見出し画像

クイーン グレイテスト・ヒッツVol.2にまつわる話

保管スペースと管理に困って所有していたLPを10年前の引越しの時にほぼすべて手放したのですが、ほんの数枚だけ残しています。そのうちの1枚が1991年リリースのクイーン「GREATEST HITS II」(日本では「グレイテスト・ヒッツVol.2」というタイトル)で、フレディ存命中にリリースされた最後のアルバムです。

収録されている曲のアルバム毎の内訳は、
Hot Space - 1
The Works - 4
A Kind of Magic - 4
The Miracle - 4
Innuendo - 4
となっていて、1981年リリースのグレイテスト・ヒッツが1st~Flash Gordonまでの9枚からの選曲に対し、今作はアルバム5枚からの選曲なので1アルバムあたりの曲数がぐっと増えています。
余談ですが、Hot Spaceからの選曲は「Under Pressure」で、この曲は1981年の発売当時の日本盤とUS盤のグレイテスト・ヒッツに収録されていました。その時はベスト盤によくある未発表の新曲という位置づけだったと思いますが、この曲は後でHot Spaceに収録されます。国によって選曲が異なったこのベストアルバムは後に統一され、この曲は削除されています。

このアルバムの発売をリアルタイムで体験した人は、リリース時期を不思議に感じなかったのだろうかとずっと思っていました。同年の1月(UKは2月)に「イニュエンドウ」をリリースしたばかりで1年も経っていないのに、そのシングル曲までを収録したような内容で、なんでそんなに急いでベストアルバムを出し、ここまでをまとめようとするのだろうとちょっと違和感がありました。UK盤は1991年10月28日ですが、日本盤のリリースは11月6日でした。

そして同月の11月23日(日本時間の11月24日)、フレディ・マーキュリーが突然エイズであることを公表します。フレディはその翌日に他界しました。偶然にしては出来すぎのタイミングでリリースされていたこのアルバムは、フレディ追悼の意味も込められて非常に売れました。

そして我が家。当時姉妹で暮らしていて、音楽の趣味もほぼ同じだったのですが、アルバムは一家に1枚あればいいと考えるほうだったので、アーティストを分担制にしていました。当時のクイーン担当は姉でした。最初に発掘した人の担当みたいな感じだったと思います。しかしこのCDとLP(とLD)を持っているのは私です。収録曲をすべてアルバムで持っているから、それを集めたベスト盤を買う必要はないと考えた姉が手を出さなかったのかもしれません。やがて私が購入することになるのですが、それはフレディの訃報の影響でした。

訃報がきっかけで音楽メディアが爆発的に売れることはよくあります。クイーンもそうだろうとすぐに考えました。市場からクイーンのCDが消える前に、いまCDで持っていないアルバムを集めようと動きまわりました。このアルバムもその一つ。分担という見えない制限に遠慮しないで欲しい人が買えばいいという気持ちになったのもここからでした。結局は全部1人で買えるお金もなく、姉妹総出での対応に(苦笑)。そして思ったとおり、ショップの在庫は売り切れ続出で、クイーンのアルバムが手に入りにくい状態になりました。

1991年モノ。年季が入ってます

フレディの健康状態など公式に報道されていない頃のリリースのため、帯には悲観的な言葉が一切なく、このバンドにはまだ未来があったことを思わずにはいられません。

リリース時期をへんに勘ぐってしまいましたが、その当時クイーンの身辺に何かあったのではないかと感じさせるような事が続いていたせいでしょう。帯に書いてあったようにはじめから20周年記念として予定されてものだったのだと思います。
今回の記事のために過去のクイーンの記事(雑誌の切り抜き)を見直していたら、ML誌1992年2月号のフレディ年表に何気なく「1990年11月、『イニュエンドウ』が完成。そのため、この年の末に予定されていた『グレイテスト・ヒッツVol.2』の発売が見送られる」と書いてあったことに今更気が付きました。え、それホント?そっちのがよっぽど違和感あるんですけど、もしそれだったらイニュエンドウの4曲分、他に何を入れていたんだろう。


LPに話を戻します。

GREATEST HITS IIのLPは1991年当時に購入したものです。私がこのLPを購入したのは、LPという物自体をみかける機会が減っていたための危機感というか、今手に入れておかないと二度と手に入らなくなりそうな予感がしたからだと思います。
この頃/1991年は新譜のリリースといえばもうLPよりCDが当たり前だったからなのか、このLPは日本で製造されませんでした。1986年の「ライヴ・マジック」まではLPがありました。しかし活動再開後の「ザ・ミラクル」や「イニュエンドウ」も日本盤のLPは製造されていません。偶然といえば偶然ですが、彼らの活動休止時期とほぼ同時期にCDとLPの売上枚数が逆転し、時代はCD優勢になっていました。もしかすると(東芝EMIが)国内盤のLP製造を止めていた可能性がありますが、この時代のアルバムをLPで欲しければ輸入盤に頼らざるを得ない状況でした。

とはいえ事情も変わり、今は中古品や再発盤も出回っているので、割と入手しやすいアルバムでしょう。現在はベストアルバムが多数リリースされており、「ボヘミアン・ラプソディ」など70年代の代表曲が入っていないこのアルバムを手に取る人はどれくらいいるのでしょう。

最近よく聞く、盤に刻まれたマトリックスでリリース時期やリリースされた場所がわかるという話がなんとなく気になって、まずはこのアルバムの情報をDiscogsで見てみました。意外とバージョンが多いんですね。見ているうちに別の部分が気になってしまいました。
私が持っているのはPARLOPHONE(UK盤)で以下のような表示なのですが、

Formatに「2 x Vinyl, LP, Compilation, Limited Edition, Gold Embossed Gatefold」の太字の仕様が入っているものとないものがあったんです。Gold Embossed、つまりゴールドの部分にエンボス加工がしてあるGatefold=見開きのスリーブが限定盤。自分ちにあるやつもロゴや文字がゴールドで、触ってみると凹凸を感じるので、CDのブックレットみたいな平坦な印刷とは違うのですが、そもそも自分が持っている以外にこのLPを見たことがないから普通の仕様がこれなのかもよくわからない。でもエンボスっぽくはないし。

ネットに記載されている写真を片っ端から確認しましたが、写真ではわかりづらいのでしょう、エンボスとそうじゃないジャケットの違いがよくわからない。やっぱりそのマトリックスとかいうやつで判別するしかないのだろうかと気になって、久しぶりにレコードを取り出してみたんです。

これは2枚組の1枚目のA面
PMTV 21 A-3-1-1- Dと読み取れます
(Dは見えない所に刻印されています)

4面分あるのですべて確認しました。実は私が持っているのと全く同じマトリックスのレコードで構成されているバージョンはDiscogsには登録されていませんでしたが、近い番号のものはLimited Editonではありませんでした。そしてeBayだったかに登録されている画像で、エンボスジャケットらしき立体感のあるのを発見し、違いをようやく理解するのでした。限定盤は10000枚の製造だったようですね。

せっかくなのでショップでも現物のLPジャケットを確認しようと思い、LPの在庫があったタワーレコード渋谷店に15日の仕事終わりに見に行きました。再発盤なのでVirgin EMIになっていましたが、ジャケットの仕様は自分のと全く同じでした。やっぱりこれかと思いました(笑)。紙ジャケ仕様の限定CDがエンボスデザインを再現しているみたいです。

ちなみにGREATEST HITS IIのLPレコードは、2018年から月刊で発売されたデアゴスティーニ「クイーン・LPレコード・コレクション」でようやく日本盤がリリースされました。このシリーズ、私は最初に発売されたこの1枚だけを所有しています。(保管場所的に無理ですし、レコードプレーヤーがそもそもないし、ということで流行りには乗ったけど集めませんでした。)180g重量盤って音がいいんでしょうか、多分私の壊れた耳では違いがわからないような気がしますが。

見出し画像はグレイテスト・ヒッツ Vol.2の映像版(FLIX II)とLPを並べたもの。クイーンの映像に憧れて西武百貨店の9階にしょっちゅう観に行っていた私は、その数年後に結局LDプレーヤーを購入しました。そしてクイーンのLDを何枚か持っています。プレーヤーは手放したので今は再生できません。後にDVD/Blu-rayで再発されたり、YouTubeというツールが見られる時代が来るので困ることはなかったです。

LPとCDだけじゃなく、映像系も再生方式がいろいろ変化していますが、その度にプレーヤーを買わされています。なんだかんだで音楽好きは時代に翻弄されてますよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?