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スルガ銀行不正融資の詐欺被害者の方に、お話を伺いました。もしも叶うなら、スルガ銀行の方のご意見も聞いてみたいです。

シェアハウスで巨額の不正融資事件を起こしてしまったスルガ銀行。でもスルガ銀行は、シェアハウス以外にもアパート・マンションなどの不動産投資の分野で不正な融資をたくさん行っていたそうです。その多くがサラリーマンを対象とした個人向け不動産ローンでした。

今回はそんなスルガ銀行詐欺被害者の方にお話しを伺いました。「投資は自己責任で損をするのは自分の責任」であることは真理で、被害者は被害を抱えて生活するをほかの誰かに代わってもらうことはできません。リアルな声をご紹介します。

嘘をつかれて損害を受けた。これは詐欺です。

「結構、騙されたことに気が付かないものなんですよ。」と淡々と被害者さんは語ります。この被害者さんは、1億円以上のマンションを複数購入しちゃっていました。『毎月20万くらい儲かると説明されていたのに、実際は毎月15万以上損をしている』そうです

。購入したのはいいんですが、不動産の賃料は事前に説明されていた値段と違う。。大損です。入居者の数も嘘をつかれていました。。なんで事前に気が付かなかったんでしょうか?

サブリースで賃料を保証されていたから。

「購入するとき、不動産会社やスルガ銀行を全面的に信じてしまいました。不動産会社はスルガ銀行が保証している物件だから安心です、と説明していましたし、この不動産業者はスルガ銀行のセミナーで紹介されていた業者だったんです。

ーーふむふむ。銀行が後押しする業者だったんですね。

購入を決定した要因でもあるのですが、『サブリース』と言って、空室があってもなくても、業者さんが賃料を保証してくれる、という保証サービスがついていました。だから保証料がかかるけれども、空室や滞納のリスクがなくなるということで、リスクがない、という説明を受けました。サブリースは賃料を定期的に見直すという記載はあったんですが、それも見越した収支シミュレーションと聞いていました。シミュレーション上は『儲かる』という内容でしたから、安心して購入してしまいました。」

サブリースを解約されて気が付いた実態

ーーいつ詐欺って気が付いたんですかね?

サブリース契約を一方的に解約されたんです。契約書上は解約できることになっていましたが、まさか契約解除されるなんて、思いもしませんでした。だって、スルガ銀行が融資してくれる際に、サブリースがあるから融資する、とスルガ銀行の営業担当者が言っていたんです。2年我慢して返済実績を積めば利率も下がるといわれていました。審査資料にレントロール(入居者数や賃料が記載された資料)も出して、サブリースに入っていることも説明していると不動産業者が言っていました。その営業担当者は、融資申し込みの日に、スルガ銀行の担当者とも談笑していました。融資の申込書を書く際にも同席していたんです。でもスルガ銀行の担当者にその話をしても『そうですか。でも返してくださいね』という感じの反応でした。愕然としました。」

ーー怖い。怖いです。でもこれだけでは、詐欺とは言えないのでは?

「実際に入ってきた賃料が、サブリースで保証されていた賃料と大幅に違ったんです。かなり少なかった。で中身を確認していくと、事前に説明されていた入居者数や賃料と全然違う内容でした。入居者数や賃料を記載した資料をレントロールというのですが、この内容が全然違っていたんです。」

ーー時間がたって解約者とかが出たっていうことですか?

いいえ。初めから、中身が改ざんされていたんです。詐欺だと思いました

ーーた、たしかに。これくらい賃料がもらえるよ、という内容が間違っていたら判断が狂いますよね。改ざんされていたらそれは詐欺ですよね。。

「はい。不動産業者が嘘をついていたんです。不動産業者は架空の賃貸契約をつくっていました。その上、銀行融資の際に、私の年収や預金残高を改ざんしていたんです。」

ーーえ、銀行口座の預金残高?改ざん?

「そうです。これは私文書偽造です。」

ーーでもそれって、不動産業者が悪いんじゃないですか?なんで銀行が悪いんですかね?

「信じられないことに、スルガ銀行自体が、積極的にも消極的にも詐欺に加担していたんです。セミナーもスルガ銀行主催のセミナーでした。融資書類を書く日もスルガ銀行の営業担当者と不動産業者が同席していました。サブリースがあるから申し込めるといっていました。仲もよさそうでしたし、銀行が太鼓判を押してくれているんなら信用できるだろうと、私はすっかり安心してしまいました。」

ーーまあ、不動産をローンで買う場合、不動産業者が銀行さんを連れてきますもんね。商売仲間ですよね。

「そうなんです。何軒も一緒に審査を通してきたとも言っていました。もし現実味のない内容だったら、銀行も審査を通しませんよね、普通。私は自宅マンションもローンで買っているのですが、その時よりも簡単な手続きでした。金額は何倍もするのに。不動産業者が言う通りに何枚も書類を書きました。目の前で銀行の担当者がそれを見ていました。銀行員と不動産業者が同じ側の人間であるように思いました。だから信じてしまいました。」

ーーどこで申込書を書いたんですか?

「自宅近くのファミレスです。スルガ銀行の担当者が遠くの支店からわざわざ出張して契約のためにきていました。夜の8時過ぎだったと思います。書類を何枚も書き、印鑑を押しました。そのままスルガ銀行の担当者は持って帰りました。」

ーー銀行ってそんなにサービスいいんですか?

「ずいぶん熱心だな、と思いました。でも営業が熱心なだけで、審査はずさんだったといわれています。スルガ銀行自体、不正融資問題があった際のスルガ銀行の役員を訴えているのですが、『粉飾された家賃を検証もしていなかった』ことを証拠として提出しています。彼ら自身が不正な融資があったことを認めている。営業成績を上げるために、実態のない審査をしていたことを認めているんです。」

ーー嘘の審査書類を見つけられなかったんですもんね。

「それだけなら悪質な業者がスルガ銀行を騙したんだろうとなると思います。でも、こうした被害者は私だけではないんです。被害者団体である『SI(スルガ銀行不正融資)被害者同盟』には300人以上の被害者がいます。スルガ銀行は2010年前半から不動産投資用の個人ローンを行っています。その間、100社を超える不動産業者がスルガ銀行の販売窓口として案件相談を持ち込んでいました。サブリースを組んで数千万円から数億円のアパートやマンションを販売してきたんです。その総額は1兆円程度と言われています。被害者の会であるSI同盟の被害者の多くはこうした投資判断をゆがめられて、投資した結果、損害を被っています。そうした詐欺の中心にスルガ銀行がいたんです。」

ーー嘘をつかれて経済的な被害を受けたから、詐欺被害ですよね、たしかに。でもスルガ銀行はなんでそんなことやったんですかね。

「銀行にも営業マンがいます。ノルマがあります。スルガ銀行は地方銀行ですが、日本経済が強かった製造業が傾いてきて地方経済は落ち目にあります。ITや金融は強いのは首都圏です。地銀は成績が落ちて統合の話が出ているほどです。そんな中スルガ銀行は「全国でナンバーワンの銀行になる」という大きな目標を掲げて、個人向け不動産ローンを販売して1兆円もの貸し出し実績を創りました。破格の実績を上げた陰には、不正な融資を実施していたんです。」

ーー私は個人的な知り合いだからこの話を信じられますが、はじめてこの話をきく人はちょっと引いちゃうかもしれませんね、この話。

「ですよね。信じられない話ですよね。でもこの話は私の被害妄想ではなく、金融庁も認めた事実なんです。というのは、あまりにスルガ銀行の不正な融資がひどいということで、金融庁は第三者員会を組織させて、調査を命じています。その結果があまりにひどい内容だったということで、業務停止命令を2018年に出しています。半年もの長期間です。その間、スルガ銀行は融資業務を完全ストップさせられました。」

ーーあまりにひどい、、ですか?

「はい。経営層を変えない限り問題は解決しない、とまで第三者員会では記載されていました。第三者で構成された調査団といっても、スルガ銀行と敵対しているどこかの団体ではなく、顧問弁護士と顧問会計士による調査です。普通に考えて、少しは手心が入りますよね?でもかばいようがないくらいひどかったようなんです。これが第三者委員会報告とよばれる調査です。」

ーーこれスルガ銀行のドメインですね。ボリュームも300ページ超えてる。でも知らない人はたどりつけないですね、このページ。第三者委員会って検索しないと出てこない

「金融庁の目もあるので、隠すことはできないんでしょう。ただ積極的に出したいものでは絶対にないはずです。その報告内容はひどいもので、成績を上げない行員に怒号があびせられる、机を蹴るなどブラック企業のような振る舞いが横行していた、と記載されています。」

これなんていうブラック企業?

ーーひどいですね。昭和というか、ブラックな風土ですね。。積極的に不動産業者に改ざんの指示をした行員が1名いる。暗黙的に示唆した人や消極的にこれ怪しいけどまあいいやって見逃した行員も相当数いるって書いてあるんですね。。

「そうなんです。スルガ銀行にもまともな人はいたようです。特に審査をする部門の人にはまっとうに審査したいという人もいたようですが、営業部門の圧力に屈して、ずさんな審査を通してしまったとも書かれています。」

ーーとんでもないですね、これ。これなんていうブラック企業ですか。。。

「スルガ銀行です。スルガ銀行の中でも営業部門はこうしたありえないやり方で強引な融資を行っていきました。嘘をついている不動産業者をチャネルとして使って積極的に融資を行っていきました。中途採用でどんどん不動産業者を採用して、銀行ではやってはいけない不正を不動産の素人である個人に焦点をあてて、どんどん型にハメていったようです。不動産業界ではこのしくみをスルガスキームと呼んでいたようです。」

スルガスキームとは

「スルガスキームというのは、不動産業者がサブリースで消費者に賃料を保証するので一見買う側のリスクは非常に低いです。ですがレントロール(賃料や入居者数)を偽装しているので、実際の物件の収益力は低いままです。その差額を吸収してさらに利益を得るために、不動産業者は物件の価格をあらかじめ高く設定しています。でスルガ銀行の審査部門はその物件を審査する際に、融資を申し込んだ人の財産がたくさんないと危ない物件だとおもうわけですが、その審査基準を熟知した営業部門の人間が不動産業者に『エビデンスはこの程度にしておくこと』と内部情報をこっそり教えて融資をとおしてしまうんです。『ウチはコピーだけで原本確認しないから口座残高を増やしておいて』とか『年収700万以上ってことにしておいて』とか『うちは周辺賃料を審査の時に確認しないから賃料は相場よりも高くしても大丈夫だから改ざんした資料を出して』という形です。」

ーーこれが積極的関与とか消極的協力っていうものなんですね。。

「私は実際に不動産業者に詰め寄りました。なんでサブリースが解約になったりするんだ?賃料とか記載内容に嘘があるじゃないかって。そうしたらスルガ銀行の営業担当者がこの融資を通すためにこういう水準の数字を記載してくれないと通せないと指示があったと言っていたんです。」

ーーそれはもはや指示ですね。積極的関与じゃないですか。。

「実際にこんな体質がいやになって辞めた行員の話も聞きました。本当に悲しくなります。こんな人たちに自分は騙されたんだって。それが銀行の人のやったことなんだって。そしてその人たちも首にならないためにやっていたんだな、って。」

ーースルガ銀行はこうした嘘や粉飾に自分たちが関与したことを認めているんでしょうか?

「シェアハウスに関しては認めています。でもアパート・マンションに関しては認めていません。スルガ銀行の第三者委員会の報告では、アパート・マンションを含めたシェアハウス等の問題、という形で、シェアハウスとアパート・マンションの問題を区別していません。おなじ構造があったんです。」

ーー全部の責任は、認めていないんですね。

「金融庁に業務改善命令をくらって、スルガ銀行は社内教育や内部統制の強化に取り組むと報告しています。被害者への適切な対応もおこなうといっています。シェアハウスに関しては代物弁済といって、担保にしている不動産物件をスルガ銀行が回収するかわり、借金をなかったことにするという対応を取りました。ですが個別交渉では戦う姿勢を見せています。」

ーーどんな回答なんですか?

「不動産ADRや個別交渉では、スルガ銀行の持っている資料と被害者の持っている資料を突き合わせて、おなじ資料を見ているかを確認していくのですが、審査に使ったレントロールや契約書や口座残高の内容を確認すると違いがたくさん出てくる場合があります。それなのに、3億円近くある融資元本を50万円値引きます、とか利率を1%減らしますとかいう回答なんです。」

ーー不正な取引だったから、なかったことにする代物弁済などはやらない、ということですね。

「スルガ銀行も民間企業なので、全部なかったことにしていったら破綻してしまいます。ぎりぎりまで戦う姿勢なんです。」

ーー反省して悪かったです、すみませんとか、そういう姿勢はないということですか。。まあ生きていかないといけないですもんね、スルガ銀行で働く人も。。

「謝罪したら補償しないといけないからだと思います。自分たちに責任はない、という姿勢を貫いているんですが、その一方で、スルガ銀行の元役員をスルガ銀行自体が訴えている訴訟では、損害賠償責任を受けるほど悪質な体制を看過した役員を訴えています。」

ーー被害者の要求には答えずに、元役員は訴えているんですね。悪い事した自覚はあるんでしょうね。。

「私も被害者です。ですが投資は自己責任だといわれるように、私は自分の投資の結果でた赤字と闘っていかなくてはいけません。そこは理解しています。だから損したので補填しろという気はありませんが、だまされて負った被害は回復していきたい。回復しないと家族に迷惑をかけ続けることになる。スルガ銀行にはずさんな体制を改めて、被害与えた被害者に被害の回復をおこなってほしい。ただそれだけです。」

被害者の声しかきいていないからスルガ銀行の意見も聞きたい

スルガ銀行はどういう考えなんですかね。被害者は騙された。損をした。スルガ銀行がその不正の中心にいると思っているようです。第三者員会報告という形で、公的な調査がはいって、スルガ銀行にも落ち度があると明確に判断しているように見えます。

だからこそ、スルガ銀行には明確に自分たちの正しさを表明してもらいたいものです。できないなら悪いと思っている分、責任を負っていくべきなんじゃないかな、と思います。どう思っているんですかね、スルガ銀行の中の人は。。

もしも叶うなら、スルガ銀行のご意見も聞いてみたいです。

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