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おれは、ポケモンをスナップしてにんげんの心を取り戻す

■今年もゴールデンウイークがお通夜になってしまった。天気も大変悪い。毎年ゴールデンウィークがない3月決算界隈の人はあまり関心がないかも知れないが、今年も自粛の大型連休となっている。

まあ、不特定多数の人に会わなければ適当に遊んでおけばいいじゃん、という人もいるだろうが、何しろここは大阪である。何かの拍子に大きな怪我とかをしても、ちゃんと病院にかかれるかどうか、だんだんあやしくなってきている。こういう時は、例によって自宅に引きこもるに限るのである。

ポケモンスナップはそんなときにうってつけの、たいへん癒される素晴らしいゲームなので、今日はその話をしたい。

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■2021年4月30日にニンテンドーより待望の新作『New ポケモンスナップ』が発売された。ニンテンドー64の案外知られていない名作ソフト、『ポケモンスナップ』を現代的にリニューアルした作品である。

■前作『ポケモンスナップ』は1999年にハル研究所が開発し、任天堂から発売された。「ポケモンアイランド」なるポケモンが数多く生息するナゾの島で、野生のポケモンを撮影するというのがゲームのストーリーであり、システムのほとんど全てだった。写真を撮るだけでゲームになるんですか?なるんです!

ああ、スクショを撮って、トゥイッターとかにアップしてワイワイするんでしょ?フーン、まあそれは楽しいよね、普通に考えて・・・みたいに現代っ子は思うかもしれない。それは現代の感覚であり、当時の感覚はまた違ったものだった。

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■1999年当時は、ようやく安価なデジタルカメラに手が届くようになり始めたような時代である。使い捨てカメラにより写真を撮ること自体はわりと行われるようになっていたが、デジタル写真を日常的に他人とシェアしてみたいなことは、まだまだハードルが高い時代だった。写メもギリギリまだない。ポケモンスナップは、そんな時代に「そもそも写真を撮るのは楽しいことである」という原点をゲームにまとめて見せた。その結果、ひたすらスクショを撮る、そんな作品が生まれたのである。

もちろん、ポケモンたちのたいへん魅力的な写真が撮れるというのが、このゲームの売りであったことは間違いない。当時はまだ3Dで動くポケモンというのはそんなになかった。ポケモンスタジアムが1998年に発売されているが、収録されたポケモンは、40体のみ。151体収録されたスタジアム2が翌年に発売されているが、ポケモンスナップのほうがわずかに早かった。そしてポケモンスタジアムで描かれるのは、バトルするポケモンの姿である。それに対してポケモンスナップでは、ポケモンたちの色々な姿、日常を見ることができて、それがまた魅力的だった。

ちなみに、撮影した写真はローソンにカセットを持っていけば、シールにプリントすることができた。自分も、1回試しに作ってみた記憶がある。また、公式HPではユーザーの写真を集めたギャラリーも開催されていた。どうやってデータ提出することになってたんだっけ・・・

■また、開発に関して『ポケモンスナップ』は「ジャックと豆の木計画。」という、開発チームを一般公募するというチャレンジングな企画から生まれた作品という点でもユニークであった。その開発秘話も面白い。クリエイティブにおけるリーダーの重要さとか多数決の問題みたいな教訓が語られている。

前作『ポケモンスナップ』は、そういう新しい試みが色々となされた作品であり、自分の中ではニンテンドー64のゲームをいくつか挙げろと言われると必ず入ってくる作品である。

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■昔話はさておき、今作である『New ポケモンスナップ』の話をしよう。平たく言えば、ゲーム性の部分は今作も前作と大して変わらない。決められたルート上を進み、登場するポケモンに対して、リンゴを投げてみたり、イルミナボールなるポケモンに未知のエネルギーを与える球を投げたりしながら、ポケモンたちの様々な姿をカメラに収めていく。要は、レール式のFPS(一人称視点のシューティングゲーム)である。

一応、写りの良し悪しの基準が設けられていて、博士が点数をつけてくれる。ゲーム的にはこのスコアを伸ばしていくのが目標だ。一応、調査目的で写真を撮っていることになっているので、はっきり真ん中に写っているほうが評価が高いとかそういうことだ。

■ゲーム内容的には前作とあまり変わらないが、一方で、写真をシェアすることを前提とした機能は大幅に強化されている。撮影した写真にスタンプやフレーム等の加工を施すことが可能となっているし、Switchなので、シェアももちろんできる。中でも素晴らしいのは、なんといっても「エクストラ撮影」モードである。

「エクストラ撮影」は、ステージ終了後に行えるスクショの加工機能で、驚くべきことに、ステージ中に撮影したすべての写真について、カメラ位置・アングルの調整、明るさの調整、被写体深度の調整を、あとから行うことができる。めちゃくちゃ贅沢だ。これはつまり、適切なタイミングでシャッターを切ってさえおけば、画づくりはあとでゆっくりできるということである。この機能は非常に素晴らしいので、ぜひ他のゲームにも取り入れて欲しいところ。

フォトモードの楽しさについては、繰り返し言ってきたところであるが、ひとつ重大な問題があって、普通のフォトモードでは、その場でアングルなどを決めて、画像として完成させてしまわなければならないため、時として、写真を撮ってる時間がやたらと長くなり、その結果、ゲームプレイが途切れたような感覚になることがある。特にボス戦のような大一番では、気持ちが盛り上がっているところに水を差されて急に冷める、といったことが起こる。まあ、自分でやっといてなんなんだが。

これは、フォトモードが高機能になってしまったことの弊害なのだが、そのせいで、フォトモードが重たく感じることもなくはない。

仮にこれが、スクショボタンを押しさえしておけば、画像はあとでゆっくり作りこめるとなれば、ゲームプレイ的な盛り上がりに水を差すことなく、気軽にスクショを撮ることができるようになる。直近の5枚とかでもいいから、何とかできるようにならんもんだろうか。

画像が沢山シェアされることは、昨今プロモーション的にも重要だろうし、ゲーム体験を損なうことなく、満足できるスクショやムービーなどを作れる仕組みは考える価値があるんじゃないかと思う。なんか、リッチなリプレイ機能みたいなのでもいいのかも知れない。良いプレイをしたら、その満足感に浸りたいという気持ちも、多くの人にあるものだろう。

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■まあ、とはいえ別にSNSで写真もシェアしないし、ポケモンに取り立てて思い出もない、という世代の人が『New ポケモンスナップ』を敢えてやる理由はなんだ、と聞かれると、少々答えに困るところがないではない。モンスターをハントしとけばいいんじゃないかと。それもそうだ。同年代の人に勧めると、大体理解できないという顔をされるのが悲しいところである。

確かに、みためは子ども向けであるように思うが、ポケモンの写真を撮るのは、水族館や動物園でついつい写真を撮ってしまうようことと同じで、結局は、生き物の写真を撮る面白さが根本にある。その面白さは、大人も子どもも関係がない。何となく、深い部分では、写真を撮ることは、生き物を捕まえることを面白く感じるという動物的な本能みたいなものと通じているのではないかということを思う。そう、つまりポケモンをスナップすることと、モンスターをハントすることとは、結局は同じなのだ。

色々疲れている時こそ、シンプルな本能を満足させてやるべきである。探す、捕まえる(撮影する)、集める、そして自慢する。それに加えて、愛でるも入ってくるのだから、ポケモンスナップには隙が無い。強いて言えば、危機から身を守ることから生まれる興奮みたいなものはない。ただただ、癒しがあるだけである。

ゲームでまでツライ思いをしたくない、そんな時もあるだろう。こんなご時世だからこそ、『New ポケモンスナップ』にひたすら癒しを求めてみてもいいんじゃないだろうか。心が傷ついた大人にこそおすすめの作品である。

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