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ナナメの夕暮れ

ナナメの夕暮れ。

オードリーの若林さんが書いた3冊目のエッセー集である。


僕はオードリーのオールナイトニッポンを心から愛していて、毎週欠かさず聞くことはもちろん、オードリー2人のトークを1週間に何度も聞き直したりするぐらい好きだ。数あるコンテンツの中で、心から好きだと言えるのはこのラジオぐらいかもしれない。

今やテレビ最多出演ランキングにコンビでランクインするオードリー。春日さんなんて今年の第1位を取ってしまったぐらい売れっ子中の売れっ子である。

そんなコンビのネタ作り担当、ブレーンとも言える若林さん。テレビで見ない日はないぐらいMCのレギュラーを抱えているし、本当に人気なんだなと。

テレビに出たてのころは、春日さんのキャラに隠れた「じゃない方芸人」であったし、「人見知り芸人」でもあった。生きづらさを常に抱え続けていた若林さんが20代の人見知り時期を経て、自意識とこれまでかと向き合い続けた結果を記したのがこの「ナナメの夕暮れ」でした。

30代になって、社会の変化、周囲の人たちの変化。逆に変わらない自分が置き去りにされているかのような中で、日々の自意識と社会を照らし合わせながら書いていた。

内容は、人によっては「30代のおっさんがなんでこんなに悶々として生きているんだ」と言う人もいれば「わかるわかる、社会には疑問を持つよな・・・」という人に分かれそうな感じ。

生きづらいおじさんの自意識がこれまで言語化されているものを読んだことがない。

「ゴルフは、森林伐採して造ったコースを我が物顔で歩きながらする。俗物のブタ野郎がやることだ」なんて20代の頃に思っておきながら、30代でゴルフにハマるという話。

6年も元カノを引きずった挙句、やっとこさ出会った女性と週末だけ会う関係に。会うのを重ねるうちに女の子にねだられた指輪をデパートに買いに行き、店員に「何かお探しのものはありますか?」と聞かれた途端フロアの隅に走り去っておいおい泣く。

・・・こんな30代のおじさん、いる?いるにはいるだろうけど、テレビに出ている売れっ子芸人が、こんなことある?という感じである。そこからすっかり彼女を作るのは諦めて風俗に通ったなんてことも書いていた。おもしろい。


文庫本で出版されているので、若林さんの自意識をぜひ覗いてみてほしい。

生きづらさをとことん突き詰めて、自分が「なぜ生きづらいのか?」を徹底して考え抜く。一種の変態にも見える自分との対話は、僕みたいなアラサーにはかなり刺さってしまった。

まさに「夕暮れ」なのだ。

生きづらい中でも、「なぜ生きづらいか」という問いを自分に課すことを止めなかった。興味なのか疑問なのか、はたまた問いなのか。ひたすら向き合った結果、物事をナナメに見るという自分の夕暮れが始まった。

若林さんがあらゆる番組でMCをしている理由がなんとなくだけど、わかる気がする。自分をさらけ出せる人は、しなやかで、信頼できる。ラジオで「仕事減らせよ!事務所!」なんて本気で言っちゃうんだもの。

自意識と対話し続けるのも、悪くないのかもしれない。

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