑誌のライターがその穴を埋めている。「マス」と呼ばれる巨大な読み手を抱え込むメディアはそういった中国で刻々と起きている具体的な変化を伝えるよりも、いまだに共産党の人事レースに夢中なのだ。
逆に言えば、こうした中国の事象に関心のある読者に残された道は、「自衛」あるいは「自立」しかない。つまり、マスメディアに頼らずに自分で情報を探し、見つけ、考え、時には自ら体験してみる。その意味では、彼らはマスメディアの報道よりもずっと先を行っているし、「現実」を捉えている。そんな人たちはさらに独自に先へ先へと関心の触覚を伸ばしているはずだ。
そんな「もっと先へ」と手を伸ばし続ける人たちにぜひ一読をおすすめしたいのが、この「Alibaba アリババの野望 世界最大級の『ITの巨人』ジャック・マーの見る未来」だ。アリババと、それを作ったジャック・マーこそが、今の中国を育て上げたのだから。
●初めて中国の「顔」になったビジネスマン
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