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繰り返される中国ロケットの「無制御」再突入①:経緯

中国が打ち上げる宇宙ロケットは、任務完了後、またしても「無制御」のまま大気圏に再突入した。米国やヨーロッパ等の監視によって、「無制御」状態、再突入時刻及び再突入時間が事前に明らかにされるが、中国はその詳細情報を明らかにしない。現在の監視能力ではその予測の幅が広く、不確実性が存在する。中国自身がロケットを適切な管理の下で処理せず、また、再突入に関する事前の情報を適切に公表しなければ、リスクの不確実性は低減されない。現に、今回の「無制御」再突入に対して、航空活動への被害防止のために、ヨーロッパの一部の空域の飛行が制限される事態に至った。

 2022年10月31日に打ち上げられた中国の長征5号Bロケットの4号機は、搭載している実験モジュール「夢天」(Mengtian)を宇宙ステーション「天宮」(Tiangong)にドッキングさせることに成功した。これにより、天宮における主要なモジュールの組み立てが完了したことになる。

 その任務を終えたロケットのコアブースターは徐々に高度を下げ、大気圏に再突入することが判明した米国の宇宙軍(USSPACECOM)によると、コアブースターは11月4日の午前6時過ぎに南中部太平洋上空で大気圏に再突入した。ロケットの大部分は再突入時に分裂されたと伝えられている。

 中国有人宇宙局(China Manned Space Agency)は、ロケットのコアブースターが落下する数時間前に声明を発表し、コアブースターの軌道に関する情報を提供し、コアブースターが東部時間の午前 6 時 8 分に、メキシコの南、ニカラグアの西の太平洋の地点に再突入したとしているようである。しかし、CMSA は、再突入を事前に予測してその情報を公表することはなかった。

 一方、USSPACECOMは、再突入前に、ロケットには安全で計画的な着水に向けて操縦するためのハードウェアが不足しているようだと指摘しており、実際、高度を下げていくロケットは「無制御」状態であったことが明らかになっている。中国のロケットが「無制御」の状態で大気圏に再突入したのはこの2年間で4回目となる。なお、大気圏への再突入によって燃焼し切らなかった「残骸デブリ」は、北東太平洋地域、メキシコのオアハカ州にあるプエルト・エスコンディドに到達した可能性があると推測されている。また、フィリピン宇宙庁(Philippine Space Agency)によると、パラワン西部のブスアンガ島沖と西ミンドロ州のカリンターンで発見された金属片は、今回のロケットの一部である可能性が高いとしている。

※冒頭の写真は、打ち上げられた「長征5号B」(@CNN)


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