実際に異世界転生したらクッソめんどくさい件

おれは今滅茶苦茶な絵を描いている。
それを子供達に見せる

「ンナームニェ」「ンナーム」「ヲペフトコロムナーム」「ナ」

目星はついた。もう一枚描いて見せる、抽象的な、ピカソっぽいなんか

「アンヤウェー…」「ンナーヴェ」「アンテャ、アンナーム」

「ンナーム?」

子供の一人が不思議そうに絵を指さし、おれの顔を見た。確信した

「うん、イッツピカソ」

「イッピカート?」「ビカーツォ?」「ヤーンナームイペカソ?」

わかった。まずは一歩。ココの言葉で「コレは何だ?」は「ンナーム」という。ああ、マジで疲れた。だが、この一言さえわかれば何でも聞ける。聞いて、覚えて、使える。

「ジャパニーズ、オマモリ、OK?」絵を子供に渡し、立ち上がる

「ジャポーミ?」「ンナ?」「バカ」

馬鹿って言ったか今?いや、多分罵倒ではないだろうが、とりあえずこの村で「水」と食えそうなもの片っ端から「ンナーム?(これ何?)」って聞いて回る。希望が見えてきた。


二度も死なずに済みそうだ。


そう、おれは一度死んでいる。おれは日本で死んで、物理法則がよく分からないこの世界に来た。ココが黄泉の国かと思ったがどうやら全く違うらしい。この世界でも人は生き、死ぬ。ドラゴンめいた生物が空を飛び、クッソデカい月が上り、見た事ない化け物が襲ってきて、それを見たこともない剣さばきと魔術的ななんかで細切れにする輩がいる

異世界転生。見ると聞くとじゃ大違いだ。まず言葉が通じない。冷静に考えればそりゃそうか、しかし不便極る

「あのぉスミマセェン、ちょっといいですか」日向ぼっこをする老紳士に話しかけた。さっきまで片言英語を何故か使っていたおれだが、地球言語は何も通じないだろうとぼんやり気づき、開き直っての日本語である

目を開けて眠そうにこちらを見る老紳士、おれは村の中を流れる沢を指して言う

「ンナーム?」

「…………ビレッコ。」老紳士は答えてくれた

それは沢、水、沢の固有名詞いずれか


【続く】

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