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iPhoneのゲームは安普請。第二世代まではそんな謂われもありました。「Vay 流星の鎧」(移植版)。

「セガなんてダッセーよな!」と自虐に走る前、セガサターンまでのセガは最高潮に輝いていた、と人は言う。
北米市場で大成功を収めたセガが1991年に日本で最初にリリースしたのが、CD-ROM技術を任天堂に先駆けて取り入れたメガドライブCDだ。

追加のメモリや処理能力、CD音楽やフルモーションビデオなどのマルチメディア機能によって、より複雑なゲームやリッチなストーリーテリングが可能になったメガCD。"Sonic CD"、"Lunar: The Silver Star"、"Snatcher"などファースト、セカンド、サードパーティ問わず、多種多様な名作が世に送り出されることとなった。

参入のハードルが下がった分「名作と同じ数だけクソゲーが存在する」玉石混交のソフトが大量に送り出された後発のプレイステーションやセガサターンと違って、メガドライブCDは百戦錬磨のゲーム会社が送り出すクオリティの高いソフトばかりを集め少数精鋭、クソゲーなるものは存在しなかった!

という神話があるはずもなく。
今回紹介する「Vay 流星の鎧」はクソゲー、と言わずとも凡ゲーすれすれの代物。1993年10月22日シムスが開発・販売したRPGである、という文言以外、情報がネットにもほぼ出回っていない代物。
なぜか2008年に、謎の会社SoMoGaがiPhone用に移植してリリースしているのだ、これが。

さて、元の販売元のシムス。セガとサンリツ電機の共同出資の子会社として1991年に創立され、かのテトリス(メガドライブ版)を開発するなど、セガのセカンドパーティを長らく務めた名門。

ドリームキャストの時代も釣りゲー「ゲットバス」を開発するなどしぶとく活動を続けていたようだが、セガの凋落に巻き込まれ、2004年にセガ母体から切り離された後はロクにゲームを作っておらず、現在は派遣業を主体とした事業に転換している(!?)不穏さ。
会社概要を置いておく。ツッコミはご自由に。

方や、販売元のSoMoGa,Inc.なる企業、現在は「LUNA ザ・シルバースター」のIPhone移植版を全世界で販売する権利を握っているようで。海外とはいえあまりに簡易すぎる公式サイトの作りが、その実体の胡散臭さに、拍車をかけている。

前置きが長くなった。一通りプレイした感想としては

  • 機器の性能でもごまかせない、低品質なアニメ作画。

  • レベルを上げて物理で殴ればよい戦闘バランス。

  • 装備品は高価なものへと単純に買い替えていけばよい味気無さ。

  • 感情移入させる間もないまま、コロコロ入れ替わる仲間パーティ

  • SFなのかファンタジーなのかはっきりしないのに既視感バリバリな世界観

  • クライマックス、主人公は当時すでに賞味期限切れ気味だった鎧もの:要はサムライトルーパーなダッサい鎧を着込んでラスボス戦。

  • (移植版独自の問題)iPhoneの第2世代機のゲーム故仕方ないが、現行機種に合わせたアップデートもあるはずがなく。UIが剥き出しでフォントが間抜けでカッコ悪い。

と、資金と製作期間をそれなりにかけただけの、これと言って特徴がない、冒険もしない、薄味で凡庸なJRPGだったと言っておこう。これぞメガCDの醍醐味!というべき、迫茂樹の手掛けた高品質でノリの良い音楽をカンフル剤に、なんとか最後までプレイできた、と言っておこう。

ほとんど情報がない&既に配信停止したゲームゆえ、証人としてキャプチャだけ置いておく。

安易なレトロゲー信仰を粉砕する、福本伸行よろしく突き刺さりそうなアゴで作画される主人公
ファミコンレベルの短い&文節間にスペースが入る、テキストが味わい深い。
特に何の感慨もなく誕生する「りゅう」。
なお二拠点間を結ぶだけで役目を終える、トンズラブラザーズ未満の存在でしかない模様。
一辺倒にファンタジーかと思っていたら、地の底の研究所?で目覚めるアルキテクトン。
「MOTHER」のイブですね。本当にありがとうございました。
このままずっと行きずりかな…と思っていた2番目に加入するエルフは、あっけなく死亡。
ステータスや装備品が後続の仲間に引き継がれる、プレイヤーに優しい仕様など、この中途半端な出来のJRPGには存在しない。経験値はともかく、投資したお金を返せ!と叫びたくなる瞬間。
ちなみに死ぬのは、ラピュタよろしく天空島が浮上したはずみ。
モーションすら地味で味気なさすぎる戦闘画面。
3番目に仲間になる女戦士レイファンのふとももの描画だけは高評価。元カレと再会した途端パーティを一方的に離脱しやがる経験値泥棒だけど。
このレイファン、見た目の通り盾役なので、彼女が離脱した瞬間、突然強くなる敵の前に、他3人は攻守で苦戦を強いられる。レイファンへの恨みがさらに募る瞬間。
LV53でHPが999に達する主人公。肝心の調整すらうまく行われていないのでは?と思わされる瞬間であった。

まとめ。
すでに配信はされておらず、メガドライブミニ3に移植も絶望的な本作。いまプレイするなら中古を手にするしかない。そんな奇特な人がこの世に何人いるか、という話ではあるが。

とはいえ、5873円で楽しむゲームではないが、450円(配信当時価格)なら相応の暇つぶしにはなった、とフォローにならないフォローだけは、しておこう。

(C)2008 SoMoGa, Inc. 1993 SIMS Co. Ltd.

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