#382 飲食店「よくある人間関係トラブル」
突然ですが、飲食店で働く皆さん、こんな経験はありませんか?「あのホールスタッフ、キッチンのことなんて何も分かってないくせに指示ばかりしやがって!」と感じたことがあるなら、今回の記事はまさにあなたのためのものです。僕も以前、同じような悩みを抱えていました。今回は、よくある人間関係のトラブルとその解消法について一緒に考えてみましょう。
#人間関係
お店の人間関係の悩み
「お店の人間関係が悪い」ということは、多くの飲食店経営者や店長が抱える悩みです。スタッフの人間関係が悪化すると、店内の雰囲気やサービスの質に悪影響を及ぼし、結果的に売上を大きく下げることにもなります。ある調査によれば、飲食業界の離職率は他業界に比べて30%も高いとされています。複数のスタッフが同時に辞めてしまうことも珍しくありません。こうした問題に対処するため、今回は飲食店でよくある人間関係のトラブル事例を紹介しながら、具体的な対策をお話しします。
#飲食店は離職率が高い
よくある対立の構図
多くの飲食店が抱える悩みとして、「新人とベテラン」「アルバイトと正社員」「営業本部と現場の店舗」など、スタッフが2グループに分かれて対立するという問題があります。個々に接すれば素直で優秀なスタッフが、なぜ対立してしまうのでしょうか。
#飲食店あるある
対立の背景
僕たちの周りには、「新しいアイデアを持ち込む若手」と「経験に基づく従来の方法を守るベテラン」など、さまざまな対立の構図が見られます。しかし客観的に見た場合、どちらかの意見が一方的に正しい、もしくは間違っているといったケースはほとんどありません。つまり対立を引き起こす要因は、単なる立ち位置の違いに過ぎないのです。
#立ち位置の違い
ロバーズ・ケイブ実験の教訓
アメリカの社会心理学者ムザファー・シェリフ氏を中心に行われた「ロバーズ・ケイブ実験」においても、同様の結論に至っています。この実験は、年齢や性別、家族構成、生活環境までよく似た小学生たちが、サマーキャンプを通じてどのような人間関係を築くのかを観察したものです。参加した22人の小学生を2つのグループに分け、まずは各グループで過ごさせました。そしてこの段階では、子どもたちに別のグループの存在は知らされていません。
その後、第二段階として別のグループの存在を伝え、野球やゲームなどで競わせます。すると2つのグループは、お互いのテントを荒らす、残飯を投げ合う、そして最終的にはスタッフが介入するほどの大乱闘を起こすなど、激しく対立しました。多くの類似点を持つ子どもたちを集めたわけですから、両者の違いは単に「別のグループ」という立ち位置だけです。そう考えると、相手を敵として認識してしまう原因は、自分たちが築いてきたチームの存在を脅かすのではないかという「恐れ」だと考えられます。
#恐れからくる批判
リーダーの役割
対立の背景にあるものが「立ち位置の違い」と「自身の環境を守りたい」という感情だとすれば、リーダーにできることはひとつしかありません。それは、両者の立ち位置を近づけることです。
実は、先ほどご紹介した「ロバーズ・ケイブ実験」には続きがあります。大乱闘を起こすほど激しく対立した2つのグループですが、キャンプ場の給水が止まったり、買い出しに行くトラックのエンジンが動かなかったりするなど、「お互いが協力せざるを得ない状況」を意図的に作ったところ、全員で協力するようになったそうです。最終的には、グループの枠を超えた個人的に良好な関係も見られたというから驚きです。
では、この状況を飲食店に当てはめるとどうなるでしょうか。例えば、仕込みが追いつかないときにホールスタッフが簡単な仕事を手伝ったり、ホールの準備が間に合わないときにキッチンスタッフがフォローしたりといったことが考えられます。これは簡単ではないかもしれません。ですが、僕たちリーダーがホールとキッチンの仕事、早番と遅番の作業を分け隔てなくフォローすることはできます。
実際の対策例
実際に、ホールの責任者がキッチンの仕込みを毎日手伝うことでホールとキッチンの対立が解消され、30名以上のスタッフがまとまり売上記録を更新したという例もあります。または、おすすめメニューの販売数を店舗共通の目標とし、全員で協力してゲーム感覚で売り切るといった方法も考えられます。対立を解消するきっかけを与え、そもそも対立の起こらない仕組みを作るのは、やはりリーダーの仕事だと思います。
#リーダーの覚悟
リーダー的スタッフとの確執
飲食店に限った話ではありませんが、年齢やキャリア、職歴などにより、リーダーよりも強い影響力を持つスタッフが存在することがあります。これもよくあるトラブルの要因です。
目の上のたんこぶの存在
例えば新人店長の場合、着任したお店で作業手順や方法を変えようとしても、「今までこうしてきたから」と古株のスタッフに反発されて変えられない、もしくは年上の料理長が自分の指示を素直に聞いてくれない、といったケースもあります。こうしたことが起こるのは多くの場合、前任の店長が大きな影響力を持っていたり、逆に頼りない店長だったために実質的なリーダーが別にできてしまったり、という背景があるためです。「店を動かしてきたのは自分たちだから、あれこれ指示されたくない」という気持ちもあると思います。
たんこぶを右腕に変える方法
では、どうすれば実質的にリーダーのようなスタッフを、自分を支えてくれる存在にできるのでしょうか。視点を変えると、そのヒントが見えてきます。このような人は、立場上のリーダーを「年下なのに」「大した経験もないのに」「お店のことを何も知らないのに」などと考えています。要するに、相手が劣っていることを理由にリーダーの存在を軽視しているわけです。また、「お店を作ってきたのは自分だ」という自負もあるのだと思います。
そこで、立場上のリーダーが劣っている点ではなく、実質的なリーダーが勝っている点に焦点を当てるとどうなるでしょうか。立場上のリーダーに反発する裏には、「自分のことを認めてもらえるだろうか」という不安な気持ちが隠れていると言えます。ですので、立場上のリーダーに頼られればそうした不安もなくなるはずです。
良好な人間関係の維持
人間は変化を嫌う生き物ですが、本来嫌うのは外部から受ける変化であり、自ら望んだ変化は「成長」や「進歩」と捉えるもの。リーダーから頼られることは、自分の存在の価値を認められるという意味を持ちます。相手を認めて頼ることで、結果的に強力な右腕を得られるのです。
アルバイトが多く、スタッフの入れ替わりも多い飲食店にとって、良好な人間関係の維持は簡単ではありません。しかし相手の視点で問題を考えれば、答えは見つかるでしょう。多くの場合、スタッフの対立を生み出すのは「立ち位置の違い」です。そのことを理解すれば、それぞれの立ち位置を近づけることで解決できると言えます。目の上のたんこぶのようなスタッフも、相手の優れた点を認めて頼ることで、右腕に変えることができるでしょう。「こうしてほしい」と望むのではなく、「なぜそうなるのか」を相手の視点で考える。問題解決のヒントは、そこにあるのではないでしょうか。
#相手の視点で考える
結論
飲食店における人間関係のトラブルは避けられないものですが、適切な対策とリーダーシップで乗り越えることができます。対立の背景にある「立ち位置の違い」や「自身の環境を守りたい」という感情を理解し、相手の視点で問題を考えることで、対立を解消し、良好な人間関係を築くことができます。最終的には、相手を頼り、共通の目標を持つことで、チーム全体が一丸となって働くことができるのです。飲食店のリーダーとして、ぜひこの記事の内容を参考にして、より良い職場環境を作り上げてください。
#飲食店の未来
まとめ
人間関係のトラブルを避けることはできませんが、相手への理解と対話をする努力で解消できます。具体的な対策と共に、リーダーシップを発揮することが求められます。相手を理解し、対話する姿勢を持つことで、飲食店のスタッフは一丸となり、より良いサービスを提供できると思います。具体的なアクションプランとして、以下の点を実践してみてください。
①コミュニケーションの強化
定期的なミーティングを設け、スタッフ間で意見交換を行い、互いの立場を理解し合うことで、対立を未然に防ぐ。
②役割の透明化
各スタッフの役割と責任を明確にし、チーム全体の目標を共有する。役割分担が明確になることで、誤解や摩擦を減らすことができます。
③協力の促進
仕込みや準備など、特定の状況で互いに協力する機会を増やしましょう。共通の目標に向かって協力することで、チームの結束力が高まります。
④フィードバックの活用
リーダーは定期的なフィードバックを行い、スタッフの成長をサポートしましょう。
フィードバックを通じて、各スタッフの努力や成果を認め合うことが大切です。
⑤リーダーシップの発揮
リーダーとして、自らが模範を示し、スタッフをサポートしましょう。
リーダーシップを発揮することで、チーム全体の信頼を築くことができます。
この記事を参考に、皆さんの職場でも実践してみてください。対立を解消し、より良い職場環境を作るための具体的なアクションプランを実行することで、飲食店のスタッフ全員が一丸となり、質の高いサービスを提供できるようになります。皆さんの飲食店がより良い職場になることを願っています。
#2024夏
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