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私のスーパーママチャリ号!!

世界の様々な国に住む書き人によってスタートした、リレーエッセー企画『日本にいないエッセイストクラブ』。リレー企画第3回目のテーマは「思い出の一品」。今回私にバトンを渡してくれたのは、アルゼンチン在住の奥川駿平さん(記事はこちら)。今回私はリレー企画第2回目の参加で書かせていただきます。みなさまどうぞよろしくお願いします。

今から約4年前、実家の母が娘たちを学校へ連れて行くようにと子供の椅子が2つ付いた自転車を買ってくれました。日本ではママが子供達を自転車の前と後ろに乗せて、幼稚園やスーパーへ行ったり街中で颯爽と走り回る姿をよく見かけますが、チリでは自転車に子供を2人も乗せている人は見たことがありません。

私が子供二人を乗せて走っていたら、よく「どこで買ったの?」と珍しがって聞かれました。「普通の自転車に椅子を二つ付けてるだけだよ」と私は答えるのですが、チリの人にとって自転車に椅子を2つ付けるという発想自体が普通じゃないようでした。時々そんな変な自転車に乗る私たちをスマホで撮影する人もいました。人にどう思われているのかは関係なく、とにかく子供たちを乗せて自由に色々な場所へ行ける感覚はとってもとっても楽しく、日々得意げな気持ちで自転車を漕いでいました。

ある日、そんなスーパーママチャリ号に乗って子供達と少し遠くの公園へ行った後、帰りにピザ屋に寄ったのが、私と愛しの自転車との別れの瞬間になってしまいました。ピザ屋の隣の駐輪場にチェーンタイプの鍵をつけて自転車を止めた後、ピザを買いに行きました。ピザ屋では15分ほど待ったでしょうか。ピザの箱を抱えて、子供達と自転車を止めた場所へ戻ると、なんと止めたはずの自転車が無い!!!!あるのは、チェーンタイプの自転車の鍵だけが床に落ちているだけでした。「えぇぇぇぇーーーーー!!!!???」

「確かに、私の鍵の掛け方が甘かったかもしれない…。ちょっと面倒だと思って、タイヤの細い棒(スポーク)にチェーンを引っ掛けて鍵をかけた私が悪かったかもしれない!!!でも、スポークを折って盗むなんて酷すぎる!!!!!!!!!!」

私の不注意も原因だったかもしれないけれど、両手にはピザの箱、頭の上には自転車のヘルメット(ヘルメットはかぶったままピザ屋に入た)、悔しい気持と悲しい気持ちと、もうピザなんかどうでもいいという気持ちと複雑な気持ちで家に向かって歩いて帰りました。

「チェーン店のピザ屋だし」「別にピザがそこまで食べたかったわけじゃないし」「別にそんな美味しくないし」「そもそもピザ屋に行かなければ…」

ピザを食べながら、ピザのせいで犠牲になったスーパー自転車のことを思うと、全然美味しくないピザに悔しさが倍増しました。

私のスーパーママチャリ号よ。あぁ。

チリは泥棒がたくさんいる。貧富の差が大きいことも原因。チリに住んで9年になるのに、いまだに自己管理の甘さに嫌気がさす。日本にいたら、泥棒なんてほとんどいないのにぃ…。「日本と比べてはだめ!ここはチリだ!」自分に言い聞かせる。

それ以来あのスーパーママチャリ号を超える素敵な自転車に出会うことはありませんが、いつか自分で自転車に乗れるようになった娘たちと一緒に、新しい自転車と共にチリ南部のパタゴニアでサイクリングを楽しんでみたいと思います。

<おわり>


前回走者アルゼンチンの川駿平さんの記事はこちらです。

アルゼンチンでご結婚されて、チリにも家族がいらっしゃるということで個人的に親近感を抱いています!!!お話に出て来たインディオの木像、私も持っています!!日本の実家の家族にチリのお土産として持って帰ったらかなりびっくりされたのを覚えています。今では実家の仏壇に飾ってあります(笑)

そして、次回バトンを渡すのは、カタール在住のフクシマタケシさんです。

カタールはとてもエキゾチックな雰囲気のする個人的にとっても行ってみたい国の一つです!どんな素敵なお話が登場するのか、楽しみです!どうぞよろしくお願いいたします。


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