ポール・オースター氏の訃報

2024年4月30日。米国の作家、ポール・オースター氏が亡くなられたとのことです。謹んで哀悼の意を表します。

近年でこそキャッチアップできていない部分があるものの、オースター作品は、自分の思春期に傍らにあった。

それは少し屈折したものではあったかもしれない。

古典のイメージが大きい海外文学というジャンルにおいて、現代の米文学を愛好しているみたいな自負。なんの話だかサッパリわからない作品を欠かさず呼んでいるオレ。そんなしょーもないモティベーションであったようにも今となっては思う。

文学を評するに足る十分な言葉を有するほど学がないため、作品について語ることは自分には難しい。とはいえ、なんだかわからないが、またポール・オースターの作品が読みたい。あの世界にもう一度行きたい。自分にとっては、そんな感触を数多く残してくれた作家であった。

ひとつ挙げろと言われると、『ムーン・パレス』を推したい。やはり、貧乏人の指の間をたまごがすり抜けて、床に消えていく絶望感はあそこにしかない(ギャグのようだがギャグではない)。他に印象深かったのは、『ブルックリン・フォリーズ』だろうか。

文学は、読み手の想像力に多くをよる。今読み返すとどう思うのか、それはわからない。ただ、オースター作品は僕の人生の節目節目に現れては、その時々に印象深いイメージを与えてくれた。

事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、普通の人生にも味わい深いシーンは何回も訪れる。それは、映画やドラマのように3幕構成でメッセージがあって、というものではない。人生に偶然に訪れるなんのメッセージかわからない不思議な出来事。そこにも印象深いものがしばしばあって、主人公である自分のおかれた状況によって様々な解釈や教訓として成り立つ。何かそういうことを自分は受け取ったように思う。

様々な作品を通じて僕が考えたことは、いかに馬鹿げて見えたり、教科書的にアウトな人生であっても、そうそう簡単に人の人生を笑ったり、disったりはできないという事であり、人の内面にリスペクトを持とうということだった。取り敢えず今はそう思っている。

残念ながら晩年の作品となってしまった作品の中にはまだ読めていないものがある。これまで僕に人生を鮮やかに見る方法を教えてくれたオースター作品だから、また何か大事なことを教えてくれるのではないか。そんな期待を胸に、遺された作品を読んでみよう(いや、元々読むつもりだったんだよ)などと言う事を思った。

そして、今年のクリスマスも名作『スモーク』を観よう。

さらに言えば、『スモーク』には『ブルー・イン・ザ・フェイス』というこれまた素晴らしい姉妹作がある。その辺のビデオ屋で探してもなかなかなかったが、『ブルー・イン・ザ・フェイス』今やオンデマンドで観られるようになった。

仕事はたまるばかりだが、今日ぐらい観なおしてもバチはあたらないだろう。


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