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おれはいよいよ見えてきたギジロクの電子化に向けてリサーチを開始する

取締役会議事録を脱ハンコせよ

■クラウドサインの記事。総務畑周辺のビジネスパーソンにとって、ガチの議事録作成とハントリというのは、非常に面倒でかつ場合によっては神経を使う作業である。結局、四の五の言わずに気合で押印という運用を行っている会社も多い事だろう。場合によっては、取締役会決議後、直ちに出席者全員が押印した議事録を作成し、提出せよ、などというケースもあったりするのである。新幹線によるハンドキャリーとか言うゴージャスな試みもたまに行われる。

■ちなみに、筆者が遭遇したケースでは、取締役会は電話会議でも良いが特定の日に行って欲しい、そして議事録は全員が押印したものを同日に提出せよ、みたいなナゾの要求をしてくるものもあった。それは代印で良いということですか?と聞くと答えない。要は手続き上、全員の印影が確認できれば、それがいかなる物理を超えたウルトラCになっていようとも、そこは誰も気にしないから余計なことは言わないで欲しい、といったことのようであった。いい加減なものである。

■ちなみに代印というのはあっという間に横行しがちなものであるが、ガチなもめごとになったりすると、取締役会議事録などはラクショーで偽造されるものであるので、重々注意したほうがいい。いくら、おれはそんな決議は知らない、議事録も押印してない、と騒いでみせたところで、第三者からみれば、誰がほんとのことを言っているのかは全然わからない事なのである。さすがに、それが致命傷になることはそんなにたびたびあることではないが、不正調査の現場等でもデジタルフォレンジック的な事をして、ドラフトが○○のPCの中に保存されていたことからすると云々みたいな認定が必要になったりする。事実というのは、必ずあるはずなのだが、後々何が事実であったかを100%明らかにするのは、よくよく考えるとほとんど不可能なことなのだ。

■昨今の脱ハンコの流れの中、2021年2月に商業登記規則が改正され、添付する取締役会議事録の電子署名については、クラウドサインのような、事業者署名型のサービスでもよい、となったようだ。いよいよ、議事録の電子化が実用に耐えうるものになってきたように思われる。当事者署名型とか事業者署名型とかいう電子署名法上の分類みたいなものは以下のとおり。

■これは契約当事者を例として説明がなされているが、本人による押印を代替するような、各自が電子証明書を取得し電子署名を行う、というのは、なんだかんだ言って心理的なハードルが高いものであり、当事者の支持によりサービス事業者が電子署名を行うタイプのものが、昨今のトレンドなのではないかと思う。

■要するに、「本人が署名」し「改ざんできない」ということが確保されていれば良いわけだから、なにも全員が証明書をもっていなくても、サービス事業者が一定の方法で本人確認を行っていればよいだろう、ということである。実際、総務部長が引き出しから認め印を取り出してポンポン押印するよりはよっぽどまっとうだろうと思う。

■特に契約書というのは、最終的に言った言わないの場面になった時に登場するものであるから、最悪裁判沙汰になった時に、いやこの契約書は普通に考えて本物だよね、ということが判定できるレベルであればいいともいえる。そういう意味では、登記に用いるような厳格な運用が必要となる議事録ではない、決裁書類に毛の生えたような議事録とかは、もとよりクラウドサイン的なもので実際のところ問題なかった、ということだろう。

■ちなみに、ほとんどの人は興味がないかも知れないが、電子署名というのはこういう仕組みになっている。

界隈の人は、自分ではなんもしないくせに、押印をめんどくさがる役員が、突然電子化できないのか、みたいなことを言いだしたりするケースに遭遇することもままあるだろう。そういう場合に、仕組みをサラッと説明できると、こいつわかってやがる、となり余計な仕事が舞い込んでくることうけあいである。

■紙であろうが偽造や改ざんというのは避けられない問題なので、なんとなく第三者のサーバーにデータが残ったりするのは、それはそれでよさそうだな、という気もしなくもない。導入に際して気になる点は、そのうちいい加減な電子署名サービスみたいな会社が破綻したりして、何が何だかわからなくなったり、ウッカリウェブで色んな会社のやつが見れるようになってました、みたいなことが一回ぐらいはありそう、っていうのと、まあ、案外抵抗感があるのはバックデートができない、ということだろうな。とはいえ、ワークフロー的なものも導入されがちな昨今、いざという時にバックデートできないのは不安だ、みたいなオールドビジネスパーソンも徐々に絶滅していくのかも知れない。というか、上場会社とかは、そういうの防止するために、なんらか電子的に管理させたほうがいいんじゃないかという気もしなくもないね。

■話は変わるが、議事録をサラッと作成しコンプリートするという仕事は、あまり知られていないが担当者の力量が如実にでる難易度の高い仕事で、議事録がちゃんと作れるというだけで、案外仕事になったりするので侮れないものである。

■そもそも、必要十分でかつ議事録としてそれなりに見れる格を備えた文章を作成するというのもできない人は100年経ってもできない。ましてや、社外取などが増え、なんか議事録にコメントを残してほしいみたいなことを言われると、良い感じに要約して書いてあげないといけなかったりするし、会社によってはデフォで発言の要旨が入るパターンなどもあり、議事録を仕上げるのにテープ起こしみたいな作業が必要となる場合もある。要は、会議で盛り上がった話題などをちゃんと覚えておき、ここを書いておかないといけないな、といった勘所がわかってないと、全然ダメな議事録が出来上がるわけで、ビジネス上の常識やトレンドに精通しており、話されている内容のポイントが把握できないと、大変難しい作業となるわけである。しかも、議事録というものは思わぬところで第三者の目にさらされたりもしてしまうので、無用なトラブルが発生しないように、という、おとな力もときどきは必要となる。

■取締役会のようにある程度フォーマットがあるものはまだいいが、ガチの経営会議的なものの議事録とかは、ほんきで有用なものを作ろうとすると、相当な力量が必要となる。例えば、会議に参加していない人にも議事録を公開するとかそういったケースである。将来的に、管理畑で上を目指そうみたいな野望を持っている人は、そういうことも意識して、自分なりのいい議事録みたいなイメージを形作りながら、色んな会議録とか面談録とかを見てみると良いんじゃないかなと思う。


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