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創造力になくてはならない応用力を自己開発します

 単純な形は想像力をかき立てます。たとえばバスのおもちゃはあくまでもバス、それ以外の形にはなりませんが、一枚の直方体はその子のイメージのなかで、バスにもベッドにも、まな板にも、ビルにもなります。

 この遊びは言葉が出始める2歳前後から始まります。先日、まだ積木を見たことのない1歳半の男の子と一枚の直方体で遊んだのですが、私がこれを「ベッドだよ、ねんねしようか」というと身体をコロンと横にして枕にしたり、自分でブーブーと自動車にみたてたりと、次々とイメージを広げて楽しんでいました。

 単純な形で、子どもはなぜこんなに遊ぶのでしょう。おそらくそれは、自分の中に限りない可能性を見つけようとする人間が無意識のうちに対象物にも同じ可能性を探ろうとしているのかもしれません。そして、この活動の繰り返しのなかで応用力も開発しているのです。誰にも教えられないのに、幼な子がひとりではじめる活動の中に、人間が本来求めていること、あるいは人間の本質があると先人たちは述べています。シンプルな形は想像力・創造力になくてはならない、ひとつの情報をいろいろな場面に「応用する力」を育てていることを知っておいてください。

 ところが、せっかく子どもが1枚の板から可能性を見つけだそうとしているのに、ここで多くの大人は<バスのおもちゃ>を与えてしまうのです。

 大人から見れば、直方体や立方体はつまらなくて、心もとないものかもしれません。子どももいっ時は具体的な意味をもったおもちゃや仕掛けがあって、動いたり、音の出るものを喜ぶでしょう。でも必ず飽きる時が来ます。同じことしか起きないからです。そして新しいおもちゃを与えて、また飽きて…。

 シンプルな形で充分に遊び込んだ子は、やがて、複雑な形も適切に使いこなしていくようになります。

 「単純なものから複雑なものへ」

 これが童具遊びのすじみちです。

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