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地上絵の新発見から考える「AI」と「航空写真」

 南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」について、山形大ナスカ研究所と日本アイ・ビー・エムが共同で、AI(人工知能)の深層学習(ディープラーニング)技術を活用して、四つの地上絵を特定した。山形大が1日発表した。

山形大学とIBMの共同チームが新たな「地上絵」を発見したそうです。地上絵というのは、言ってみれば、地球規模で描かれた絵のことなんですが、あまりに巨大なため空からでないと全体像の把握が難しいんですね。それで今回は「航空写真」と「ディープラーニング」を活用して、4つの地上絵を発見したわけです。

先ほど「山形大学とIBMの共同チーム」と書きましたが、より正確に言うと「山形大学 ナスカ研究所」と「IBM ワトソン研究所」の共同チームです。この山形大学 ナスカ研究所は、実は現地調査がペルー政府に認められている唯一の組織であり、これを率いているのが坂井正人教授です。坂井教授は2004年には既にナスカの地上絵をテーマとした研究をしており、早い時期から人工衛星画像の活用もしていました。少し話が逸れましたが、日本のチームが南米の国の政府に認められるのは凄いですね。

話を本題に戻しましょう。今回のニュースのキーワードは「航空写真」と「ディープラーニング」ですが、このうちディープラーニングはAIを語る上で外せない重要技術で、2012年に画像認識のコンペティションでディープラーニングを使ったチームがものすごい好成績を収めたことを起点として爆発的に広まりました。今でこそ、AIモデルを構築する際にはディープラーニングを使うことが普通ですが、昔はそうでもなかったんですね。それで、今回も例に漏れずディープラーニングを使って構築した「地上絵を自動的に検出するAIモデル」を航空写真と組み合わせることで、地上絵の発見という実績を出したわけです。

僕は本質的に「AI」と「航空写真」は相性が良いと思っていて、今回の地上絵の発見はその好例になったのではないかと思います。なぜAIと航空写真の相性が良いかというと、いくつか理由はあるんですが、そのうちの一つは航空写真は人間が処理しきれないほど大量にあり、また今後も指数関数的に増えていくと考えられるからです。

最近はスペースXの衛星通信サービス(スターリンク)が普及してきていますが、スターリンクは地球低軌道(地球周回軌道の一種)に少なくとも6600機以上の小型通信衛星を飛ばすことで成り立っています。この通信衛星と同じ規模の地表観測衛星が飛ぶ日も近いと思っていて、そうなったら地球全土をリアルタイムで観測することも可能になります。そんな時に大量の航空写真(衛星写真)を処理するのは間違いなくAIです。というか、既に航空写真をAIを使って処理している会社はたくさんあります。

他にも航空写真とAIの相性が良い理由として、AIであればトレーニング次第で低解像度の画像でも有効活用できる、という点があります。例えば、人物の認識を考えてみましょう。人が航空写真を見る場合を考えると、地上にいる豆粒のような人が誰であるかは、おそらく判別できないでしょう。ドローンなどから撮影された写真ならともかく、人工衛星から撮影された低解像度の画像ならなおさらです。しかし、AIならば、足の運び方や手のひらの向き、顔の傾け方など、人は気が付かないような些細な情報から人物の認識をやってのけるポテンシャルがあります。

今後も(衛星画像も含めた)航空写真とAIのコラボレーションによる新発見&社会への活用は増えていくでしょうね。オンライン空間上での「世界の再現」なんかにも使われると思います。とてもワクワクしますね。今日は以上です。

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