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<ケルンボール>で発達させる知恵はどんなこと?

①生命との関係

ボールは動きによって生命を感じさせます。生命は生命に関心をもつもので、<ケルンボール>を通して様々な生命との関係を直感していきます。

②一つのボール

 はじめに一つの基本となるボールを繰り返し与えることによって、赤ちゃんは自分以外の存在(他のひと、他のこと=対象物)があることを、まず感じます。自分以外のものを感じることは、自分自身の存在を改めて感じさせることであり、しだいに自覚を促していくことにつながります。同時に自分自身もそのたった一つの存在であることを感じます。

 また、いつも常用するボールと他のボールを一緒に遊ばせることによって、一つのものと他のものとの(この場合は丸い形によって)関係性に関心をもつようになります。

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③ボールを掴む、離す

 お母さんとのスキンシップ、とくに胸に抱かれて感じられる一体感(一つになること)と、離れること(=結合と分離)を、ボールを握ったり離したりすることによって、さらに具体的に知覚します。

 このつながることと離れることは、元素が結合したり、分離したりして物質が変化することから、生物の誕生、人間の出会いと別れにいたるまで、すべてのものごとに共通する基本的なことがらです。そのことをこの遊びは暗示させます。

④ボールを握る、ボールを見る

 ボールを握ることによっていま持っていること、さっきまで持っていたことを感じます。あるいは、揺れるボールを見て、あっちにいった、こっちにきた、またあっちにいくだろうと感じます。これは過去と現在と未来の時間の流れを意識させることになります。そして、そこにボールがあること、あるいは動くことによって、前後・上下・左右の空間も意識させます。時間や空間は物や行為があってはじめて感じられるものです。

⑤ボールを動かす

 ボールを握ったり、動かしたりすることによって、自分の力を感じます。自分の力を知り、使うことは、なにごとかを生みだすことになり、生命力を強化します。そして、この力は自分にだけそなわっているものではなく、あらゆるものの中に宿っているものであることをやがて意識できるようになります。

⑥ボールに働きかける

 赤ちゃんがボールを見ているだけでは、吊るされたボールはいつも同じ姿しかしていませんが、手で触れて、働きかけることによって、ボールは様々に変化をし、子どもを「発見+表現=創造活動」に導きます。このことは人間がものごとに向かって、行為し、活動することがどんなに大切なことかを感じさせます。人間は行為、活動、体験を通して真実のことを知り、新しい世界を生みだします。その中で自分を成長させていきます。

⑦くるくる回る10色のボール

 <ケルンボールバー>に吊るされた10色のボールは同じ形でも、それはバラバラに目に映ります。これを円盤に吊るすと、色の輪=色環として見えてきます。色がたがいに関係をもちながら移り変わっていく姿を円という終わりのないつながりによって感じさせます。

 さて、この円盤を回転させます。すると、色のボールが完全につながりのある一つの円になります。まるで虹のような美しい輪として目に映ります。これによって、バラバラなものが回すという活動によって一つのつながった円に統一されます。このことは人間の目にはバラバラに見える様々なことが、行為、活動を通すことではじめてつながりをもち、統一されていくことを示しています。

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 さて、ここで<ケルンボール>の遊びの一つ一つがどんな意味をもっているかを述べてきました。ボールをいろいろに扱うことによって、一つ一つのものがどんなに多様な可能性をもつかを示しました。

 しかし、私達はボールだけに取り囲まれて暮らしているわけではありません。赤ちゃんの目に映る世界も日ごとに変化し、複雑になっていきます。そこで、このボールで行った遊びを他のものごとと結びつけていきます。

 例えば、ボールを「高く高く、低く低く」などといってその状態を示すだけでなく、赤ちゃんを上に持ちあげたり、さげたりしながら同じ言葉を繰り返します。同じ言葉がいろいろな場面で使われることによって、言葉の多様な意味合いがしだいに子どもに正しく理解されるようになっていきます。

 ボール遊びは様々なものごとにつながる活動です。多様なものごとを統一させながら成長していく子どもにとって、なくてはならない童具です。

 ここにあげた遊びは、座ることができるようになっても、歩けるようになってからも繰り返し繰り返し行って下さい。それによって、ますます子どもの知恵は深まり、身体能力も同様に開発されていきます。


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