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たかが2分の皆既日食の旅

世界の様々な国に住む書き人によってスタートした、リレーエッセー企画『日本にいないエッセイストクラブ』。リレー企画第5回目のテーマは「思い出の写真」。今回私にバトンを渡してくれたのは、カタール在住・フクシマタケシさん(記事はこちら)。各走者の記録をまとめたマガジンはこちら

人生に一度は皆既日食を見て見たいと思っていた。でも皆既日食の瞬間なんてたかが約2分。そんな数分に時間とお金をかけて見るべきだろうか。2019年7月、私は夜ベッドに子供達を寝かせた後悩んだ。

2019年の皆既日食はチリ北部の町ラ・セレナ近辺だった。未だ皆既日食を見たことがなかった私は、その「皆既日食」という謎めいた怪しげでとても魅力的なその響に憧れていた。しかしサンティアゴからラ・セレナまで長距離バスに乗り子供2人を連れて移動することを考えると、少し迷った。

数日間迷ったが、結局心の声に従い子供達二人を連れて、ラ・セレナへ行くことにしたのは、結果的に大正解だった!皆既の時間たかが2分。しかし、今まで見たこともない不思議な光と出会うことができたのは、本当に感動的だった。

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写真で見るような真っ黒な世界に真っ白な指輪のように輝くコロナが見えるというのは、写真の中の世界であって、実際は夜のような真っ暗闇にはならない。(私は実際に見るまで真っ暗になると信じていた)

夕方から夜になる直前のような薄暗さの中、太陽の黄色がかったコントラストの強い光が一面に放射され、薄暗いけれどコントラストの高い不思議な世界が広がっていた。現地にいた皆既日食を見に来ていた大人たちは全員、その不思議な月と太陽が重なる瞬間を必死になって写真を撮ったり、メガネをかけて眺めているのだが、子供達にとってその2分間というのは、下に落ちている石を拾ったり、時々空を眺めたり、走ったり、遊んだりとずいぶん大人とは違うけれど、普段の生活の延長上のような過ごし方をしていた。

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私は皆既の瞬間、子供達へ「ねー!!!ねー!!!見て見て!!!凄いよ!!」と一生に何度見れるかどうかの貴重な瞬間を大声をあげながら興奮していた。そんな私の興奮した声に釣られて子供達も空を見上げていたが、子供にとっては皆既日食も、近くに落ちてる綺麗な石も特別な物ということで代わりがなかったようだ。

その日の夜宿へ帰って子供達へ「ねーねー、皆既日食どうだった?」と聞いたら、「魔法だった」と答えていたので、彼女たちなりに不思議な時間を感じてくれたんだなと思って少し嬉しかった。

今年もチリの南部で皆既日食が見られた。今年はコロナウイルスの関係で移動が難しく行くことを断念したけれど、また地球のどこかで機会があればぜひ見に行きたい。そう感じるほど、あの2分はとっても素敵な忘れがたい時間だった。

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最近また子供達に「そういえば、去年行った皆既日食楽しかった?」と聞いたら「泊まったところにいた猫が可愛かった〜」となんともとぼけた答えが返って来た。コロナでなかなか旅行が以前よりも難しくなっているけれど、そんな子供達のとぼけた回答にもめげず、これからも気になる場所にはどんどん子供達を連れて色々な世界を一緒に見て周っていきたい。


前回走者、フクシマタケシさんの記事はこちら​。

個人的に砂漠は皆既日食と並ぶロマンを感じる小さい頃から夢を見る場所の一つです。見渡す限りの砂丘に一列に並ぶラクダの姿をいつか一度子供達を連れて実際に見に行ってみたいです。


次回の走者はドイツ在住のベルリン酒場探検隊さん。前回の記事はこちらから。

見ているだけでもお腹がすいてきそうなソーセージ。個人的にはソーセージは固形なイメージが強かったので、パンに塗るソーセージというのが気になりました。さて、次回はどんな面白い話が聞けるのか楽しみです。ベルリン酒場探検隊さん、よろしくお願いします〜。

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