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商品もさることながら、アメリカってサクセスストーリーもたくさん輸出してるよな、などと思いつつザ・フードをみる

ザ・フード -アメリカ巨大食品メーカー

■19世紀。産業革命により都市化が進行した米国。人々は、素性の知れない食品を食べていた。着色したピクルス、中身がわからない瓶に入った野菜。農村から都市へ人々は移動した。農村暮らしの今までのように、畑から食材を取ってきたり、家畜を食べたりということができない。そして、食品産業は未発達で、まともな食品が手に入るか否かはある意味賭けのような状況。アーバンな食糧難という新機軸に人々は悩まされた。

都市で生活することが当たり前になってしまった現代人にとっては、なかなか想像するのが難しい世界だ。人々はその日その場で売られているものを買って食べるしかない。多少肉が腐ってようが仕方がない。満足な食事を三食摂ろうと思うと、それだけで一日仕事だった。ライフスタイルどころではない。そんな時代。

世の中が大きく変わり、多くの人が不便を感じる時。そこにビジネスチャンスがある。

・ハインツのトマトケチャップ。
・ペンバートン博士の万能薬、コカ・コーラ。
・ケロッグのシリアル。そして、それを盗んだCWポスト。

そういった今や世界中にある商品が誕生した19世紀の後半から物語は始まる。近代的なフードビジネスが生まれた時、と言ってもいいかもしれない。

パート2では、
・ハーシーのミルクチョコレート・・・そしてハーシーの街。
・マース親子のチョコレートバー。

生活必需品ではなく、嗜好品で巨万の富を得た者たちの物語。必需品から豊かさへ、時代は変わっていく。

世界大恐慌を生き残り、第二次世界大戦を経て、アメリカの産業は飛躍的に成長する。

そして、有名な話が続くパート3。

マクドナルト、そしてケンタッキー・フライド・チキン。最終的に人々のライフスタイルを大きく変えたファスト・フードの誕生だ。


■我々が当たり前だと思っている多くの物も生まれた瞬間がある。そして、生み出した人がいる。成功の陰にはチャレンジがあり、圧倒的な努力があり、そして運がある。つまり物語がある。

伝記というものは、要するには成功者のドヤストーリーに違いないのだが、このシリーズはみてみると面白かった。昔、漫画の世界の伝記シリーズなんかは楽しく読んだなあということを久しぶりに思い出す。

この辺の巨大企業のスタートアップの物語については、繰り返し語られてきて、相当に研究されてきたんだろうと思う。

・当時こういうものがなかった。
・こういう問題があった。
・こういう製品、やり方で解決ができた。
(・で、頑張った。)

という骨格の部分が洗練されていて腑に落ちやすい(ウソかマコトかはともかく)。新しいサービスや商売のやり方を考える時のベーシックとして踏まえておくのもいいだろう。経営学みたいなものも、こういう物語のエッセンスをウケがいいようにまとめたものだろうから、もととなった物語を色々と知っておくのはわるくない。世間では相変わらずビジネス本とかも売れているようだし、わかったような感じでビジネスを語ってみせるという昨今のトレンドに、多少のっかってみるのも、時代の空気を感じられていいだろう。

実際に商売の役に立つかどうかはともかく、世界中で愛されてきたうまくいく経営のストーリーを話せることには、意味がないわけではない。民話、童話、神話、そういったものとジャンルとしては似ているような気がする。今も昔も語り部、つまりストーリーのデリバリー業者というのは、それなりに商売になるものである。直接に語り部という肩書で商売をしているわけではないが、自分はわりとそれで食っているところがある。

伝統的な物語と同様に、こういうビジネス伝記にも人間が好みそうなストーリーのパターン、みたいなものが隠れているように思う。ここから直接的に学ぶことがあっても無くても、物語の形式を何となくマスターする事からは多くのものを得ることができるだろう。


■知ってのとおり、昨今では明らかに自分たちの生活を脅かすような不便は、目に見えるところには転がっていない。嗜好品や娯楽も世の中にあふれていて、逆に欲しいものが何かわからない、そういった時代である。

今の時代に、こういったアメリカの起業家物語みたいなものが、今なおどこまで通用するのかはわからない。分析、効率化、テクノロジーの導入。今となってはありきたりなストーリーだ。そういう教科書的なことはみんな知っている。だができない、というのがどこにでもある問題だ。

一歩を踏み出すために、わりと普遍的に有効なのは、グッとくるストーリーだ。もちろん、グッとくる映画とかのほうが、「その気になる率」はグンと高いわけだが、職場では映画的演出はなかなか難しいので、工夫が必要だ。

一番いいのは、当事者に自らのストーリーを発見させることで、それができると、あとは自動化できるので非常に商売が楽になる。が、これは一筋縄ではいかない。ただ一つ言えることは、優れた他人のストーリーを知っている人でないと、自分のストーリーを発見することは難しいということだ。インプットが足りていない人に、おまえは何者かなどと問うても仕方がない。そういう人に対しては、インプットを補ってあげるような語りにニーズがある。

基本的に人は言うことを聞かないので、語りが直接人を行動させることはない。ただ、人はインプットした情報により少なからず影響を受けるものでもある。これは自分自身についても言えることで、グッとくる語りの能力を磨こうと思えば、グッとくる物語を多く摂取するしかない。結局、伝記のよさというのはそういうところなのかもしれない。


■まあ楽しく見れるドキュメンタリードラマである本作だが、ひとつだけ弱点があるとすれば、1パート1時間20分ほどあり、全部みると余裕で4時間ぐらいかかってしまうところだ。

ちなみに、自分は1日で全部みた。

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