ネパールのクンブ地域からのリモートワーク - 実地検証
エベレストベースキャンプトレックで知られるネパールのクンブ地域は、近年開発が進み、4Gモバイルインターネットを含む高速インターネット回線が利用可能になってきている。この地域に実際に滞在しリモートワークが可能か実地検証を行った。
アクセス方法
はじめに、クンブ地域には基本的に自動車が走れる道が存在しない。この地域にアクセスするには、ルクラにある空港に飛行機かヘリコプターで移動する必要がある。最も近い自動車道からは、険しい山の中を徒歩10時間以上歩く必要があるため、登山慣れしているトレッカー以外は空路が唯一の方法であるといってよいだろう。
通信方法
NCell
ネパールで最もポピュラーな携帯電話事業者。他の事業者と比べて、山岳部に強いと言われている。現地でSIMを購入して使用した。
AirLink、Everest Link
プリペイド公衆Wifiのサービス。日本の公衆Wifiのように電柱にルーターがあるタイプではなく、各村のロッジのWifiルーターに接続できるようになるサービス。高地では24時間で800ルピーが相場。
実際にリモートワークをしてみた結果
まず第一に、ネットワーク速度は非常に遅く1Mbpsを下回る。ソフトウェアアップデートなどは不可能だと思ったほうがよい。Windows Updateに限らず、VSCodeの更新もできず自動アップデートが始まって起動不可能の状態に陥った。vimなどの軽いエディターを使うことでなんとか凌いだが、生産性は半分以下になっていたと思われる。
ネットワークの問題だけでなく、高度が高いため酸素が足りず集中力にかなりの影響がでる。頭痛、吐き気などを耐えながらコーディングを行ったため、普段よりもバグの率が高くなった。
寒さ対策も重要なポイントである。高度4,000メートルを超えると外気温は氷点下になり、室内も10度前後になることが多い。手袋なしだと手が震えてタイピングが難しくなり、指先だけを露出させた手袋を準備していけばよかったと後悔した。
各村の情報
ディンボチェ(標高4,400m):NCellはつながらない。AirLinkとEverest Linkは利用可能。電気は太陽光発電で、停電が頻繁に発生する。ラップトップやモバイルバッテリーの充電は、ロッジやカフェで有料(500-1000ルピー)で可能。
パンボチェ(標高3,900m):NCell 4Gは時々利用可能。AirLinkとEverest Linkは利用可能。電気は太陽光発電で、停電が頻繁に発生する。ラップトップやモバイルバッテリーの充電は、ロッジやカフェで有料(500-1000ルピー)で可能。
タンボチェ(標高3,600m):NCell 4Gは時々利用可能。AirLink、Everest Linkは利用可能。電気は太陽光発電で、停電が頻繁に発生する。ラップトップやモバイルバッテリーの充電は、ロッジやカフェで有料(500-1000ルピー)で可能。
ナムチェバザール(標高3,440m):NCell 4Gは時々利用可能。AirLinkとEverest Linkは利用可能。ロッジのWi-Fiはフリーか200-300ルピー。Himalayan Java Coffee等のカフェにフリーWi-Fiがある。電気は水力発電で、停電が時々発生する。ロッジの部屋やダイニングにコンセントがあり、ラップトップの充電が可能。
パクディン(標高2,600m):NCell 4Gは利用可能。ロッジのWi-Fiはフリーか200-300ルピー。電気は水力発電で、停電が時々発生する。ロッジの部屋やダイニングにコンセントがあり、ラップトップの充電が可能。
ルクラ (標高2,800m) :NCell 4Gは基本的に利用可能だが、滞在した数日のうちまったくつながらない日もあった。Wi-Fiはフリーが多い。
結論
上記のように、クンブ地域からのリモートワークは過酷である。しかし、衛星インターネットしか選択肢がなかった10年前と比べ、リモートワーク自体は不可能ではない環境になったといえる。
また、ノマドワーカーとしてどこでもリモートワークを実践することを生業とする以上、クンブ地域は多様な環境に対応できるようになるためのトレーニングとして最適な場所であるといえる。
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