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映画「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」…ディーバ、歌ある限り。

ここに2分間のクリップがある。

フランスで最も愛される歌手であり、国民的象徴でもある
シャンソンの女王、エディット・ピアフ。
感傷的で、弱々しく、しかしそれ以上に力強いうたごえ。
二度の世界大戦を生き抜いた彼女の顔には、深い皺が刻まれている。
さまざまな辛苦を経て、歳を経て、おばあちゃんになっても、
彼女はステージに立ち続けた。

強いひと。
その偉大な生涯の物語を描くのが、本作だ。

米仏で現在も絶賛活躍中のマリオン・コティヤールが、
堂々たる佇まいでピアフを演じる。全身全霊込めて演じた価値がある。

※以下、あらすじの紹介となります。

1915年、第1次大戦中の貧しい家庭に生まれ、祖母の娼館に預けられて育ったピアフは、路上で歌って日銭を稼いでいたところを見出され、プロデビュー。
瞬く間に人気歌手へと成長する。
そして絶えず悩み苦しみつつも、激動の時代を命ある限り生き抜くこととなる。

どのシーンも、どの時代も、激烈なのだが、
中でも印象的なのは、ただひとり愛した男:マルセル・セルダン(ジャンピエール・マルタンス)との逢瀬であろう。

47年、ピアフは滞在先のニューヨークで、プロボクサーの彼と出会う。
マルセルがピアフとのデートに選んだのは、
ピアフが馴染みのゴージャスなレストランではなく
カウンターでサンドイッチを食べるような庶民的な店だった。
食事中、彼は自分に妻がいることをぽろっと漏らしてしまう。
自分を飾らず、正直なところ。
それが、ピアフの心を引きつける。

彼は翌年、ミドル級の世界チャンピオンになり、
シャンソンの女王との恋は華やかな話題になる。
マルセルに妻子はあったが、それも大きな問題ではなかった。
歌手とボクサー。
共に貧しい生い立ちから這い上がってきた二人は、
手を携えて、世界を手中に収めることとなる。

その幸福の絶頂もわずか1年足らず。1949年にマルセルは逝くと共に終わる。
知らせを聞いて、ピアフに慟哭としか表現のしようのない激情が迸る。
ここに「愛の讃歌」が覆いかぶさる、
ふだんピアフが化粧の裏に隠している凄まじい情念が、噴出する。

恋の破れ。
それでも、
最愛の人を失ってもなお、彼女はステージに立ち続ける。
投げやりになることなく、我が道を往く。
幕は上がる、彼女は唄とともに生きる。
「歌ある限り」
それを讃えるかのように、ラスト、「愛の讃歌」が響き渡る。


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