"機関銃を止めずにはいられなかったんだ。だから俺はやり遂げた。"_Sergeant York(1941)
実在の第一次大戦中の英雄の伝記映画である「ヨーク軍曹」より。
テネシーの田舎町に生まれた無頼漢 ヨーク(ゲーリー・クーパー)は、ある時、信仰に目覚め、改心する。やがて、戦争が始まり、戦争と宗教の矛盾に苦悩するも、真の自由を守るために銃を取る。
皆さんお分かりの通り:「ハクソー・リッジ」とやってることは同じである。シモ・ヘイへよろしく、一歩間違えればマンガの世界から出てきたような活躍ぶりを見せる一兵卒を、ハワード・ホークス監督はどう描いたか。
ヨークは農夫として育ち、若い頃は教育を受けずに働いていた。だから舌っ足らずにしゃべる。「真昼の決闘」のしかめっつらではなく生真面目さを持った、ほのぼのとして素朴な大男を演じるクーパー。
そして、ガンマンや保安官の姿もよいが、農夫姿もかっちり似合う二枚目ゲーリー・クーパー。例によって周囲との軋轢ほかさまざまな苦難にぶつかりつつも、開墾に精を出す我らがヨーク。
第一次世界大戦が勃発した際、彼はアメリカ陸軍に志願する。彼の農業のスキルと射撃の才能は、軍で役立つことが判明する。ぶら下げられた的を正確に撃ち抜く雄姿を、ホークスは快活なモンタージュで演出する。
ここまで本編の2/3が終了。残るが戦場である。
1918年の10月8日、ヨークはフランスのアルゴンヌの森でドイツ軍との戦闘に参加する。雨あられのように大砲の弾が降り注ぎ、機関銃の弾が襲い掛かる中で、ヨークはいてもたってもいられず、彼はわずか7人の仲間と共に敵陣に突入し、(史実によれば)32人のドイツ兵を殺傷し、132人を捕虜にすることに成功する。
この勇敢な行動により、彼は名誉勲章を受章し、アメリカ国内外で英雄として称えられる。「どうして勇気を出せたのか」人に問われて彼が答えたのは:
1941年、第二次世界大戦突入前の国威発揚真っただ中のアメリカだからこそ製作できた「戦場の英雄が、故郷に錦を飾る」物語。そして、じっさい、ヨーク本人も、第二次世界大戦の勃発時に軍に復帰しようと試んだのだ。
ホークスはこの物語をひたすらアゲアゲしてみせる。他の作品なら泥・水・糞にまみれて時にダラダラと悲惨に描写される西部戦線の塹壕戦も、彼の手にかかれば勇猛果敢でテキパキした活劇調だ。間違ってもメル・ギブソンのように、中途半端なリアリズムで描こうとしない。
それまで賞レースと無縁だったゲーリー・クーパーが本作の好演で、悲願のアカデミー主演男優賞を受賞したのも知られる話。
第一次世界大戦の一つの描写の切り口として、あるいは少なくとも、戦闘シーンの鮮烈さにおいて、記憶されるべき作品であろう。
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