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(4日目)真っ白な気持ちでビートルズのアルバムを1日1枚づつ聞いた感想

4日目は「ビートルズ・フォー・セール」(1964年12月4日)。
キミらもう十分売れてるんちゃうの?と思いますが、前回も言いましたがもちろん逆説的な意味だと思います。
ビートルズのイメージを作ったワイワイする映画の後で地味な印象(あくまでも私見です)がある4枚目アルバムですが、選曲、楽器編成、歌、コーラス、色んな意味でちょうどいいバランスだと私は思いました。ジャケ写も珍しい1枚撮りの4S。デザインレスでプレーン勝負。「今僕たち世界的に『FOR SALE』って感じなんだけど、こんな連中です」とか問いかけてきそうな若さと陰を感じさせる表情。

発売された1964年はビートルズがアメリカ進出し、お馴染み『エド・サリヴァン・ショー』に出演。アメリカでのツアーを2回もやってます。この辺りの話は2016年に公開された記録映画『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』で見れます(真っ白な気持ちと言いながら)。

なのでこのアルバムはツアーしながら最も多忙な時期に作られているはずですが、No1ポップグループの使命である「ツラくて退屈な日常の憂さ晴らし」を果たしつつ、聞くものを別世界へ連れてってくれます。

A面1曲目「ノー・リプライ」。2分ちょっとの曲の間、「このコーラスの感情の揺さぶりはなんだろう」と思っているうちに終わる。
A面4曲目チャック・ベリーの「ロック・アンド・ロール・ミュージック」チャック・ベリーのグルーヴを正確に再現しながらジョン・レノンの洗練が入っている。
A面6曲目に「ミスター・ムーンライト」があります。
50年後の今聞いてもエモーショナルなジョン・レノンの声。同時代の同世代は人生変えるくらい魂揺さぶられたに違いないです。
「ビートルズ・フォー・セール」はカバー曲も多くて、どれも楽しんで歌っているような気がします。
昔の私は「カバーはアーティストのおオリジナリティが感じられないから損した気分」とか思ってましたが、チューンナップというか、温故知新というか、名曲に新しいキャラクターが加わるのはイイもんだと思えるくらい大人になりました。ビートルズくらい売れると、原曲よりも有名になってビートルズの曲になって残りますね。

B面1曲目おまたせしました「エイト・デイズ・ア・ウィーク」です。当時皆が待っていたビートルズの正常進化曲。ご機嫌メロディと哀愁のコーラス。ジョン24才、ポール22才、本当にスゴイ。

余談ですが五月みどり『一週間に十日来い』は、ビートルズのこの曲にインスパイアされてお座敷小唄に大胆アレンジしたものだと思ってましたが、今回調べると「エイト・デイズ・ア・ウィーク」の2年前1962年の発売でした。

B面5曲目「パーティーはそのままに」はまんまカントリー。ビートルズアメリカ中西部の音楽的影響深い。

そしてB面6曲目「ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」。ドンドドンタタのドラムから始まるシンプルな曲ですが、今回聞いてみて本アルバムで私のベストソングだと思いました。ポール・マッカートニーの破裂音の発声と上がり下がりはたまらないです。コーラスもなくビートルズ<ポール・マッカートニー感のする曲です。
私はポール・マッカートニー、『ビートルズの優等生で作曲も歌も演奏も神に祝福された出来杉君』と思ってました。
ビートルズやポールの曲を買うということは、評価の定まったもの、車でいうとTOYOTAやベンツを買うようなもので「自分の価値観を他人に委ねてスポイルするようなこと」と思っていたフシがあります。
特に後期ビートルズのポールのメガヒット曲は美しいメロディが完璧な構成で展開するので、聞き手は圧倒されて「謹んで承る」しかないと思って、集中して聞かないようにしていました。
今なら言える、それは人生の無駄な遠回りだったと。

今回、1日1枚聞き続けるルールを自分に課したことで、少しポール・マッカートニーの趣向とその成長過程に触れられたような気がします。この「ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」は聞き手を押しまくるような圧倒感はなく、聞き終えた後に、忘れられない一枚の絵のような不安感を残します。

(つづく)


こういうのも書いてます。軽い食感で胃に負担のないデザートにピッタリのキャラミスです。


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