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商売上手そうな、にじさんじのANYCOLOR上場。晴れてユニコーンに。バーチャルリテラシーの高さこそクールジャパン。

■ にじさんじのANYCOLOR、上場。時価総1652億

昨日2022年6月8日、バーチャルライバープロジェクトにじさんじの運営を行うVTuber関連事業者であるANYCOLORが上場した。本邦初というか、たぶん世界初のVTuber事業をメインとする事業者のIPOとなった。

公募価格の1530円(想定時価総446億円)に対して、初日は値が付かず、2日目(6月9日)に初値4810円をつけ、その後5510円のストップ高で引けた。終値ベースでの時価総額は1652億となった。これはまた過少値付け問題に格好の統計データを提供しそうである。

自分は特段にじさんじに思い入れがあったりするわけではないが、2017年あたりのVTuberブーム以来、界隈ではブームにあやかろうと安易に参入を試みる悪質な運営事業者が出てきたり、中の人が入れ替わって騒動になったり、ワナビーを養分にするインチキ事業者が出てきたりなどなど、様々なトラブルがあった。そんな中、上場までこぎつける会社が出てきたというのは、素直に喜ばしいことだと思っている。もちろん、IPOは上場してからのほうがしんどい(私見)ので、これからが大事なのではあるのだが。

「2017年12月、バーチャルYoutuberはなぜ・どのように流行ったのか?」

ちなみに、Youtubeの色々なランキングが見れるPLAYBOARDによると、2022/5/30~6/5のスパ茶ランキング1位は、初回配信で胃カメラ画像を公開した伝説のスーパールーキーお嬢様「壱百満天原サロメ(ひゃくまんてんばらさろめ)」(2022/5/24デビュー)、2位は「メリッサ・キンレンカ」、3位は「Vox Akuma」とにじさんじ所属のライバーが占めているようだ。このうちVox Akuma氏はEN所属で、英語にて配信を行っている。

ちなみに業績は、直前期である2021年5月期で売上高76億、営業利益14億。当期業績予想では売上高132億、営業利益37億を想定している。(3Q売上高102億、営業利益31億)

ANYCOLORが芸能プロダクションかどうかはさておき(使っている某経済情報ツールがそうカテゴライズしているので)、わりに近めな事業者であると思わるYoutuberマネジメント事務所のUUUMの当期業績予想が売上高225億~245億、営業利益が8億から9.3億という水準と比較しても、現在のところ、かなり利益が取れていると言えそうだ。ちなみに、芸能最大手のエイベックスの営業利益が25.8億程度である。

UUUMとの比較で言うと、2021年5月期のUUUMの売り上げ構成は、総額244億のうち、アドセンスが143億、広告が65億となっている。主要な売上先はもちろんGoogle LLCで144億ほど。一方のANYCOLORは3Qの売上101億のうち、ライブストリーミングが22億、コマース(コンテンツ販売)が47億と、単純に広告で儲けているわけではなさそうな点が異なる。主要販売先でも、直近ではGoogle LLCは24億と2位で、1位は32億を売り上げているSMS(ソニー・ミュージックソリューションズ)となっていて、案外似て非なるものだ。とりあえず、スパチャをかき集めるだけの会社ではなさそう。

うーん。かなり商売上手じゃないとここまではならない気がするなあ。

わからない人には全くわからないだろうが、ソニーは、昨今話題の「サロメ」両方のビジネスに関与するポジションを取れている。さすが総合エンタメ企業ソニー。コンテンツ持ってんな。

みればみるほど、そんなとこにもかんでたの?となるソニーG事業説明会資料。大部分がエンタメ。

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/presen/irday/pdf/2022/presen_J.pdf

■ 世界ではどうなっているか

オレと某経済情報プラットフォームの調べによると、VTuberでビジネスをしている競合他社は、少なくとも欧米圏にはほとんど存在しないようである。VShojoという会社がアメリカにあるぐらいだ。ちなみにVShojoのファウンダーは、昔東京で仕事をしていて、アニメカルチャーに触れたことがあるらしい。

みなが想像するとおり、VTuber的なものは、欧米も含んだいわゆるグローバルで広く受け入れられているものではなく、主に東南アジアでもっぱら楽しまれているものである。この点について、2年程前にRedditで交わされた議論を見てみたが、やはり、アニメキャラ的なものを推す、みたいなことは、まだまだ欧米では馴染みがないことのようだ。一過性のブームになることはあっても、それはミーム的に短期間で消費されるとかなんとか。

そのほかにも、欧米でストリーマーを応援するとなると、twitchでサブスクするみたいなことが主流であって、スパチャで推すみたいなこともあんまりない、みたいなことが言われている。個人的に面白い意見だなと思ったのは、「日本語を喋ってないとなんかホンモノっぽくない」みたいなコメント。実にクールジャパンである。

こういうものが中国で人気なのは言うまでもないが、中国はこういうよくわからないナゾカルチャーはすぐ不健全認定して規制をかけそうな国である。市場がデカいのでもったいなくも思うが、あそこがナゾの規制大国である以上は何があっても不思議じゃない。そう考えると、この分野では当面日本が独走できそうな気配を感じる。

昨今話題のメタバース的な3D空間で人類が活動するようになっていった場合、リアルなタレントに比べて、ヴァーチャル空間への進出においてはVTuberの方が圧倒的に有利だろう。それはもちろん、アニメカルチャー的な3Dモデルを念頭に置いた場合であって、アニメカルチャーがあまり広がっていない地域でも同じことが言えるかどうかはわからないが、少なくとも、現状の延長線上を考えると、東南アジアなどでは受け入れられていくことだろう。

多分ソニーあたりは、クランチロールを伸ばして、グローバルに日本的アニメカルチャーを広げていこうと考えているだろう。生産性がどうとか、老人資本主義とか、オワなことが最近でも多数うわさされる我が国であるが、こういったユニークなカルチャーを今も産み出していて、かつ、それがそれなりのマーケットを作り出しているということを忘れてはいけないだろう。

もちろん、日本のアニメみたいなオタクカルチャー的なものが、海外ではエロ(HENTAI)コンテンツと思われているふしがあって、そこをうまくクリアしていくことは国内以上にうまいことやる必要があるんだろうなとか、そういう問題はまだまだありそう。ただ、やり方を間違えなければ、今までの蓄積がある分、世界をリードできる領域なんだろうなということは思う。

■ (余談)ちなみに、お嬢様RPはひそかにブームになっていたようだ

なろう界隈に明るい人にとっては、10年代からの悪役令嬢ブームみたいなものは馴染みのあったところだろう。そういった流れのある中で、これでもかとばかりの縦ロール(地毛)を誇るスーパールーキーサロメ嬢のヒットは、来るべくして来た感のある現象ではある。

一方、こういった謎のニュースが流れた。

なんでも、下賤の者たちの横暴の後始末に、佐賀のお嬢様が立ち上がったのだという。興味をそそったのは「お嬢様部」なるサークルの存在。調べてみると、結構前から全国の大学で「お嬢様ロールプレイ」を楽しむサークルが設立されていたようだ。

https://ojou.memo.wiki/d/%a4%aa%be%ee%cd%cd%c9%f4%a4%c8%a4%cf

こういうわけのわからないものこそ未来のタネ。

しかし、ロールプレイ・・・それは、古くて新しい・・・メタバース世界でもそれは有効なスキルとなるであろう。思えば、自分も日頃ビジネスマンRPに励んでいるところ。これからの時代はRPを駆使して、複数の自分を演出していく時代なのである。そう考えると、同世代によくいるTRPG経験者とかは、まだまだこれからブレイクするんじゃないか、みたいなことを思うわけである。

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