あえて言おう、病院という組織はカスであると。

初めまして

お初にお目にかかります。「わんたか」と申します。
現在、私は岡山県の総合病院で事務職として働いております。所謂、医療事務という括りになるかと思います。
とはいうものの、元々東京のSIerで働いており、また経営企画などの企画系の部署にしか携わってないものですから、皆さんが想像するような受付したり、料金計算したりといったことはしておりません。
では何をやっているのかということですが、一言でいうと「病院を効率的に運営するためのこと全般をやっている」となります。
もっといい病院になるにはどうしたらいいかを考えて実行したり、安全性を高めるための施策を作ってみたり、時には職員の働き方を変更してみたりするような仕事です。
自分で言っていても、めちゃくちゃ分かりにくい。
もし子供が生まれて、お父さんの仕事について書きましょうみたいな作文の宿題が出たときに、大変苦労することが想定されます。
32歳独身彼女なし、という身分ですが今から身構えてしまいます。

病院ってなんだ?

さて、病院ってなんなんでしょう。
医師や看護師とはちょっと違って、間近なのに若干横で
全体を見ながら働いている、私から見ても不思議な場所です。

まず病院は「医療を提供する」という社会的に重要な機能を担っています。
私が勤めている総合病院では風邪などの軽傷なものから、がんなどの重傷なものまで診ないといけません。
救急もやって24時間365日対応が求められます。
出産などもたらいまわしにしてはならないと、妊婦さんも積極的に受け入れています。

お金の面では、診療報酬制度によって固定価格制となっているのも特徴の1つです。
簡単に診療報酬制度を説明すると「日本全国どこの病院で治療を受けても同じ金額しかかからない」という極めて平等かつ優しい制度です。
例えば私が今、虫垂炎になったとして、慶應大学病院のエライ教授先生に手術してもらっても、田舎の診療所の若手医師に手術してもらっても同じ値段しかかかりません。
アメリカなどは医師や病院によってお金が全然違うようです。「虫垂炎になったせいで300万円とられた」なんて話はこういうところにも要因があります。
DPC係数とか難しいこと言いだしたらきりがないですが、「日本はどこでも一律料金」という感じです。

そんな社会性の高い役割を担っている病院ですが
ほかの企業と同じように「儲からなければ潰れる」という市場競争に晒されています。
少し古いデータですが帝国データバンクの調査によると、2014年には347件の医療機関が休廃業・解散に追い込まれています。
国立や市立の病院は一見潰れないように思えますが、国や市が赤字を補填する、いわば「ケツモチ」をしているから潰れていないだけです。市が財政破綻に陥れば、市民病院も潰れるでしょう。

ですので、病院は
 ①社会的に必要な機能を提供している
 ②収入は国によって制限されている(診療報酬制度)
 ③市場原理によって廃業する
という組織といえます。

病院組織がカスと思うわけ

私は病院が好きです。でもカスだと思っています。
医師や看護師、薬剤師などなどの専門職種が目の前の患者さんを救おうと日夜励んでいます。この情熱はどこからくるのか、と思うぐらい働いています。
休日出勤も厭わない姿には下げる頭もありません。心を打ちます。
だからこそなのです、だからこそ「病院組織がカスである」と言わざるを得ないのです。

「病院の組織」は彼らの仕事を支援するには脆弱すぎるのです。
上述の通り、「病院は儲けなければならない」のです。
大切な役割を果たすためには、まず経済的に生き残らなければならない。
それなのに、儲けられない運営をしているケースが多いように思います。
売上の上げ方、投資の仕方、コスト削減、利益を確保するための方策が緩い。

ほいほいと医師の言いなりになって高額な医療機器を買ってみたり(後ろにはMRさんの影がちらほらします)、
AIだビッグデータだと流行りのワードに乗せられて不必要なITプロダクトを導入してみたりします。
部署の単機能化が進んだせいで、院内で機能が重複するような人員投入も散見されます。

コストがかさむけど、収入は「患者数×単価」しかありません。
単価は診療報酬ですので、大幅な方針転換や機能変化がない限りは、ほぼ固定的ですから、「収入増=患者数増」が最も単純な方程式です。
ということで、管理職は医療現場に対して「患者をいっぱい診ろ!」という戦略ともいえぬ戦略をとることになり、医師をはじめとする医療者に負荷をかけまくってしまう。
こういう病院、多いんじゃないんでしょうか。

こういう運営をさせている病院はカスなのです。
労働力を純然たる医療への熱意でもって賄い、それが当たり前だと思っているのです。
「やりたい」を実現させるためにコストを増大させて、赤字を垂れ流しても、それがいつか誰かが解決してくれると思っている。
つらい今を経た先に、必ず明るい未来が待っていると思っている。
日本経済が圧倒的に隆盛し、バブルのように世の中に金があまり、医療政策に金がじゃぶじゃぶ投入され、診療報酬が爆上げし、病院の経営がV字回復する未来が来るはずだと、祈っている。

そんなことはもう起こりえないことを気付いていて、危機的な状況とさえ思っていても、その祈りにも似た心境から脱却できていないのです。
そうでなければ、こんなに非効率な運営をするわけがないと思っています。

医療が進歩し、診療報酬は2年に1回改定されるわけですから、常に改良、改善、変化をしていかなければならない。
でも、病院の多くは、変化に耐えうるだけの体力をつけることができておらず、また変化に対応できるような成熟した組織になれていないと判断しています。

無邪気に治療ばかりを考え、「医は仁術」として市場から切り離し、
収入と収支の差も理解できず、単純な数式でしか経済をとらえられていない。
さながらドン・キホーテです。

これだけこけおろしていても、なぜ病院に勤めているのか。
なぜなら「病院」が好きだからです。
与えられた社会性、使命感に燃えている優秀な医療職が好きだからです。
だからこそ「病院」が存在する価値を高めたいのです。
適切な投資、コスト配分、バイアスも無理もかからない必要十分な医療提供体制、
まずはビジネスの「地盤」の上に、
「やりたいこと」を作らなければならない。
そういう「地盤づくり」を今はやりたいと思っています。

まずは「カス」と認めるところから。
そこから脱却するためにどうするかを日々、考えています。

#病院 #医療事務

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